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ロング・グッドバイ

見事に崩してみせやがったな。

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』ロバート・アルトマンによる映画化である。原作への愛についてはこれまで何度も書いているので繰り返さないが、それをこれまたワタシが愛するアルトマンが映画にしたわけで、長らく DVD 化を待望していた作品である(あと『ナッシュビル』が出てくれれば……あ、『ウエディング』は DVD 化されておる!)。

さて、「観てから読むか、読んでから観るか」というコピーが昔あった。本作を観た後、なぜかこのコピーを思い出した。

冒頭に書いたように、本作は見事に原作を崩してくれている。ワタシは何より原作を愛し、飽きもせず何十回と読み返している人間である。アルトマンなのだから一筋縄にいかないのは予想していたが、これはどうなんだろうという気持ちでずっと観ていた。映像を見ながら、どうしても原作の言葉、ワタシが原作を読んで勝手に想像していた映像を補おうとしてしまった。

しかし原作とまったく異なるラストに呆然となった後で、辻褄が合うというか本作がまぎれもなく独立した一本の映画であることを当たり前ながら思い知らされた。これは彼のファンにも賛同いただけないかもしれないが、ワタシはアルトマンのことを、「人間嫌いを極めて人間的に撮る」人だと思っている。そうした意味で彼らしい映画ではないか。

ジャズを配した心地良い音楽もコミで、紛れもなくアルトマンの映像世界である。登場人物が総じてヘンな中で(現ロサンゼルス市長もちょい役で出ています)、小説上のフィリップ・マーロウと似ても似つかないのに、存在自体がどうしようもなくマーロウになっているエリオット・グールドが素晴らしい。

この原作小説と映画の組み合わせに関しては、映画を先に観て、それから原作を読むのが案外良いような気がする。映画単体で完結しているし、またこれを観ても原作の味わいが失われることはない。

どちらが好きかと言えば、そりゃ圧倒的にチャンドラーの原作だけどね。

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