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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

ワタシもなぜか GQ JAPAN に追悼原稿を書いた人間なので、行かないというのはありえない。IMAX で観るべき映画と確信していたので、IMAX でやってるうちに行かないと、と無理に都合をつけてこれも公開初週に観に行った。

まさかこの曲から始まるかと意表をつかれ、立て続けにジギー・スターダスト時代のあのメドレーが畳みかけられるだけで満足だった。

本作が、偉大なミュージシャンの人生を回顧する、例えば、家族や仕事仲間やジャーナリストのインタビューをフィーチャーする普通のドキュメンタリーにならないのは予想通りで、ほぼ一貫してボウイ自身の言葉によって進行される。

ワタシにとってのボウイは、何よりミーハーなポップミュージシャンなのだけど、本作は自己イメージを完全にコントロールした晩年のボウイの遺志を継ぐ作品であり、その意味ではよくできている。ボウイの内省的な語りを通して彼の精神性を表現しようとしているのだけど、その映像の中に日本の焼酎のコマーシャルが挟まるところが彼らしい、とか書くと怒られるだろうか。

面白いのは、80年代におけるカルトヒーローからポップスターへの転身が、当時の音楽シーンの空気に合致して大歓迎され、しかし、そのうち「変化がないじゃん」とオーディエンスに見抜かれているのもちゃんと描いていたところ。1980年代後半のグラス・スパイダー・ツアーの映像にジギー時代の「ロックンロールの自殺者」の映像が挟まっているところ、これはどの程度皮肉の意図があったのか。

本作はボウイの苦闘を描くものではなく、「ワード・オン・ア・ウィング」が美しく使われてイマンとの結婚の話が描かれる一方で、アンジェラ・ボウイなどの話は一切オミットされていて、そのあたりは生前のボウイも触れたくなかった話だろうから、デヴィッド・ボウイ財団公認の本作がそうなのに不思議はなく、こちらも今更スキャンダルなど求めていない。

ただ彼の70年代のアメリカ時代、特に『Station To Station』とそのツアーの映像がないのは、そのあたりもオミット対象なのかといささか残念に思った。90年代以降のライブ映像でも2000年のグラストンベリーなど入れてほしいものもあったが、ただそういうことを言い出せば、「レベル・レベル」や「フェイム」(彼の2曲しかない全米1位シングル!)など代表曲でも漏れが出るのは仕方ないのだろう。

いずれにしろトニー・ヴィスコンティが手がける劇伴も、本作を彼の音楽を時代順に並べただけのミュージックビデオにしておらず、さすがだった。

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