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リーナス・トーバルズの謝罪をめぐる疑惑?

先週、大変話題になったリーナス・トーバルズの謝罪だが、個人的にはちょっとひっかかるところがあった。

というのも、今回の意思表明のきっかけとなった Linux カーネルの会議にリーナスがスケジュールを間違えて参加できなくなったら、会議自体が彼に合わせて再スケジュールされたという話が、彼の謝罪内容となんか合致してないように思えたからだ。

リーナスの意思表明の数日後に公開された記事だが、彼がこれまで主に LKML 上で行った過去の悪行(?)を取り上げ、いろんな女性開発者に取材している。単に彼の意思表明を受けての記事ではなく、リーナスのコミュニケーションスタイルのせいで、Linux カーネルの女性開発者が少ないんじゃないか、彼の姿勢が Linux カーネル開発コミュニティの女性軽視につながっているのではないか――というアングルに基づいている。

さらに言えば、これを少し前の Guido van Rossum が Pythonの仕様策定から離れるというニュースと絡め、オープンソース運動が直面している #MeToo ムーブメントと言いたいらしい。

かの New Yorker にリーナス・トーバルズ、並びに Linux カーネルコミュニティを取材する記事が載るなんて確かに驚きなのだけど、この記事を書いている Noam Cohen は、ワタシもBackChannelチームが選出した2017年最高のテック系書籍11選で紹介した『The Know-It-Alls』の著者なんですね。New Yorker のような雑誌でもテック系の記者を雇う時代なのである。

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

リーナスが LKML で使う罵倒語について分析した論文(そんなのあるんだ!)によると、彼はジェンダーバイアスはなく男女問わず無礼とか、この記事自体興味深いので、どこか日本語に訳さないかと思う。

さて、先週末にこのブログを読み、うーん、となってしまった。これを書いている Valerie Aurora は、オープンソースコミュニティーの男女差問題に取り組む Ada Initiative の共同創始者として知られ、2013年にオライリーOpen Source Awards を受賞している人である。

彼女自身、上記の New Yorker の記事の取材を受けているのだが、彼女は Noam Cohen の記事が Linux コミュニティに少なくとも一年くらいかけて影響を及ぼすんじゃないかと思っていたら、件のリーナスの意思表明という急転直下があって驚いたとのこと。

で、彼女は、今回のリーナスの意思表明は、New Yorker の記事が出る前にリーナスの雇用主である Linux Foundation が、リーナスの Linux カーネル開発者としてのダメージを緩和すべく、またそれにともなう経済的損失を緩和すべく先手を打ったものじゃないか、と考えているようだ(明言はしてないけど)。

さて、この手の話はとてもセンシティブだし、ワタシの誤読もあるかもしれないので、ワタシの要約をうのみにせずにできれば原文にあたってほしい。

正直、こんな疑惑(?)をかけられるくらいなら、リーナスには謝罪なんてしてほしくなかった。(こういうことを書くと叩かれるかもしれないが)リーナスが誰かにセクハラしたわけじゃなし、#MeToo ムーブメントなんかと絡められるのも気に入らない。

リーナスが他人の気持ちを考えられるようになるのもそれは結構なのだけど、初期 Linux カーネル開発における最大の功労者の一人である Alan Cox にネチネチ厳しい指摘をしてブチ切れさせるぐらいの、忖度も容赦もない姿勢により担保されてきた品質があるのではないか。

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