イギリスの自由民主党の党首としてキャメロン政権の副首相をつとめた政治家にして、2018年に Facebook の副社長に就任し、2022年から Meta の国際問題担当社長だったニック・クレッグによると、シリコンバレーは被害者面した金持ちの男性で溢れているとのこと。
新著 How to Save the Internet の刊行に先立ってガーディアン紙のインタビューを受けているが、元上司である Meta のマーク・ザッカーバーグを称賛する一方で(得意ではない分野にも尽きることのない好奇心を持つ人物、とな)、巨万の富と権力と「自己憐憫」と絡み合うシリコンバレー文化を「このマチズモと自己憐憫という、まったくぞっとしない組み合わせを、私は当時も今も理解できない」と痛烈に批判している。
シリコンバレー人種は自分たちが幸運だとは微塵も思っておらず、むしろ不当に扱われている被害者だと考えているとクレッグは語る。「チェーンソーを振り回すイーロン・マスクから、シリコンバレーのポッドキャストにいたるまで、すべてシリコンバレーの文化なんだ。特権に慣れ親しんでいる者にとって、平等は抑圧にすら感じるんだよ」とのこと。
その彼は今年1月に Meta の職を辞し、シリコンバレーからロンドンに戻った。どこまで意識的だったかはともかく、彼の上司だったザッカーバーグをはじめ、ジェフ・ベゾスやティム・クックらテック億万長者がドナルド・トランプの就任式にはせ参じる前だった。
彼の新刊は Meta の舞台裏に迫り、シリコンバレーの閉鎖性がいかに自分たちの過ちを見えなくしてきたかを明らかにするものらしい。「シリコンバレーでは、誰もが同じ服を着て、同じ車に乗り、同じポッドキャストを聞く。それは群集心理から生まれた場所だ」と彼はシリコンバレーを評する。
Facebook~Meta でのクレッグは、シリコンバレー人種に実になじんだ夜郎自大さを発揮していたのに、何をいまさらアウトサイダーポジから『インターネットを救う方法』なんて本を書いてんだと思わなくもないが、ビッグテックの重役を務めたことのある政治家となると彼くらいしかいないわけで、その点で貴重な論考が読める本であることを期待する。
クレッグの妻が母国スペインで新しい中道政党の党首就任を検討しているらしく、クレッグ自身は英国政界に復帰する意思はないようだ。
こちらがインタビュー全文だが、クレッグはインターネット以前の時代に育ったリベラル派として、たとえ発言が不快であっても言論の自由への揺るぎない信念を保持しているのを強調している。
しかし、皮肉なことに、今表現の自由を最も声高に主張するのはリベラル派ではなく、改革党党首のナイジェル・ファラージやアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領であることにクレッグが苛立っている話は興味深い。
「トランプ政権の面々がファーストクラスに乗って欧州に飛んできては、自分たちは表現の自由の大いなる擁護者だと高説を垂れながら、帰国後は反対派を威嚇し虐げるという厚かましい偽善ほど私の胃をむかつかせるものはない」とはよく言った。できれば、Meta にいた頃に言ってほしかったが。
ネタ元は kottke.org。

