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10月8日に開催される「技術書典5」にて書き下ろし技術コラムを含む『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版を販売します

一週間後の10月8日に開催される技術書オンリーイベント「技術書典5」において、達人出版会ブースにて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売する。

特別版とはどういうことかというと、現在販売中の『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』と以下の点が異なる。

  1. 今回新たに書き下ろした技術コラムの新作「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」を含む
  2. 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のエッセンスというべき章を選別した編集版
  3. 電子版に加え、紙の書籍のセットで販売

あとまだ現行版に入っていない誤記の修正も入っているはずだが、これはいずれ現行版にも反映されるだろう。ただ、少なくとも3の「電子版に加え、紙の書籍のセットで販売」というのは、このイベントオンリーになるのではないか。

なお、2の「章を選別」というのにボリューム不足を心配する向きがあるかもしれないが、それはない。なぜかというと。今回書き下ろした新作「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」が、例によってリンクをはりまくる文章であり、リンク先となる章をすべて収録し、これもあれも付け加えていたら、8割以上の章が入ってしまったと高橋征義さんがぼやいていたからである(笑)。

さて、その「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」は、ワタシがおよそ2年ぶりに書く技術コラムの新作である。はっきりいって、常軌を逸した長さである。『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録されたどの文章よりも長い。連載時は前編後編に分けた最終回「ネットにしか居場所がないということ」よりも長い、と書けばどれくらいの分量か分かってもらえるだろうか。

なぜそんな狂った長さになったのか、どういう文章なのかといった話は、明日の更新で書かせてもらう。

そういうわけで、「技術書典5」にお越しの方は、どうか達人出版会ブースで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版を気にかけてくださるとありがたいです。このイベントや会場アクセスについては、mochikoAsTech さんの「技術書典5っていつ?どこでやるの?何時にいけばいいの?混むの?」が参考になります。

古いカセットテープの写真を公開するVintage Cassettesがすごい

ウェブで素晴らしいと思うのは、よくぞこの情報を集めてくれた! と言いたくなるサイトに行き当たったときである。

最近はそういうサイトも少なくなったなという印象なのだが、調べものをしていて知った Vintage Cassettes には驚いた。

これはカセットテープの写真をひたすらアーカイブしているウェブサイトなのだが、1963年から2010年までのおよそ半世紀(!)に及ぶ期間的な網羅性、アメリカだけでなく欧州や日本も含む地理的網羅性もすごい。

ご存知の通り、カセットテープのメーカーというと SONYTDKMaxell など日本のメーカーが強かったので、ここに掲載されている写真に見覚えがある(あるいは、未だ現物が手元にある!)人も多いはずだ。

こういうサイトにどのような価値があるのかは正直分からないのだが、単純に金銭的価値につながらないアーカイブこそ実は後で大きな価値を持つ場合があって、これもその一つかもしれない。

そういえば、ワタシが記憶するだけでも『キングスマン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、カセットテープが重要な役割を果たす映画が近年あったねぇ。

今では PC を使わずにカセットテープをデジタル化する MP3 コンバータが売ってるみたいだけど。

元Google中国支社長が「中国がAIで米国に圧勝する理由」について書いた新刊が面白そうだ

この記事でインタビューを受けている Kai-Fu Lee は、マイクロソフトGoogle の中国支社で要職を務めたとても著名な人で、スティーブン・レヴィ『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』の中国の章で名前が出てきたのを覚えている人もいるかもしれない。

その彼の新刊のテーマは AI なのだが、中国の優位性を主張していて気になる。

AIは発見から実装のフェーズに入った。新しいアルゴリズムを発見した人が有利だった時代は終わり、今重要なのは実装。多くの資金とデータを持って早く動くところが勝つ。この意味で中国は有利だ。

https://aishinbun.com/comment/20180922/1735/

その今日発売になる新刊については公式サイトができているので、詳細はそちらを見てもらうとして、China Vs. US というページがありますな。

マイクロソフト CEO のサティア・ナデラ、(先日 TIME 誌を奥さんとともに買収したのがニュースになった)Salesforce のマーク・ベニオフ、そしてアリアナ・ハフィントンといって著名人が推薦の言葉を寄せているが、当然ながらというべきか Google 関係者の名前はない。

AI Superpowers (International Edition): China, Silicon Valley, and the New World Order

AI Superpowers (International Edition): China, Silicon Valley, and the New World Order

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

これは邦訳出るやろうね。

高須正和さん訳の『ハードウェアハッカー 〜新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』が来月刊行!

