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ゼロ・グラビティ

3D吹替版を公開初日に観に行った。

前評判が高いのでどうしても期待値があがるが、噂にたがわぬ見事な映像世界を堪能できた。

思えば本作の監督のアルフォンソ・キュアロンは、『トゥモロー・ワールド』でもよくこんな映像撮ったなと半ば呆れるような厳しい環境下の長回しをやっていたが、本作でも宇宙空間にしろ、主人公のヘルメットの内側まで入ってしまうところにしろ、宇宙船内のスムーズな映像にしろ、ほとんどどうやって撮ったのか不思議という映像のみで構成されるというとんでもないことになっている。

物語はシンプルで、作業中にロシアが衛星をミサイル爆破した影響で飛んできたスペースデブリシャトルに衝突したため宇宙空間に取り残された二人がどのようにサバイブするかという一点に集約されている。

この二人を演じているのがサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーなのだが、両者ともパブリックイメージにぴったりな配役であった。主人公である前者が特にそうで、映画のタイトル(クソ邦題じゃないぞ、原題だぞ!)の意味が分かるラストも彼女の立ち姿がぴったりだったな。

宇宙空間において推進力にアレを使うというのは『ウォーリー』だったか他の映画でも見た記憶があるが、これなど本当に可能なのかとか、そこらへんについては専門家のコメントを待ちたいが、映画における映像の限界を拡張する作品だったのは確かである。

ただ『トゥモロー・ワールド』を観たときも思ったが、この監督さんは登場人物に深い陰影を与えたり、その心理的葛藤を描くことはうまくないようで、そのあたりは映像のリアルさと過酷さに担わせる人のようだ。これは必ずしも悪いことではなく、本作の場合ハリウッド大作ならこうなるという展開が結果的に廃されていて本作のストイックさに貢献している。一種のサードマン現象の描き方もうまかった。

以下余談。他にも書いている人がいるが、ロシアがダメな奴らで中国は役立つ、という図式が最近のハリウッドのゴマスリ感を象徴していて、この設定は作品としてのリアリティーを損なっている。本作のサスペンスの契機となる事態を引き起こすとすれば、ソ連時代から長年の宇宙開発の蓄積があるロシアよりもどう考えても中国でしょうに

しかも本作における中国の宇宙船内の描写も卓球のラケットが浮かんでるなど陳腐なもので、そのアジア理解も皮相である。第一無重力空間でどうやって卓球するんだよ……という不満を書いたところ、宇宙飛行士は母国の子供のリクエストに応じておかしなことをさせられるもので、中国の飛行士が「宇宙で卓球をしたらどうなりますか」という子供の質問に大真面目で取り組むという状況は容易に想像がつくのではとただただしさんに教えていただいた。確かに日本人宇宙飛行士に関する映像で記憶に残っているものにも上記に類するものがあった。この点に関しては、ワタシの解釈が不適当だった。

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