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ポール・グリーングラスが2011年のノルウェー連続テロ事件(とその後)を描く『7月22日』が10月10日にNetflixで配信開始

『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』、そして『キャプテン・フィリップス』とずっとポール・グリーングラスの映画を観てきたが、正直この人の映像作品は必ずしも好みでなかったりする。

が、町山智浩さんの紹介で彼の新作が、2011年のノルウェー連続テロ事件を題材にしたものと聞いて、これは彼向きの題材だと思ったので興味が湧いた。

Netflix 製作とのことだが、たまむすびでは町山さんは公開日を明言してなかったが、Netflix のページを観ると、10月10日配信開始とあるではないか!

なんか映画の世界も、いきなりニューアルバムをミュージシャンが自らの SNS 上のアナウンスし、ストリーミングサービスで配信開始という音楽の世界に近づいているのだろうか。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド展「The Velvet Underground Experience」が今月より開催&ニコの晩年を描く映画『Nico, 1988』

調べものをしていて、The Velvet Underground Experience のことを知ったのだが、今月10日よりニューヨークのブロードウェイでヴェルヴェット・アンダーグラウンドの回顧展があるとのこと。

調べてみたら、NME Japan に「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに」という記事が出ていた。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのウェブサイトによれば、展覧会では「6つの映像作品と350枚以上の写真、1000以上の品々、アンディ・ウォーホルによってデザインされたバナナのアートワークの世界観をVRで体験することのできる特設スペース」を楽しむことができるという。

また、展覧会の開催期間中には「コンサートや特別な催し、レクチャー、ポップアップ・インスタレーション、ファッションとのコラボレーション、芸術作品の展示、上映会、パフォーマンス、講習会」なども開催されるという。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに | NME Japan

これは見たいな……さすがに日本までは来ないだろうし。

そういえば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド関連のニュースというと、ニコの晩年を描いた Nico, 1988 という映画が作られており、批評家の評価は高いようだ。こちらは日本公開されるかなぁ。

それにしても、ニコが死んで30年になるんだな。

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Gamergateの被害者にもなったフェミニストメディア批評家が、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちを描く新刊『History Vs Women』

調べものをしていて、Anita Sarkeesian の新刊が今日発売になるのを知る。

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

Anita Sarkeesian は、フェミニストの立場からゲームに登場する女性キャラはいかにして性の対象として描かれているかを論じてきたメディア批評家で、その流れで Gamergate 事件に巻き込まれてしまう。

Gamergate については、ワタシも「邪悪なものが勝利する世界において」で少し触れているが、事件についてのもうちょっと詳しい話は、八田真行の「オルタナ右翼とゲーマーゲートの関係」を読むのがよいだろう。

その Anita Sarkeesian の新刊(共著)は、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちについて書くものとのこと。タイトルは、女性が歴史の中で過小評価されてきたことへの反抗なのだろう。

今年『世界を変えた50人の女性科学者たち』(asin:442240038X)という趣旨が近い本の邦訳が出ているが、『History Vs Women』のほうは対象は科学者に限らない。25人の中に "Japanese novelists" が入っているようだが誰だろう。樋口一葉

このエントリを書くために調べていて、Anita Sarkeesian と同じく Gamergate の被害者だった Zoe Quinn も昨年本を出しているんだね。これは完全に見逃していた。

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

「いかにして Gamergate が私の人生を(ほぼ)破壊したか、そして私たちはいかにしてオンラインヘイトとの戦いに勝利できるか」という副題がすべてを物語っている感じですね。

ジェイミー・バートレット『The People Vs Tech』の邦訳『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』が出ていた

あたたたた、ジェイミー・バートレットの『The People Vs Tech』は、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」でも取り上げており、くだんの「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」の中でも引き合いに出していたのだが、邦訳『操られる民主主義』が先月に出ていたのか。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で原書をリンクしちゃったのは痛恨である。一応調べたはずなのに。

原書が出たのが今年4月で、それから半年も経たずに翻訳が出たのはかなり早い部類ではないか。版元の草思社も、これは売れると踏んだのだろう。

「技術書典5」で販売される『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版に収録される書き下ろし技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」について

10月8日に開催される技術書オンリーイベント「技術書典5」において、達人出版会ブースにて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売すること、そしてそれに新作技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」を収録することは昨日書いた

その「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」だが、このケッタイなタイトルは、映画『裏切りのサーカス』の原作であるジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』のもじりである……って、どこがや!

