Twitter の検索機能を使って調べたところ、自分がベンジャミン・クリッツァーさんの存在を認識したのは2017年のようだが、意識して読むようになったのは2019年以降である。
特に印象に残っているのは、例えばマイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』でも多分にかませ犬みたいな役割を担わされた功利主義について、説得力のある擁護をしていたこと。
以来、ベンジャミン・クリッツァーさんのブログを好きで読んでいるが、その論旨に同意しないこともある。ついでに書くと、映画の好みも異なる。しかし、それを含め、氏のしっかりした芯のある文章は簡単に一蹴できるものではなく、自分の中でなんとなくで片付けている問題、思い込みのままに済ませていた評価について考えてみる契機を何度か与えてくれた。
そうした意味で、氏のブログを基にして、初の著書『21世紀の道徳――学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』が出るのを喜ばしく思う。何より『21世紀の道徳』という書名の正面切った、堂々たる感じ、「正解」を引き受けようではないかという自負が素晴らしい。
1989年生まれということは、例えば樋口恭介さんと同年か。自分からすれば、1989年生まれと聞くと若いなぁと思ってしまうのだが、それでも、何も知らない若者の年齢ではもはやない。それだけ自分が歳を取ったということだが、とにかくこの本が売れて、著者が文筆業により時間を割けるようになることを願うばかりである。