今年のはじめに高須正和さんの『The Hardware Hacker』翻訳を期待するという話を書いたのだが、その邦訳『ハードウェアハッカー 〜新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』が10月に刊行されるとのこと。ワオ!

ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険

ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険

書籍の詳しい内容は技術評論社のページを参照いただくとして、山形浩生の監修がしっかり入っているそうだ。

技術評論社のページに高須さんが書いているが、この本の著者は Chumby の立ち上げにも関わった人で、その昔「Chumbyの誕生」という文章を訳したワタシ的には感慨深いものがある。言われてみれば、Chumby って IoT の先駆けにして、中国でのモノづくりを成功させたハードウェアベンチャーの先駆けだったんだよね。

リーナス・トーバルズの謝罪をめぐる疑惑?

先週、大変話題になったリーナス・トーバルズの謝罪だが、個人的にはちょっとひっかかるところがあった。

というのも、今回の意思表明のきっかけとなった Linux カーネルの会議にリーナスがスケジュールを間違えて参加できなくなったら、会議自体が彼に合わせて再スケジュールされたという話が、彼の謝罪内容となんか合致してないように思えたからだ。

リーナスの意思表明の数日後に公開された記事だが、彼がこれまで主に LKML 上で行った過去の悪行(?)を取り上げ、いろんな女性開発者に取材している。単に彼の意思表明を受けての記事ではなく、リーナスのコミュニケーションスタイルのせいで、Linux カーネルの女性開発者が少ないんじゃないか、彼の姿勢が Linux カーネル開発コミュニティの女性軽視につながっているのではないか――というアングルに基づいている。

さらに言えば、これを少し前の Guido van Rossum が Pythonの仕様策定から離れるというニュースと絡め、オープンソース運動が直面している #MeToo ムーブメントと言いたいらしい。

かの New Yorker にリーナス・トーバルズ、並びに Linux カーネルコミュニティを取材する記事が載るなんて確かに驚きなのだけど、この記事を書いている Noam Cohen は、ワタシもBackChannelチームが選出した2017年最高のテック系書籍11選で紹介した『The Know-It-Alls』の著者なんですね。New Yorker のような雑誌でもテック系の記者を雇う時代なのである。

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

リーナスが LKML で使う罵倒語について分析した論文(そんなのあるんだ!)によると、彼はジェンダーバイアスはなく男女問わず無礼とか、この記事自体興味深いので、どこか日本語に訳さないかと思う。

さて、先週末にこのブログを読み、うーん、となってしまった。これを書いている Valerie Aurora は、オープンソースコミュニティーの男女差問題に取り組む Ada Initiative の共同創始者として知られ、2013年にオライリーOpen Source Awards を受賞している人である。

彼女自身、上記の New Yorker の記事の取材を受けているのだが、彼女は Noam Cohen の記事が Linux コミュニティに少なくとも一年くらいかけて影響を及ぼすんじゃないかと思っていたら、件のリーナスの意思表明という急転直下があって驚いたとのこと。

で、彼女は、今回のリーナスの意思表明は、New Yorker の記事が出る前にリーナスの雇用主である Linux Foundation が、リーナスの Linux カーネル開発者としてのダメージを緩和すべく、またそれにともなう経済的損失を緩和すべく先手を打ったものじゃないか、と考えているようだ(明言はしてないけど)。

さて、この手の話はとてもセンシティブだし、ワタシの誤読もあるかもしれないので、ワタシの要約をうのみにせずにできれば原文にあたってほしい。

正直、こんな疑惑(?)をかけられるくらいなら、リーナスには謝罪なんてしてほしくなかった。(こういうことを書くと叩かれるかもしれないが)リーナスが誰かにセクハラしたわけじゃなし、#MeToo ムーブメントなんかと絡められるのも気に入らない。

