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ミッドサマー

ミッドサマー 豪華版2枚組 [Blu-ray]

ミッドサマー 豪華版2枚組 [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: Blu-ray

世界中の映画ファンをいやーな気持ちに叩き込んだ『ヘレディタリー/継承』に続くアリ・アスターの長編2作目である。

前作が尋常でなかっただけに本作への期待値も相当上がっていたわけだが、今回もやってくれた。前作同様、本作も「ホラー映画」に分類されるが、本作は恋人たちや友人たちの会話が微妙に詰まってできる「間」の演出がよくできていて(主人公たちがどんどん自我を失っていく後半よりも、村に行くまでの前半特に)、むしろダークコメディ映画の傑作と言いたくなる。

家族に遺伝する精神疾患への恐れといった前作にも共通する要素がいくつもあるが、本作はスウェーデンの田舎町で行われる夏至祭が舞台で、ひたすら爽やかでまぶしい画に満ちている。最初のトリップの後、主人公がかけこむ建物がぐんにょーと歪んでいたが、他でも映像歪曲手法を駆使しているようで、いつの間にかアリ・アスターに感覚を支配される恐怖を味合わされる。そして、例によって本作でもヤツは観客を不安に叩き込む。

本作を観て、どうしても『ウィッカーマン』を連想してしまったが(というか、主人公の恋人の名前が「クリスチャン」なのは絶対それでしょ)、あの映画のエンディングにあった悲壮美は本作にはない。何しろこっちは炎に包まれるあの人の恰好がああで、それからも本作のダークコメディ性が分かる。

それにしても、ずっと理性で感情を抑制すべしという現代社会の規範に縛られていた主人公が、はじめて感情を爆発させて泣き叫び、最終的に草花に同化したような恰好でカルトコミューンの住人の価値観に屈服して飲み込まれるエンディングの前に、死を前にした登場人物を通してこの村の価値観の欺瞞をちゃんと描いているところも巧みだった。

……というか、歴代のメイクイーンが写真でしか出てこなかったことを考えると、あの後主人公も殺されるんじゃないのだろうか。

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