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もっとも影響力の大きい25のミュージックビデオ

www.yardbarker.com

もっとも影響力の大きい25のミュージックビデオを紹介するページで、ありがちな企画といえるが、1980年代という MTV の時代にティーンエイジャーだったロック年寄り的にはこういうページは読んでしまうわけである。

誰もが取り上げるマイケル・ジャクソンやマドンナといったビッグネームのビデオはシカトさせてもらい、それ以外でいくつか取り上げておく。

まずはボブ・ディランの "Subterranean Homesick Blues"。

これが作られた当時、ミュージックビデオ、プロモーションビデオという概念自体あったのかも分からないが、紙に書かれた歌詞をどんどん見せていく手法は斬新で、多くのパロディを生んだ元祖に違いない。

次はバグルスの "Video Killed the Radio Star"(ラジオスターの悲劇)。

今これを単体で見てもなんとも思わないが、MTV の開局時にこの「ビデオがラジオスターを殺した」というタイトルの曲が一番最初に流れたというのはあまりに象徴的というか出来すぎである。

お次はトーキング・ヘッズの "Once in a Lifetime"。

日本人的には、このビデオのバックに竹の子族の映像が流れ(デヴィッド・バーンのダンスに影響を与え)ているのに目がいくが、トーキング・ヘッズニュー・オーダー、そしてユーリズミックスこそ、1980年代一貫して優れたビデオを作り続けた3大バンドとワタシは思うのよね。

お次はハービー・ハンコックの "Rockit"。

この曲は、このエントリの下で名前が出てくる OK Go のダミアン・クーラッシュの人生を変えた曲なのだけど、この曲のヒットにビデオの果たした役割も大きかったろう。

80年代最高のビデオ作家ゴドレイ&クレームの作品でリスト入りしているのはこれだけかな。

続いてはダイアー・ストレイツの "Money for Nothing"。

この曲には何重にも皮肉がある。この曲はマーク・ノップラーとスティングの共作だが、スティングが歌う "I want my MTV" というフレーズは MTV 開局時のキャッチフレーズで、この曲自体 MTV 批判だったりする。しかし、その曲が MTV アウォードで「ビデオ・オブ・ジ・イヤー」賞をとってしまったという第一の皮肉。そして、いまこのビデオを見ると、当時斬新と言われたコンピュータアニメーションが全然すごく見えないという第二の皮肉。

そして、第三の皮肉として、今ではこの曲のオンエア自体が論議を呼ぶこと。なぜか?

上でこの曲は MTV 批判と書いたが、曲の歌詞は家電を配達する労働者の視点から書かれている。そして、その中で faggot という単語が複数回出てくる。この単語があるため、現代イギリスでもっとも人気のあるクリスマスソングである "Fairlytale of New York" のオンエアが近年問題となる話は、北村紗衣さんの文章に詳しい。

"Fairlytale of New York" に登場する faggot は、北村さんが解説するように、この曲が書かれた当時のイギリスでは同性愛者に対する差別的な表現では必ずしもなかったのが議論をややこしくしているのだが、それより前に発表された "Money for Nothing" における faggot は、はっきり同性愛者差別的な用法だとワタシは考える。

しかし、である。ワタシ自身はそれでもこの曲は(オンエアするなら)そのままオンエアすべきと考える人間である。つまり、1980年代の労働者階級の人間が、MTV に出てくるヘアメタルのバンド(一説にはモトリー・クルーがモデルとされる)を見て、「なんだぁ、この長髪の連中は。カマ野郎かよ」と悪態をつく感じをリアルに表現しているからだ。

まぁ、自分のそういう価値観が多数派ではないのは理解していますが。

さて、続いてはピーター・ガブリエルの "Sledgehammer"。

このビデオについてはおよそ10年前に書いており、基本的な考えは変わっていないが、当時「史上最高のビデオ」と判で押したように言われたこのビデオも、さすがに同じように言う人は少ないだろう。それはこの数十年の映像技術の進歩が大きいが、それでもこのビデオの持つ不気味さは今なお新鮮さを保っている。

ここからは1990年代で、ニルヴァーナの "Smells Like Teen Spirit"。

以前何かでこのビデオの監督の話を読んだことがあり、最初チアリーダーをはじめエキストラはいかにもつまんなそうにして、後半ノッてくる感じにしたかったのだが、この曲を流すと皆が恐ろしくエキサイトしてしまい、監督はメガホンで「お前ら静かにしろ!」と叫びまくらなければならなかったという。

昨年、デイヴ・グロールがこの曲の印象的なイントロのドラムの元ネタがディスコなのを明かして話題になりましたね。

続いてはビースティ・ボーイズの "Sabotage"。

このリストでは、この曲とウィーザー"Buddy Holly" という2曲のスパイク・ジョーンズの監督作が選ばれているが、のちに Directors Label の元にまとめられる監督の作品(asin:B0000TXOHWasin:B000AC8OVK)では、ジョーンズの作品しか入ってないのはこのリストのダメところ。

そして、ワタシ的にはスパイス・ガールズの "Wannabe" は外せませんね。

冗談や皮肉ではなく、ワタシはこのビデオが今でも大好きである。

このビデオは厳密には一発撮りではないが、その範疇で優れているというのもあるし、いま見ると問題になるところを含め、デビュー当時のスパイス・ガールズの狂気をとてもよく表現しているからだ。

そして、最後は OK Go の "Here it Goes Again"。

「もっとも影響力の大きいミュージックビデオ」リストの最後が2006年で終わるのに文句がある人もいるだろうが、OK Go のこれは今見ても素晴らしいと思う。

まぁ、ワタシは今でも彼らのもっとも優れたビデオは製作費がほとんどかかっていない "A Million Ways" だと思うが、一発撮りビデオで一躍有名になってしまったため、その後のビデオ制作のハードルが上がりまくり、バンドもそれを逃げずに果敢に挑戦したのはアッパレな話だと思う。

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