確か Twitter のタイムラインに流れてきて知った文章だったか、これを読むまでジョン・ルーリーが回想録 The History of Bones を出したことを知らなかった。
個人的にジョン・ルーリーというと、ラウンジ・リザーズなどミュージシャンとしての本業よりも、やはり初期のジム・ジャームッシュ作品に代表される映画関係の仕事で知った人である。
彼は80年代から90年代にかけて、音楽にしろ映画にしろ、当時先端にいた多くの才能と仕事をしてきた、紛れもなくニューヨークのアートシーンの重要人物、というか一種の文化的アイコンだったわけで、そういう人の回想録だから面白いに決まっているのだが、内容は読んでてかなりツラそうだ。
基本的に恨みつらみの本でもある。途中でこう書いている。「これを書いている2〜3年の間、『ジムを貶さないようにしよう』と自分に言い聞かせてきた。けど、結局それは不可能だった」。ジムとはジャームッシュのことだ。
骨の歴史 ジョン・ルーリー 回想録|山下泰司 Yasushi Yamashita|note
上に書いたように、ワタシはジョン・ルーリーというとジム・ジャームッシュ作品で知った人だし、近年の彼の作品だと『パターソン』は大好きなので、彼についての批判を少なからず含むのはいささか悲しいものがある。けど、本当なら仕方ない。
しかし、ジャームッシュだけでなく、ヴィム・ヴェンダース、マーティン・スコセッシ、デヴィッド・リンチ、バリー・ソネンフェルドといった映画監督についてもだいたいネガティブな記述があるとのことで、それは読んでみたい。
あと、彼がジャン=ミシェル・バスキアと深い付き合いがあったのは知らなかった。彼との逸話はなんとも言えない切なさがある。
かつて、暗く、苦々しく、悲しい話にこそワタシは惹かれると書いたことがあるが、ワタシが回想録で読みたいのは、偉人の余裕から出る忖度やヨイショではなく、そういう話なんだよね。どこか邦訳を検討いただけないものだろうか。