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邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2025年版)

今年も私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」を書く時期となった(過去回は「洋書紹介特集」カテゴリから辿れます)。

本ブログでコンスタントに洋書を取り上げているおかげで、そのエントリをまとめるだけで今回は全35冊(!)の洋書を紹介できるわけである。

Amazon Japan が洋書の取り扱いを止めてしまうのではという心配の声があるが、ワタシはできるだけアンテナを張って、今後も面白そうな洋書を取り上げていきたい(紙版と両方はると数的な制約でリンクが機能しなくなるおそれがあるので、本エントリでは基本的に Kindle 版のみリンク)。

これは毎年書いていることの繰り返しだが、洋書を紹介してもアフィリエイト収入にはほぼつながらないのだけど、それでも、誰かの何かしらの参考になればと思う。

既に邦訳が出ていたり、またこれから出るという情報をご存知の方は、コメントなりメールなりで教えていただけると幸いです。

Ruha Benjamin『Imagination: A Manifesto』

↑のエントリで引用した投稿が消えていてどうしたかと思ったら、X には鍵をかけているようだ。いろいろバックラッシュもあるのだろうな。

彼女は昨年マッカーサー・フェローからいわゆる「天才助成金」を受けており、最近の講演でも「人間の苦しみを和らげるという点で、テックエリートが提供する知恵を信用する理由はまったくありません」と断じている

カズオ・イシグロ『The Summer We Crossed Europe in the Rain』

カズオ・イシグロというと、彼の初期作の映画化『遠い山なみの光』の公開が9月に控えているが、ワタシも観に行くつもりなので、5月のカンヌ国際映画祭での評判が気になるところである。

そんな彼でも、さすがに歌詞集の邦訳は難しいか。

ヨハン・ハリ『Magic Pill: The Extraordinary Benefits and Disturbing Risks of the New Weight-Loss Drugs』

ヨハン・ハリというと『奪われた集中力』が6月に出るが、こちらはその次の本なので、来年以降に邦訳が期待される。ところで日本でオゼンピックを処方されている人って、今何人くらいいるんだろうな。

アンソニー・ファウチ『On Call: A Doctor's Journey in Public Service』

アンソニー・ファウチというと、今年に入ってトランプから警護の打ち切りといった扱いを受けていて心配である。しかし、トランプ政権が新型コロナウイルスの発生源が中国・武漢の研究所であることを強調するとなると、彼への風当たりが一層強まるのは必至と思われる。

ニコラス・カー『Superbloom: How Technologies of Connection Tear Us Apart』

ニコラス・カーの新刊となれば、来年あたり青土社から邦訳が出るのだろうが、これまで彼の新刊が出るたびに連載で取り上げてきたワタシは、今回もこれについて書くのでしょうかねぇ(まだ決めてない)。

ティーヴン・ウィット『The Thinking Machine: Jensen Huang, Nvidia, and the World's Most Coveted Microchip』

今月刊行されると、New York TimesGuardian で書評が出ているが、前者において、技術産業、特に人工知能のように進化が速い分野で本を書くことの困難、具体的には脱稿から本が出るまでの間に話が若干古くなる話、本書の場合、イーロン・マスクには11人の子供がいるという記述があるが、今では14人まで増えているという記述に不覚にも笑ってしまった。

実は、この本については某社が版権を押さえたという話を小耳に挟んでいるので、今年後半以降に邦訳が期待される。

Nell Watson『Taming the Machine: Ethically Harness the Power of AI』

本書についての詳しい情報は公式サイトを参照ください。

AI 倫理についての本はいろいろ出ているが、まだ出る余地があると思うのよね。

Katherine StewartThe Power Worshippers』、『Money, Lies, and God

「プロジェクト2025」もねぇ、大統領選挙中はドナルド・トランプすら直接の関係を否定したくらいだが、実際に彼が大統領に就任するや、「プロジェクト2025」のアジェンダ通りに政策が進んでいる。

福音派共和党政権との密接な関係については、今月、「映像の世紀バタフライエフェクト」で「“神の国” アメリカ もうひとつの顔」として取り上げられたばかりだが、そのあたりについて書かれたキャサリン・スチュワートの本の邦訳は必要だと思います。『Money, Lies, and God』は今年刊行された『The Power Worshippers』の続編であり、ベストセラーになっている。

Evan Prodromou『ActivityPub: Programming for the Social Web』

こちらは Kindle 版の値段がすごく高くて驚くが、ページ数が590とのことなので、かなり大部の本のようだ。つまりは ActivityPub についての決定版な本ということだろう。オライリー・ジャパンから邦訳が出ないものか。

ダニエル・J・ソロブ(Daniel J. Solove)『On Privacy and Technology』

これはやはり AI 時代のプライバシー入門書として邦訳が必要な本だと思います。

そうそう、ソロブ教授も今月になって、この本のポイントとなる文章を引用している

ティモシー・スナイダー『On Freedom』

ティモシー・スナイダーというと、彼を含むエール大学の著名教授3人がカナダのトロント大に移籍という衝撃のニュースが伝えられたが、そうした意味でこの新刊は邦訳が必要な本だと思います。まさかアメリカがこんな国になるとはね……。