リーナスが他人の気持ちを考えられるようになるのもそれは結構なのだけど、初期 Linux カーネル開発における最大の功労者の一人である Alan Cox にネチネチ厳しい指摘をしてブチ切れさせるぐらいの、忖度も容赦もない姿勢により担保されてきた品質があるのではないか。

【自慢】将棋アマ三段の免状を取得した【祝、羽生善治永世七冠達成】

既に他の場所で自慢しているのだが、せっかくなのでこのブログでも自慢させてもらう。

日本将棋連盟より将棋アマ三段の免状を取得した。

前回1995年にアマ二段の免状を取得したのは、その前年に米長邦雄が念願の名人位を獲得し、かつて彼を人生の師と仰いだこともあるワタシも喜んだのだが、その名人位の挑戦者に羽生善治が名乗りをあげたところで、しまった! 名人 米長邦雄の署名が入った免状を持ってなかった、と慌てて資格取得に急いだのだが、残念ながら間に合わず、「名人・竜王 羽生善治」の署名になってしまったという過去がある。

今回免状をまた取ろうと思ったのは、羽生善治竜王位を奪取したときで、正直今年を逃せば、また羽生善治の署名が入った免状を取得する機会はないかもしれないと思ったからである。その後、羽生さんが名人位の挑戦者になるという予想外の展開になり、念のためにその結果を見極めてから取得の手続きを取った次第である。

前回は「将棋世界」の認定コースを頑張ったが、今回は将棋倶楽部24の点数で申請させてもらった。実を言うと、最大瞬間風速で四段の免状を取得できる資格があるのだが、四段ともなるとそれこそ県代表クラスの実力者ということになり(だよね?)、ワタシはとてもではないがそんな実力はないわけで、三段で取得させてもらった。

というか三段でもおこがましいにほどがあるのだが、三段であっても資格取得にはケチなワタシにしてみればかなーりなお金がかかるわけで、まぁ、道楽ですね。

羽生善治の字が汚いと言ってはいけない風潮があるのかは知らんが、ワタシは羽生さんの署名が入った免状をまた取得できてひたすら嬉しい。羽生さんと同時代人であることをワタシは誇りに思う。

というわけで、名人 佐藤天彦竜王 羽生善治の署名である。日付がなぜか今日なのは深く考えないことにする。

日本将棋連盟から届いた荷物には、免状以外に結構な大きさの箱があり、なんだと思ったら、羽生善治永世七冠達成記念の時計だった。これはまったく予想しておらず、ワタシのボルテージは最高潮に達した。

時計の写真におっさんが住む殺風景な部屋が写りこんでいて非常に見苦しくて申し訳ない。

さて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』についても、もう少しすると告知したいことがあるのだが、それとは別にワタシが文庫本解説を書いた河口俊彦大山康晴の晩節』もよろしくお願いします。

カメラを止めるな!

カメラを止めるな!  [Blu-ray]

カメラを止めるな! [Blu-ray]

とにかく面白いと評判になっていた映画だけどなかなか観ることができず、これが福岡に住んでたら(東京と同時期にキャナルシティ博多で上映を開始していたので)とっくに観れたはずなのにと恨めしく思っていたが、8月半ばになってようやく観れた。

念のため、以下ネタバレ注意、と書いておく。

とにかくできるだけ事前情報を入れないように神経をとがらせて、ツイッターの言及やブログエントリをシャットアウトし、また同時に期待値を高めすぎないように自己抑制したおかげで、こういう映画だったのか! と大満足でした。ポン!

