- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/08/11
- メディア: Blu-ray
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元々観に行くつもりはなかったが、自分の観測範囲で評判がよかったので映画館に足を運んだ。
ヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現、それに乗っていた異星人が「第9地区」に難民として隔離されてから20年以上、未だ地球を去ることができない異星人と人間の軋轢が増したため強制収容所である第10地区への異星人の移住が進められる。
南アフリカ共和国のヨハネスブルクが舞台であり、難民としての異星人ということは、本作が何の比喩であるかは明らか……とか言われるけど、ホントそうかい? いや、言いたいことは分かる。しかし、そういう構造にとらわれた退屈さ、説教臭さは本作にはない。
ただ本作のリアリティがヨハネスブルクという舞台設定に拠っていることは間違いなく、異星人たちを食い物にする悪辣なナイジェリア人、異星人(本作では一貫して「エビ」呼ばわりされる)の立ち退きを請け負う民間会社、そしてそれを支える傭兵、その責任者となった気の良さそうな、しかしナチュラルに異星人への差別感情をあらわにする主人公など基本設定がすごくうまい。
ワタシが本作を観て連想したのは(笑われそうだが)『アバター』である。何も映画としての問題意識が共通してるとか、本作が『アバター』の偽善性を……とか難しいことを言うつもりはなく、作品に登場する意匠に共通するものがあったというだけだが、はっきりいってワタシにとっては最新の映像技術の粋を極めた超大作『アバター』より『第9地区』のほうが映画としては面白かった! 本作がアカデミー賞作品賞にノミネートされたのは、今年から候補作が倍になったからなのだろうが、それでもアカデミーの人たちも分かってるじゃない。
もちろん本作にも弱点はいくつかあって、特に主人公を異変をもたらす液体が宇宙船を動かすのにも必要という設定は無理がある。このように肝になるところに穴があれば大抵冷めるものだが、本作は上記の舞台や登場人物の設定の巧さ、そして彼らがいきなり利他精神に目覚めちゃって英雄になろうなんてことはなくそれぞれ自分の都合にこだわるリアルさ、そしてもちろん、何度もベチョっと血が飛び散るアクションの魅力があり、ラストまで白熱しっぱなしだった。
映画館は結構カップルが多かったが、女性の方は『アバター』ミーツ『ザ・フライ』な本作を楽しめただろうか。繰り返すがワタシ的には『アバター』より面白い本作だが、ゴキブリなどが苦手な方にはかなりツライものがあるだろう。またワタシにしても、しばらくはエビと聞いても食欲が湧かないだろうし、当然、猫缶はカンベンな!