石原さとみの演技がすごいという評判を聞いて行くことにした。が、思えば、ワタシは石原さとみの主演作って映画もテレビドラマもこれまで観たことないんだよね(『シン・ゴジラ』は主演作ではないわけで)。
で、さらにいうと𠮷田恵輔監督の作品を観るのも、恥ずかしながら本作がはじめてだった。
娘が失踪した母親を演じる石原さとみの熱演は評判通りだったが、青木崇高も良かった。
それにしても意地の悪い演出が印象的な作品である(もちろん良い意味で)。観客皆の頭の中でツッコミが浮かび、それがポロっと口に出される悲惨な場面もそうだし、主人公の推しのアイドルグループの新曲の使い方も相当に意地が悪い。主人公が縋らざるをえないわずかな期待もことごとく裏切られるのは必然だ。
本作の主人公はそのようなめぐり合わせの元、ギスギスの極致ともいえる演技をみせるわけだが、本作の場合、主人公の脇で何度も彼女とは直接関係のない、やはりギスギスとしたやりとりが行われているところも現在的である。
ギリギリと締め上げられ、翻弄され苦しむ主人公がどのように肯定される余地が残っているのか――ここが本作のポイントである。そこではワタシも青木崇高にもらい泣きしてしまった。
報道のあり方、折り合いの悪い家族との関係といったポイントについて、エモーショナルに盛り上げる演出をしないところも好ましく思った。
ずっと自分とそれ以外との温度差に苛立ち続けた主人公が最後にいきついた地点を日常における所作で表現するエンディングも良かった。