思えば、トッド・ヘインズの映画を観るのは実は初めてだった。
ナタリー・ポートマンという人は、俳優として実に真面目である。その彼女の代表作が、演技者として周りから責められ、同時に自分で自身を追い込み、必死に頑張りぬく姿を見せる『ブラック・スワン』なのは偶然ではない。
その彼女がプロデューサーも務め、メアリー・ケイ・ルトーノーを明らかに下敷きとする女性を取材し、役作りをする女優を演じる本作は、ある意味自己パロディーにも思えた……とは言いすぎか。ナタリー・ポートマンという演技者の在り方と映画の批判的な作り方が重なっているということですね。
そして、彼女が取材する対象の女性を演じるのがジュリアン・ムーアで、彼女は例によって見事に事件当時者の女性の狂気を体現する。そして、ナタリー・ポートマンは真面目な努力と分析で迫ろうとする。両者がいかにもらしい役をやっている。あと、同じく事件当時者である男性を演じるチャールズ・メルトンも良かったですね。
「ゆれる真実」とあるように、事件の真相はどうだったか、当事者の過去や現在はどうなのか揺らぎ続けるのだけど、人の心ってリサーチで必ず理解できるものでもないし、関係者に話を聞けば真相にたどり着けるわけでもない。
正直、この物語が最終的にどんな破局を迎えるのか見るのを期待したところがある。しかし、意外にもそうはならない。それはいいのだけど、チャールズ・メルトンが卒業式に子供たちを送り届ける頃には狩猟をやってたジュリアン・ムーアが、卒業式に普通に座っているのにちょっと??となった。