『モンティ・パイソンができるまで』に続くジョン・クリーズの新刊は、ズバリ Creativity と題した創造性をテーマとする本で、その刊行を受けていくつかインタビューを受けている。
新刊のテーマである創造性について、クリエイティブであるためには、クリエイティブな思考でないといけない。クリエイティブなムードに身を置く必要がある。それをどうやって実現するか? クリエイティブなムードとは、本質的に遊び心に満ちている。なんで子供はごく自然に遊べるのか? 子供は誰が夕食を作るか心配する必要がない。つまりは、日々の責任だね、とのこと。
創造性を尊敬するコメディアンの先達から学んだのかと問われ、例としてデヴィッド・フロストの名前をインタビュアーが挙げると、すかさずクリーズ先生はピーター・クックの名前を挙げて訂正している。本当にクックを尊敬しているんだなぁ。
面白いのは、インタビュアーが数年前にエリック・アイドルに聞いた、彼がジョージ・ハリスンと友達になって、モンティ・パイソンにおける自分が、ビートルズにおけるジョージ・ハリスンと同じ「free-floating radical(気ままな過激派?)」な役割を果たしていたと気づいた話を受けた、クリーズ先生の言。
私はポール・マッカートニーに共感するよ。だってジョン・レノンはちょっともてはやされ過ぎに思うし、マッカートニーに八つ当たりする人もいた。グループではエリックが一番一緒に仕事がしやすかった。彼は物事を諦めることができたから。一方でとても仕事が難しかったのはテリー・ジョーンズだった。彼はあらゆることに強い信念があって、彼の物の見方を変えることなどできなかったから。で、グレアム・チャップマンはどのみち人の話なんて聞いてなかったし。テリー・ギリアムにいたってはその場にいなかった。で、マイケル・ペイリンは、衝突するのが嫌いなものだから、誰にでも同意するばかりでね。
少しマイケルに辛辣だが、この後、「マイケルと私は自然な友達だし、どのみちずっと友達でいるだろう」とも言っている。ギリアムがその場にいなかったというのは、彼がグループの中で単独でアニメーション作りを行っていたから。
今年1月に亡くなったテリー・ジョーンズとジョンの対立はよく知られているが、このインタビューでも創作過程において二人の対立は生産的だったか、有害だったかと聞かれ、はっきり有害だったと答えている。が、『ライフ・オブ・ブライアン』の監督としての仕事を phenomenal と讃えている。『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』においても、テリーJの監督も最高だった、テリーGは画作りには長けていたが、コメディーの撮影という点でテリーJのほうが優れていた、とのこと。
インタビューでは、クリーズ先生の代表作『フォルティ・タワーズ』の(一時的な)配信取り下げについても突っ込んで聞いている。これは登場人物のゴーウェン少佐がNワードを口走る場面があるからだったんですね。
当然ながらというべきか、クリーズ先生はポリティカルコレクトネスについて良い感情を持ってないようだ。
ポリティカルコレクトネスに関係するあらゆることが、コメディというものの誤解だと私は感じる。コメディは完璧な人間とは無縁のものだ。コメディとは人間の弱点、弱さに関するものなんだ。
この件については、昨年の「ロンドンはもはや英国ではない」発言も引き合いにしながらいろいろ聞かれており、クリーズ先生も応戦しているが、近年の筒井康隆に重なる感があって苦しいというのが正直なところ。
それはともかく、クリーズ先生の新刊も邦訳が出るといいなぁ。
Creativity: A Short and Cheerful Guide
- 作者:Cleese, John
- 発売日: 2020/09/03
- メディア: ハードカバー
Creativity: A Short and Cheerful Guide (English Edition)
- 作者:Cleese, John
- 発売日: 2020/09/03
- メディア: Kindle版