当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

関心領域

ジョナサン・グレイザーといえば、日本でもっとも知られる仕事は未だに "Virtual Insanity" なのかもしれないが、寡作な彼の映画を観るのは本作がはじめてだった。第一作の『Sexy Beast』は、ブレイディみかこさんの文章で引き合いに出されていた覚えがあるが、あれ今日本でちゃんと観る方法あるのかな。

そうした意味で本作は以前から楽しみだったが、実は、観に行く前夜に久しぶりに会う友人とバーで深酒した疲労が残っており、アウシュビッツ収容所の隣で暮らす所長一家の穏やかな日常生活が描写される最初のほうで何度か寝かけてしまった。まったく恥ずかしい話で、ワタシに本作について何か書く資格はなく、以下はただのメモと思っていただきたい。

『落下の解剖学』に続きザンドラ・ヒュラーが好演しており、彼女が所長である夫の転属(とそれにともなう転居)を告げられ、アウシュヴィッツでの生活への執着から激しく怒り出す場面が実に「人間的」であり、それも本作の恐ろしさに貢献している。

ロングショットが多用され、観客は所長一家の生活を定点観測しているような気になる本作は、アウシュビッツ収容所でホロコーストの犠牲となったユダヤ人をほぼ登場させることなく、所長一家の生活を説明描写を排して描きながら、その隣から常に聞こえる工事音などに交じる異様な轟音(や悲鳴や罵声)のみで収容所で行われていることを伝える。

しかし、アウシュビッツ収容所について知識の足らないため明らかに分からないと感じた点がいくつもあり、鑑賞後に辰巳JUNKさんの「『関心領域』 反ハリウッドの殺戮」などを読んで、なるほどあの些細な会話にそういう情報が込められていたのかとなったところがいくつもある。

氏の文章でも題名が引き合いに出されるが、本作のラストにおける主人公の生理反応は、やはり『アクト・オブ・キリング』を思い出してしまった。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2024 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)