ヘンク・ロジャース『The Perfect Game: Tetris: From Russia with Love』

ヘンク・ロジャースといえば、昨年秋に発売された「テトリス フォーエバー」にも彼のインタビュー映像が収録されている。

そこにも『ザ・ブラックオニキス』の画面が引用されているが、テトリスだけでなくブラックオニキスについての話を読みたくて、この本の邦訳をワタシは希望します。

Joe Boyd『And the Roots of Rhythm Remain: A Journey Through Global Music』

ジョー・ボイドが存命なのを知らなかったのだから失礼な話だが、かなーりな分量なので邦訳は難しいに違いなかろうが、これは貴重な本だと思うのよね。

Balaji SrinivasanThe Network State: How To Start a New Country』

ワタシの文章を読めば、この本をワタシが肯定的に評価していないのは分かると思うが、それはそれとして、昨今のシリコンバレー人種の「国家からの離脱」志向を考える上で、邦訳の価値はあると思う。あ、公式サイトで全文読めますけどね。

まぁ、もっともトランプ政権によってシリコンバレー人種は、国家からの離脱どころか国家を乗っ取る勢いであるが。

ジェフ・ジャービスJeff Jarvis)『The Web We Weave: Why We Must Reclaim the Internet from Moguls, Misanthropes, and Moral Panic』

ジェフ・ジャービスが立て続けに著書を刊行しているが、やはり期するものがあるのだろうと推測する。

はっきりいって、今のインターネットを批判することは誰でもできるが、そこでそのユーザ、メディア、政府それぞれにその未来のために責任を考えるよう呼びかける本を書くのはなかなかできることでないと思う。

ビル・ゲイツSource Code: My Beginnings

ビル・ゲイツ回顧録を出すとなれば、これはすぐに邦訳が出ると思っていたのだが、さすがにスティーブ・ジョブズイーロン・マスクのようにはいかないのだな。まぁ、これはほっといていても邦訳は出るだろうから心配はしていないが。

この本の宣伝で受けたインタビューの中で、彼が「いまになってみれば、ソーシャルネットワーキングに対して、それからいまはAIに対しても考えが甘かったと思います」と語っているは重いと思った。

Atossa Araxia Abrahamian『The Hidden Globe: How Wealth Hacks the World』

昨年くらいかな、日本でも政治や法律に記事で、「ハック」や「ハッキング」という言葉が使われるのを目にするようになった。富裕層は世界を「ハック」しているのですな。

クリストファー・ノーラン『TENET テネット』に出てきたジュネーブのフリーポート倉庫は、世界の富裕層が税金逃れと資産蓄財のために金融当局が追跡不能な美術品やワインなどの超高額実物財を隠す場所だったとか、ワタシの生活にはまったく縁のない話ではあるが、これは邦訳の価値がある本でしょう。

コリイ・ドクトロウ『Enshittification: Why Everything Suddenly Got Worse and What to Do About It』

コリイ・ドクトロウの本は、『リトル・ブラザー』(asin:4152091991)くらいしか邦訳がなく、ネット関係の文章を集めた本の邦訳が待たれるが、Enshittification という言葉の普及を考えれば、これはさすがに出ると思うね。

もっとも原書の刊行が今年10月なので、来年以降の話にはなっちゃうけど。

スチュアート・ブランド『Maintenance of Everything: Part One』

進行中の原稿についてはウェブサイトで閲覧できるが、やはり書籍になってリーチする層も未だあるわけで。しかし、これは飽くまでパート1なので、完結が間に合うかどうか。

ブライアン・クリスチャン(Brian Christian)『The Alignment Problem: Machine Learning and Human Values

この著者の過去作については邦訳が出ていることを考えると、この本の邦訳が未だ出ないのは不思議としか言いようがない。版権の価格で折り合いがつかなかったなどの事情があるのだろうか?

パーミー・オルソン(Parmy Olson)『Supremacy: AI, ChatGPT, and the Race that Will Change the World』

AI 方面のビッグプレイヤーに取材したノンフィクションは需要あると思うので、今年中には邦訳が出ると踏んでいるのだがどうだろうか。

ブルース・シュナイアー、Nathan Sanders『Rewiring Democracy: How AI Will Transform Our Politics, Government, and Citizenship』

↑でも書いたように、『ハッキング思考』における政治分野の話をさらに発展させた本になるだろうが、上でも触れた政治分野の「ハック」に対応した内容になると思われる。

そうそう、少し前に書名と同じ文章を公開しているので、これを読めば新刊の内容は分かるでしょうな。

刊行は今年10月後半なので、邦訳は再来年以降かな。

ブライアン・イーノ、Bette Adriaans『What Art Does: An Unfinished Theory』

ブライアン・イーノと言えば、ドキュメンタリー映画『Eno』の日本上映が決定したが、ワタシが住む地方ではやってくれないようでかなり悲しい。

それはともかく、その勢いでこの本の邦訳も出てくれないかな。

Ezra Klein、デレク・トンプソン(Derek Thompson)『Abundance

かなり評判の本であるが、著者たちはカマラ・ハリスが大統領選挙で勝てると踏み、ハリス政権への政策提言として本書を書いたんじゃないかなと推測できるわけで、デヴィッド・カープみたいに「別の世界線の本だ」という感想も出るだろうなという感じである。

Abundance (English Edition)

Abundance (English Edition)

Amazon

ブルック・ハリントン(Brooke Harrington)『Offshore: Stealth Wealth and the New Colonialism』

超富裕層がいかにして法の目をかいくぐって蓄財を行っているかの本は、今回のリストで2冊目だが、それに対する厳しい目があるからだろう。

James Boyle『The Line: AI and the Future of Personhood』

連載原稿でワタシは力を尽くして紹介したし、そこでも書いたようにこの本は彼のウェブサイトで全文無料ダウンロード可能なので、どなたか翻訳してみませんか?

それでは、皆さん、楽しいゴールデンウィークをお過ごしください。

[追記]:

以下、ここで取り上げた本の邦訳が出たのを紹介するエントリをはりつけておく。

yamdas.hatenablog.com

yamdas.hatenablog.com

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