そういうわけで、今週時間を作ってこちらにも行ってきました。平日夜(でもレイトショーではない)の回で客はワタシ含め5人程度だったのだが、ワタシのほぼ一列後ろに座った男性客が、映画の前半ずっとうめき声のようないびきをかいていて、かなり興を削がれた。いい加減にしろよ、おっさん!
それはさておき、大好きなリチャード・リンクレイターの新作ということで、公式サイトはおろか予告編も見ずに事前情報をほぼ入れずに行ったのがよかった。なるほど、『ヒットマン』なのに銃声が一切響かない映画なのな。
警察のおとり捜査に協力したゲイリー・ジョンソンという人の実話を基に作られているが、本作の主人公の名前がそのままゲイリー・ジョンソンというのは、本作のストーリーを考えるとマズい気もするのだが、大昔ならともかく、90年代になって素人をあんなおとり捜査に深くかかわらせるのかよ、しかもその後あんなはっきり裁判なんかで顔晒して大丈夫かよ、という驚きがどうしてもあるのだけど、アメリカというのはよく分からん国だ。
ともかく、本作はその設定の面白さだけに頼らないスリルとセクシーさがあって良かった。
本作はグレン・パウエルが主人公を演じるだけでなく、脚本と製作に関わっており、リチャード・リンクレイターという人は、『ビフォア』シリーズのイーサン・ホーク&ジュリー・デルピーもそうだけど、俳優を共同制作者として引き込むのがうまい人だ。
ワタシにとってはグレン・パウエルは『ツイスターズ』に続く好演ということになるが、製作年はこっちのほうが早いのね。彼がもちろん良いのだけど、主人公が恋するヒロインにしろ、彼の同僚にしろなかなか曲者で楽しませる。
元々自分自身にもその生活にも充足してたはずの主人公が、偽の殺し屋として利用したペルソナにありたい自分を見出し、それを演じるうちにややこしい事態に陥っていく。その主人公が果たしてどこに行きつくかという意味で、本作には道徳的価値の転倒があるのだけど、映画はそうでなきゃ!