当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

それでもボクはやってない

Shall we ダンス?』(asin:B000IU39ZK)はワタシも大好きな映画で、その周防正行監督が痴漢冤罪についての映画を撮るというニュースを耳にしたときは当惑したのを覚えている。

痴漢冤罪がテーマではコメディーにならないし(もちろんやることは可能だが、周防正行はそういう映像作家ではない)、12年ぶりの新作がそれで大丈夫だろうか、自分の作風を見失っているのでは、と期待よりも不安が先に立った。

ワタシは甘かった。周防正行は痴漢冤罪事件と裁判を正面から余すことなく描ききっている。本作のような大ヒット作になりえない題材の映画化を実現させた製作者に敬意を表したい。

ワタシ自身は拘留された経験はないし、裁判も民事しか傍聴したことはないが、丁寧なリサーチを感じさせるディティール描写にはまったく迷いがなく、おそらくこの通りなのだろうと思わせる説得力がある。そしてその過酷としか言いようのない現実に放り込まれる主人公を加瀬亮が熱演しているが(彼は『硫黄島からの手紙』でも良い役をやっていたね)、日本に住む男性の多くがある日いきなり彼と同じ立場に追い込まれかねないことに今更ではあるが戦慄を覚えた。当番弁護士が自白を勧めるのが現実なら、ネット上でコピペされてる「痴漢冤罪逮捕の回避方法」はどこまで有効なんだろうか。

本作の上映時間は二時間半近くだが、だれる場面は皆無。ワタシが観たとき、場内ではっきり笑いがおきたのは一箇所だけだったが(警察署の前の場面)、本作のような題材で欠かせない説明的な台詞をスムーズにストーリーに組み込みながら、主人公が辿る苦闘を緊張感を切らさず描いており、周防正行のエンターテイメント映像作家としての手腕はまったく鈍っていなかった。

森山和道さんは、本作について「日本国民は全員見たほうが良いと思う」と書かれていたが、ワタシは日本国民が全員見るべき映画、と一段強めて書いておきたい。そしてこの恐るべき現状を胸に刻むべきである。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2022 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)