……なのだけど、実は情報シャットアウトには失敗していたのである。よりにもよって、上映直前にツイッターのタイムラインを眺めてたら、三谷幸喜の『ラヂオの時間』(asin:B000BN9ADO)と比較する人のツイートをうっかり見てしまったために、中盤以降の展開がほぼ読めてしまったのは痛恨だった。

本作については原作/原案問題が勃発してしまったため、「パクリ」とかしょうもない言葉がタイトルに載ったニュース記事を見て腹立たしい思いをしたが、創造性は優れた過去の上に築かれる。本作を観て『ラヂオの時間』を連想する人もいるだろうし、それを言うならウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』(asin:B0076S5KU4)を連想する人もいるかもしれない。

本作は低予算ながら、そうした過去からの優れた継承があり、何より映画への深い愛情を感じる素晴らしい作品だった。そういう映画を観れて、ワタシはただ嬉しい。それで十分である。

ミッション:インポッシブル/フォールアウト

本作について、とにかくトム・クルーズがやりたいアクションを優先して撮影し、後から脚本のつじつまを合わせたという無茶な話を聞いていたので、そうした整合性は期待しなかったが、前作『ローグ・ネイション』からの継続性と『オデュッセイア』という枠でなんとかつなぎとめていた感じである。『ゴースト・プロトコル』には劣るが、そういう比較をしてもしょうがない気になるアクションの連続だった。

本作でトム・クルーズが挑む、彼をかっこよく見せるよりも危険に晒すことが優先されているような、年齢を超越したアクションを見るにつけ、昔柳下毅一郎さんが、アーノルド・シュワルツェネッガーの主演作の傾向を評して、シュワルツェネッガーは深刻なアイデンティティクライシスの問題を抱えているのではないか、と書いていたのを思い出した。

当時、柳下さんの文章を読んだワタシは、いやぁ、シュワちゃんが大暴れするのに設定上のギャップがあったほうが際立つという計算で出演作を選んでいるだけなんじゃない? と思ったものだが、危険極まりないアクションにスタントなしで挑むトム・クルーズの没頭は、一種の自殺願望のあらわれではないだろうか? とすら思ったのである。

昔からアクターアスリートと評したくなる人ではあるが、他の人がツイッターに書いていた表現を借りると、「このアクションは、むしろ CG であってくれ」とまで思ってしまう本作は尋常ではない。このシリーズにおける主人公の右腕役となった感のあるサイモン・ペッグが、「もう少し現実というものを味わってみるもの良いのかなと思うこともあります」と語るのも、そうした危険を感じているから……でないならよいのだけど。

レディ・バード

以下は、やはりブログ休止中に観た映画の感想など。

やはり、これも故郷の映画館で国内時差を使い観れた映画である。途中トラブルがあったらしく、上映がしばらく止まるという多分人生初の体験ができた(いや、前にもあったかな?)。

レディ・バード』は、(自称/他称の違いはあるにせよ)「バード」が「バード」でなくなるまでの物語という意味で、グレタ・ガーウィグ版『個人的な体験』ともいえる。というか、よく考えると『フランシス・ハ』と大枠同じ話に思えたりもするが、映画として好きなのは本作のほうである。

カリフォルニア州サクラメントという、ロサンゼルスやサンフランシスコのような大都会ではない保守的な街に住む、貧困層ではないが父親が失業問題を抱え、母親にプレッシャーがかかる裕福でない家庭に育った主人公の、保守的な街では少し浮いているがエキセントリックまではいかない中途半端な感じをニュアンスに富んだ演出で魅力的なものにしている。

2018年に刊行されたルー・リード関連書籍の紹介

ルー・リードの初期の未発表の詩集が4月に刊行された話はここでも紹介済だが、その後もルー・リードに関連する書籍がいくつも出ているので、まとめておきたい。

ここでもアルバムについて本を書く「33 1/3シリーズ」が100冊を超えていたとして三年前に紹介した 33 1/3 シリーズにおいて、エズラ・ファーマン(Ezra Furman)がルーの代表作『Transformer』をタイトルに冠した本を書いている。

Transformer (33 1/3)

Transformer (33 1/3)

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

エズラ・ファーマン自身バイセクシャルを公表している人で、ルーは特別な存在なのだろう。

これは変わった本である。映画ではスパイク・リー作品への出演、テレビドラマでは『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の主人公の甥のクリス役で知られるマイケル・インペリオリが、1970年代のニューヨークでルー・リードと友達になる少年が主人公の小説を書いている。

