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パラサイト 半地下の家族

パラサイト 半地下の家族 [Blu-ray]

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とにかく評判が高い映画で、しかもネタバレ厳禁とのことで、日本公開翌日の土曜午後に映画館に出向くまで、その手の類を踏まないよう苦労した。これから観る人は、「韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(『寄生虫』)をより楽しむための韓国文化キーワード7つ(ネタバレなし)」だけ読んで行くのがよいかも。

以下、映画の内容に触れるのでご注意を。

このように評判が高く、それとともに期待値が高くなりすぎると往々にして肩透かしをくらうことになりがちなのだが、本作は期待にがっちり応えてくれた。

意外にあっさり「寄生」に成功し、ここからどうなるの? まぁ、ご主人家族が急に帰ってきてドタバタはあるんだろうけど――ぐらいに思っていたところからの怒涛の展開!

これは多くの人が書いていることだが、日本の『万引き家族』アメリカの『アス』と見事に呼応した映画である。

(最新作の『家族を想うとき』は残念ながら観れていないのだが)本作と同じくカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク』もそうだけど、経済格差とそれが人心にどれだけむごい影響を与えうるか、本作はそれを見事にえぐっている。

一番その残酷さが出ていたのが、ご主人家族の奥様が言う、金持ちだから性格が良い、お金はしわを伸ばすアイロン、という言葉、そしてその正当性である。それがクライマックスとなるパーティに集まった人たちを見下ろす主人公の息子が、金持ちはこういう時でも余裕があって自然なんだね、と呟く半ば呆然とした表情に出ている。ご主人家族を単純な醜い金持ちと描いてないことが本作の成功に寄与している。そしてその一方で、主人公がいきつく「計画なんてしても無駄だ」という悟りの悲惨さ。

とにかく台詞やら小道具やらディテールに韓国社会の「経済格差」が詰め込まれている。これについてはいくらでも挙げられるだろうが、ご主人家族の住む家自体が実に良くて、世界的に共通となりつつある富裕層の暮らしぶりが打ち出されている。

洪水(雨に対する反応までが金持ち側と貧者側では反対!)でトイレがひどいことになりながら主人公の娘がクールにタバコを吸う場面など良い画がいくつも見事で、これはアジア圏の映画で異例のアカデミー賞主要賞ノミネートは不思議ではない。

ただ一点少し違和感があったのが、主人公と話す息子の台詞が丁寧語で訳されていたこと。韓国だとそんな感じなのだろうか。

さて、これを書いたので、これから本作について書かれたウェブの記事を読むことができる。それも楽しみ。

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