平野啓一郎の原作は珍しく読んでいて、それも今は亡き cakes での公開時に読んでいる。
ウェブで連載される小説を読み通すのはワタシには難しいのだけど、『ある男』を読み通したということは、これが優れた小説だったからと言ってもよいだろう。ただ、個人的にはこの小説における在日朝鮮人差別への何人かの登場人物の向き合い方がいささか図式的すぎるように思われて、手放しに賞賛できないところも少しあった。
で、その映画化なのだけど、石川慶監督の映画を観るのは初めてである(『蜜蜂と遠雷』は少し前に BS プレミアムでの放送時に録画したが未見)。これはかなり忠実な原作の映画化であり、そして正直、映画化にあたっては省略の対象になるのかなと思っていた在日朝鮮人差別の問題もそのままで、そして意外なことに(と書くのは失礼かもしれないが)ワタシにとっては今年映画館で観た映画の中でもっとも良い作品だった。
役者では安藤サクラが予想通りぴったりだったが、やはり、本作における悪役を演じる柄本明がすごかったねぇ。刑務所での面会シーンがとてもよく撮れていたように思う。
主人公を演じる妻夫木聡がなかなか出てこないという作りも、原作を読んでいるだけに新鮮に感じられた。