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ジェフリー・エプスタインからの寄付をめぐるMITメディアラボと伊藤穣一の火だるま状態はともかくとして、ローナン・ファローのタイムリーな新刊が出る

児童買春の罪で有罪判決を受け、また性的人身売買の疑いがかけられ、逮捕されて拘留されていた拘置所内で首を吊って自殺した大富豪のジェフリー・エプスタインから MIT メディアラボが多額の寄付を受けていた件については、所長の伊藤穣一が当初の説明と異なり、性犯罪者として有罪判決を受けていたエプスタインの立場を認識しながら寄付を受けとっていたことを暴かれ、辞職に追い込まれた。

伊藤穣一については、15年ほど前は彼の名前を検索するとワタシが彼をボロクソに書いた文章(あえてリンクはしません)が上位に出てくると呆れるように言われたものだが、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』にも彼の名前は何度か登場するし、最近の仕事では、「アルゴリズムがつくる「公正さ」には、差別を助長する危険性が潜んでいる」などを高く評価していたので残念には思う。が、いたしかたないでしょう。

当初は伊藤穣一錚々たる面々が擁護していたが、上記の当初の説明との相違が暴露されるとそうした動きも雲散霧消といった案配だが、彼を最後まで擁護しているのがローレンス・レッシグである。

エプスタインのような要注意人物からの寄付は、売名や免罪符に使われないよう匿名にすべきという論点は一考に値するし、政治になんでも透明性を求めるのは逆効果であると論じた10年前の Against Transparency と同じく、一見耳障りの悪い話をあえて訴えるところにレッシグの良心を感じたが、結局はエプスタインからの金で研究していたことを知った研究者たちのことを知れば、レッシグも後悔の念しかないわけで、この擁護はいかにも苦しい。個人的には、児童性虐待の被害者でもあるレッシグにエプスタインのことを相談したという伊藤穣一に心底呆れるし、それに付き合うレッシグも人が良すぎたとしか思わない。

本件は伊藤穣一の辞任だけではとどまらず、MIT メディアラボの存在に対する懐疑、さらには一歩進んだ解体論まで出ているが、MIT メディアラボの初代所長であるニコラス・ネグロポンテの人間性をえぐる MIT Technology Review の記事もそのあと押しになるかもしれない。

また MIT メディアラボだけに留まらず、MIT 学長も寄付について知っていたこと、やはり同じく寄付を受けていたハーバード大学スタンフォード大学も批判を受け、リチャード・ストールマンにも火の手があがるなど、今後も延焼はいろいろ続くだろう。これがダナ・ボイドが言うところのテック業界が直面する「大いなる代償(Great Reckoning)」なんでしょうね。

なんといっても今回伊藤穣一を辞任に追いやったのは The New Yorker に掲載されたローナン・ファローの記事である。彼は2017年にやはり The New Yorker に掲載されたハーヴェイ・ワインスタインの性的虐待を報じた記事ピューリッツァー賞を受賞しており、今回 MeToo 運動の火の手をあげたジャーナリストにより止めが刺されたというのも示唆的である。

そのローナン・ファローは、ミア・ファローウディ・アレンとの実子と紹介されるのだけど、彼の顔写真を見ればそれはないのは一目瞭然で、ミア・ファローも認めるように父親はフランク・シナトラだろう。

個人的にはローナン・ファローによい感情を持ってないし、今回の件でもレッシグは上でリンクした文章の中で彼の記事にある誤りを指摘しているのに注意が必要だが、彼が優れたジャーナリストであるのは疑いないだろう。

ローナン・ファローは昨年、アメリカの国際的な影響力低下について論じる『War on Peace』(asin:0393652106asin:B00ODG9XX2)という本を発表している。オバマ政権下で外交チームに属したという実務経験もあり、本来そうした分野の書き手だったと思うが、来月早くも新刊が出る。

Catch and Kill: Lies, Spies and a Conspiracy to Protect Predators

Catch and Kill: Lies, Spies and a Conspiracy to Protect Predators

これはズバリここ数年の調査報道記者としての仕事を受けての本のようだ。富とコネを持つ男性がジャーナリストを脅かす監視や脅迫について語られているようで、ハーヴェイ・ワインスタインがターゲットなのは間違いないが、ジェフリー・エプスタインの話まで含まれるかは分からない。

これは邦訳が期待される新刊である。

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