The Perfume Burned His Eyes

The Perfume Burned His Eyes

The Perfume Burned His Eyes (English Edition)

The Perfume Burned His Eyes (English Edition)

ジョイス・キャロル・オーツやリディア・ランチが推薦の言葉を寄せてますね。

ルー・リードのインタビューをまとめた My Week Beats Your Year: Encounters with Lou Reed という本が今月刊行されるとのこと。だが、Amazon で検索しても(日本、本国とも)ヒットしないんだよなぁ。

ルー・リードといえばインタビュアーに対する当たりの強い人として知られるので、緊張感と辛辣さに満ちた本かもしれませんな。

さて、実は今、牛歩を歩みでジェレミー・リード『ワイルド・サイドの歩き方 ルー・リード伝』(asin:4907435614)を読んでいるところだが、著者の独断が鼻につく上に不十分な記述が散見される本で、正直読んでいてところどころイラっとくる。なんでこれをルー本人が評価したのかよく分からない。

しかも、ピーター・ドゲット『ルー・リード ワイルド・サイドを歩け』(asin:488682174X)と同じ情報源を訳しながら、訳が悪くなっている箇所もある。

これが決定的な伝記になるのはシャクなので、Anthony DeCurtis による伝記本『Lou Reed: A Life』の邦訳が出てくれることを期待してしまう。

Lou Reed: A Life

Lou Reed: A Life

Lou Reed: A Life (English Edition)

Lou Reed: A Life (English Edition)

はてなについて今思うこと(は特にない)

微塵の愛情もなかったし、未練もなかったが、捨てるだけの張合いもなかった。

坂口安吾「白痴」

以前から、ワタシがはてなについて何か批判的なことを書くと、はてなブックマークで「愛のある批判」といったぶくまコメントがつくのが少し不思議だった。

その人がそう感じるのなら、それに文句をつけることもないと思っていたが、やはり当人が思うところと距離があるのも問題かもしれない。かつてはともかく、今はてな並びにそのサービスに対して愛はない。そして、それは別に今始まった話ではない。

『情報共有の未来』の中で100箇所以上出てくる「はてな」という単語が、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』では1箇所たりとも出てこないのは、つまりはそういうことである。

5年ほど前、当時はてなの社員だった方に、話をしにはてなに遊びに来ませんかと雑談の中で打診されたことがあるが、「御社とは距離を置きたいので」とお断りした。その方もそうだが、ワタシがお会いしたことのある社員の人も大方既にはてなを離れており、今も残るのは大西さんなどごくわずかで、個人的なつながりはとっくにないに等しい(モーリさんは、はてなに入られるずっと前から知っているので別枠)。

あとこの会社の創業者に対しても、角川インターネット講座への寄稿をめぐる不愉快な経験により、個人的な信頼は失われている。それだってもう三年前の話だ。その経緯については、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録した「ラストスタンド」の章のあとがきに書かせてもらった。

だから、もうとっくに義理も期待もない。ワタシがはてなについて筆誅に類することを書いたとしても、「愛のある批判」といったフォローは必要ないし、はてなの側も遠慮なく対抗措置をとってくれてかまわない。

今は、はてなダイアリーからはてなブログへの移転が成功裡に済むことを願うばかりである。それが済めば、はてなのサービスにコメントすることも特になくなるのではないか。

スターリンの葬送狂騒曲

スターリンの葬送狂騒曲 [Blu-ray]

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公開前から楽しみにしていた映画だが、期待通りの出来だった。原作(asin:4796877347)は例によって未読である。

スティーヴ・ブシェミのコメディアンぶりが堪能できるし、当時のソ連における粛清の恐怖がブラックユーモアのドタバタ劇に昇華されている。個人的には、『危険な動物たち』以来20年ぶり(!)の本格的な映画出演となるマイケル・ペイリンが、顔見せ程度の出演かと思いきや、しっかりパイソン的な笑いに貢献していて嬉しかったな。

