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ブラッド・シンプル/ザ・スリラー

DVDジャケット

コーエン兄弟のファンを自称しながら、彼らのデビュー作である本作を観てなかった。で、ようやく観たわけだが、これは傑作である! とにかく面白い。彼らの後の作品につながるテーマ性や映像世界がばっちり詰まっていて、これはお勧めである。

正確には本作はデビュー作の再編集版なのだが、タイトになるよう編集されたことが伝わり、ポイントとなるシーンの衝撃度(まだこなれてないゆえの唐突さも含め)もオリジナルより強まっているのではないか。今回「ザ・スリラー」と付加されているが、正にその名に恥じないゾクゾク感を観る側に与える。

上に書いたように、本作を観ると後の『赤ちゃん泥棒』『ミラーズ・クロッシング』へのつながりがよく分かりニヤリとしてしまうが、最も作品として相関性が強いのはやはり『ファーゴ』だろう。

以前中原昌也が「SPA!」のコラムかで、コーエン兄弟についてその説教臭さが嫌になるといったことを書いていて(うろ覚え)、彼らの作品についてそのように思ったことのなかった、むしろ逆に思想性の欠落を感じていた当方は意外に思った覚えがある。唯一それがあてはまる映画となると『ファーゴ』だろうか。実際、この映画はファンの間でも賛否両論が多く、そのあたりも関係しているのかもしれない。

ワタシは『ファーゴ』を当代きっての名女優であるフランシス・マクドーマンドのための映画、もう少しちゃんと書けば、それこそ『ブラッド・シンプル』の頃から一貫して描かれる行き違いの末に殺し合いをしてしまう人間の悲喜劇をよそに、まっとうに夫を愛し、まっとうに仕事をし、自分の与えられた環境の中でまっとうに生きる聡明な女性を描く映画だと割り切っているので、『ファーゴ』は好きだ。うーん……こうやって書くと思い切り詰まんない映画みたいだが(笑)、なんだかんだいって、あの映画におけるウィリアム・H・メイシーの徹底的な情けなさが他人に思えないだけかもしれない(おい!)。

話を『ブラッド・シンプル』に戻すと、本作制作後結婚するジョエル・コーエンもまだ手探り状態でフランシス・マクドーマンドを使っていることが想像できる。つまり『ファーゴ』のように整理されておらず、それが彼女を他の登場人物同様疑惑の中に置く形になり、ストーリーの緊張感を高めている。コーエン兄弟の映画は中盤ちょっとだれることが多いのだけど、本作はそれもない。正に100%スリラー。久方ぶりに痺れる映画だった。

あと DVD の作りに文句をつけさせてもらうと、特典におけるストーリー解説の文字が小さすぎて読めんっちゅうねん! それに拳銃の弾についての解説に間違いあるし。

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