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1917 命をかけた伝令

今年のアカデミー作品賞最有力候補で、そのアカデミー賞の発表直後に日本公開、本来なら最高のタイミングだったはずが、ご存知のように『パラサイト 半地下の家族』に持っていかれてしまった。

よくできた映画だった。ロジャー・ディーキンスの撮影は例によって見事の一言。でも、正直『パラサイト』がアカデミー作品賞で良かったと思う。

本作については、「全編ワンカット」というのが宣伝文句に多用されているが、これは正直逆効果ではないかとも思った。それはワタシが長回しにうるさい人間だからだけではない。確かに二か所はっきりカットが切れるところがあり、疑似でもないじゃないか、これなら『ロープ』のような古典のほうがよほど「ワンカット」に見せてるよと思っちゃったが、それで本作の価値が落ちるものでもない。

伝令の命令を遂行する二人の若い兵士をはじめ基本的なそこまで有名でない役者なのだが、そこにコリン・ファースやあの人といった名の知れた俳優が要所を締める形である。それにしても近年のマーク・ストロングのスクリーンに出てきただけで頼りになる感はなんなんだ。抱いて。

最初のほうで、ああ、この二人のうち多分こっちが任務を遂行し、もう片方は駄目なんだろうなと思っていたら、唐突な形で裏切られてしまう。このあっけなさも狙いなんだろう。そういえばこの片方はどこかで見たことがあったと思い出せなかったのだが、調べたら『パレードへようこそ』の彼だった。

あえなく失われる命、死体が転がりまくる惨状がよく描かれているのだが、当然そこにあるだろう「死臭」の演出が足りなかった。臭いを感じさせるところって、はじめのほうの馬の死体に蠅がたかるところくらいじゃなかったかな。

「全編ワンカット」には物言いをつけてしまうが、それでもそれでやりたかった演出の意図はよく分かり、緊張感が観客にも伝染する仕組みになっている。さて、伝令を主人公は伝えられるのか、そのあたり本作はうまい落としどころなのだろう。やはり最後の激走はすごかった。しかし、日の出とともに行う突撃攻撃を前にして大声で朗々と歌を歌うって、アンタら何やってんの? と正直思ってしまった。

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