30年後の同窓会

30年後の同窓会 [Blu-ray]

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これも帰省時に(『ファントム・スレッド』を観た翌日に)観に行った。

リチャード・リンクレイターが『さらば冬のかもめ』の続編を作りたいと言ってたのは知っていたが、これだったんだね。ただ本作は正式な続編ではなく、主要三人の人物設定が近いという精神的な続編ということだが。

さらば冬のかもめ』自体は、昨年 BS プレミアムで初めて観たのだが、今我々日本人が観るとちょっと微妙なところもあって、ちょっとピンとこないところもあった。

しかし、逆に言えば、それが当時受けたのは、『さらば冬のかもめ』が1970年代のアメリカ、具体的にはベトナム戦争後の痛みをうまく表現していたからだろう。そうした意味で、本作はおっさんたちのほのぼのロードムービーなどではなく、イラク戦争後のアメリカの痛みを確かに表現している。

やはり主役三人の演技がそれぞれ味わい深かった。

ファントム・スレッド

ここからは、ブログ休止中に観た映画の感想など。

ポール・トーマス・アンダーソンの新作なので、観なきゃと思いながら観に行けなかった映画だったのだが、帰省した際に、故郷に唯一残るアートシアター系映画館で国内時差(?)を利用して観ることができた(昨年は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』や『パターソン』をそうやって観ている)。

2018年に観た映画の中で、映画としての格調が段違いだった。そこらへんの映画と比べるのがおこがましいくらいの格の、しかもかなり怖い作品である。

ただ、本作を許せない人もいるだろうな、とも思った。本作はジョナサン・デミに捧げられていて、それは本作制作中に彼が亡くなったという時期的な意味合いが大きかったと思うのだが(多分)、そうした意味で(ロバート・アルトマンなどに感謝が捧げられていた)『レイチェルの結婚』を思い出したが、デミ当人が本作を観ていたら、「俺の映画の女性とは違う……」と言ったかもしれないね。

ところで、この映画では主人公が車を走らせる場面は妙に騒々しく演出されていて、それこそ『時計じかけのオレンジ』を思い出したくらいだが、これはなんでだろう。

キャス・サンスティーンの #Republic の邦訳『#リパブリック: インターネットは民主主義になにをもたらすのか』が出たぞ!

2017年は実はキャス・サンスティーンの年だったと昨年末に書いたが、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)で邦訳を待望した、#Republic の邦訳が出ている。

#リパブリック: インターネットは民主主義になにをもたらすのか

#リパブリック: インターネットは民主主義になにをもたらすのか

原題は『#Republic: Divided Democracy in the Age of Social Media』で、副題は直訳すると「ソーシャルメディア時代における分断された民主主義」なので、邦訳の副題「インターネットは民主主義になにをもたらすのか」はちょっと違うというか、「ソーシャルメディア」と「分断」をちゃんと入れてくれと言いたくなる。が、おそらくは『インターネットは民主主義の敵か』を意識しているのだと思う、とフォローしておこう。

インターネットは民主主義の敵か

インターネットは民主主義の敵か

『インターネットは民主主義の敵か』の原題は『Republic.com』で、その続編である『Republic.com 2.0』が出たのが2007年で、『#Republic』はその10年後の2017年に出ている。

つまりは、今回の『#リパブリック』は『インターネットは民主主義の敵か』の続々編というわけである。思えば、エコーチェンバー、サイバーカスケード、サイバーバルカン化などの言葉は『インターネットは民主主義の敵か』を契機に広まったわけで、サンスティーンの影響力は大きい。当時からインターネットと民主主義の関係を、危機感をもってしっかり論じた人となると、サンスティーンとローレンス・レッシグくらいだったのではないか。

あと、2001年に「ドットコム」、2007年に「〇〇 2.0」、そして2017年に「ハッシュタグ」と、一般層に膾炙したぐらいにこの手のテック系タームを書籍の題名に使うあたり、素直にうまいなぁと思う。

そのサンスティーンだが、来年には別の本の邦訳が出るそうで、本当にこの人はは多作ですな。

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