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アイアムアヒーロー

原作は未読で、はじめ観るつもりはなかった映画なのだが、かなりよくやっているという感想をいくつも目にし、またゾンビ映画の邦画としては異例のヒットと聞いて興味をもった次第である。

ゾンビ映画で「よくやっている」ということはすなわち残虐描写ということになり、ホラー映画は好きだけど同時にビビリでもあるワタシとしては正直不安だった。案の定ビビリらしく正視できない描写もあったのだが、確かによくやっていたと思う。

本作は海外の映画祭でいくつも賞をとったと聞いているが、本作の主人公の名前とタイトルの兼ね合い、ゾンビを ZQN(ゾキュン)と呼ぶセンス、また作中何度も使われる「ニート」という言葉の侮蔑性などちゃんと伝わったのかしらとも思ったりした。

ゾンビ映画としてはとてもオーソドックスな作りになっている。やはり身近な人間がゾンビ化して主人公が状況を実感すべきだし、当然街はパニックになるし、モールみたいなところに逃げ込むべきだし、そしてゾンビと同じくらい生きてる人間だって怖いのである。

それなら何が本作を浮かび上がらせているのかというと、やはり主人公のとても日本人的な佇まいである。大泉洋って『探偵はBARにいる』を見てもなかなかいい身体してるのだが、こういうマッチョになりようがない情けなさを身にまとった役もうまいよね。

彼は銃を持つ特権的な存在でありながら、律儀に法律をまもろうとし、なかなか撃たない(撃てない)のだが、それが逆にアメリカでは作れないゾンビ映画としてのユニークさにつながっているし、クライマックスの大殺戮が活きるのだろう。

ただそこでも「あと96発ある」とか言われて、原作を知らないこっちとしては「へ?」と思ったり、母乳からも感染するかもしれんなら、あれだけ血を浴びる長澤まさみとか絶対危ないだろとか(その点『28日後...』は設定がちゃんとしてましたね)、有村架純に最後に一働きさせる見せ場を作るべきだろとかいくつか気になるところ、不満はあるのだが、日本映画史上に残るゾンビ映画なのは間違いない。

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