少し前に紹介した3Dプリンタを使って家で銃を作ろうという Wiki Weapon Project だが、3Dプリンター引き上げという形でプロジェクトはいったん頓挫したようだ。
個人的には銃を作るプロジェクトに Wiki の名前が冠せられることに複雑な思いがあったのでひとまずほっとしたが、またこういう話がいろいろ出てくれば、3Dプリンタに DRM をかけて物騒なものを作れなくしろという声もいずれ出てくるのではないだろうか。
前回のエントリでも紹介した、3Dプリンタが一家に一台まで普及した近未来を描いたチャールズ・ストロスの小説について書いたコリィ・ドクトロウの文章を紹介しよう。今月発売されるはずの『Make』日本版最新号よりフライング引用する。
この3Dプリンタは、禁止された形状のブラックリストに該当しないかチェックし、合致したら出力させないDRMに制御されている(多分、形をちょっと変えるような過去行われた策略を判定できる、ある程度緩いマッチングアルゴリズムが使われているのだろう)。
もちろん、このDRMはうまく機能しない。悪者はわけなく禁止主義者の裏をかき、やがてブラックマーケットが生まれ、覚醒剤の製造所や、高硬度ポリマーでできたメリケンサックや、X線検査にかからない非鉄強盗ナイフといったどえらいものを生み出すことになる。
(中略)
そしてやはり我々の世界と同じくストロスの世界でも、この監視と検閲は実際には悪者を止める何の役にも立たない。それどころか、現在の一連の検閲や監視の失敗を打開しようとして、さらなる監視、さらなる支配を求める悪循環を生み出してしまうのだ。
この話題については小林啓倫さんも書いているが、これはクリス・アンダーソンもご推奨の「メイカームーヴメント」の裏面ともいえる。
3Dプリンタを代表する企業である Makerbot は今、そのオープン性と収益性のバランスに苦しんでいるが(前編、後編)、オープン性を保つことは、実は後になってもっと大きな意味を持つかもしれない。