なかなかタイトルが決まらず難儀し、高橋征義さんが「プラットフォーマー・政府・ネット原住民 地球最大の決戦」というタイトルを提案したのはここだけのヒミツである。

さて、今回の文章を書くきっかけとなったのは、今年の8月に某社の編集者より『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』を基にした書籍の執筆について打診されたことだったりする。

正直、ワタシはそのプランに懐疑的だったのだが、編集者とやりとりをするうちにワタシも徐々に乗り気になり、だったらこの2年間のフォローアップとなる新作文章を書かなければならないな、と実に2年ぶりに技術コラムを書く気になったのである。

昨年『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の電子書籍化の作業をしながら、そうした文章を書く気にはまったくなれなくて、書いたのはボーナストラック「グッドバイ・ルック」だけだった。

それはともかく、ワタシが久方ぶりにやる気になったのに、その直後からくだんの編集者からのメールがぱったりなくなった。まぁ、正直企画会議を通るとは思わなかったので別にいいのだけど、ダメならダメでその旨をメールで伝えるくらいしてもいいのではないか。

この編集者が属する出版社については、武士の情けで名前は特に秘すが、翔泳社である。

さて、せっかく2年ぶりに技術コラムを書く気になっていたのに、それを発表する場がなくなって困っていたところ、達人出版会高橋征義さんから声をかけていただき、「技術書典5」で販売される特別版に収録することになったという次第である。

しかし、高橋さんもこんな常軌を逸した長さの文章を送りつけられるとは思ってなかったのではないか。一年前に原稿用紙換算で150枚超の「グッドバイ・ルック」をいきなり送りつけられたときほどではないにしろ、ため息の一つでもつかせてしまったかもしれない。

それくらい長くなったのは、何よりこの2年間を埋めるためというのが一番で、とにかく書きたい話はすべて詰め込んだ結果である……のだけど、それでも書き残した話に後になって気付くのだから困ったものである。

一つは「監視資本主義(surveillance capitalism)」というタームについて入れるつもりだったのに入れ損ねた。この言葉については以前にも触れたことがあるが、この言葉の発明者であるハーバードビジネススクールの元教授 Shoshana Zuboff のこの言葉を書名にした本が出ることについて触れるべきだった。

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

もう一つは GDPR について、ニコラス・カーの「EUGDPRGoogleFacebook に縛りたいのだろうが、これに本格的に対応する人的リソースを持つ GoogleFacebook の監視資本主義の強化にしかつながらないだろうよ。残念!」という見立てを入れ込むのを忘れていた。

あと、この文章は冒頭で知的財産戦略本部の検討会議について書いているが、中間とりまとめができず延長になったのはご存知の通りだが、それより前に脱稿したので、話がその前までとなっている。またそれと関連して、中国のようなネット監視についても触れているが、Googleエリック・シュミット元 CEO が「今後は中国とそれ以外の2つのインターネットが存在するようになる」と語った話も入れきれなかった。

あと decentralized なウェブを目指す動きとして、ちょうどティム・バーナーズ=リーが手がける Solid がニュースになっているが、これも前から知っていたのに入れきれなかった。

それでもとにかく長い文章になってしまったのだけど、「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で書いたことと似たことを、ワタシと同い年の中川淳一郎さんが「ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る」で書いている(実は先月、とある追悼会で中川さんをお見かけしているが、ワタシのことなんか知らんだろうな、と弱気になってしまい声をかけられなかった)。

そうなのだ、本稿冒頭で「インターネット老人会」と述べたが、ネットを特別視すること自体がオッサン・オバサンの表れなのかもしれない。若者はもはやインターネットもリアルも同じものと捉え、水道や電気、ガスと同様の扱いをしもはやネットに夢は求めていない。

ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る (3/3) - ねとらぼ

それでは「技術書典5」にお越しの方は、どうか達人出版会ブースで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版をよろしくお願いします。

クワイエット・プレイス

ひと月以上映画館から足が離れていたのだが、とても評判の良いホラー映画と聞いて公開初日に観に行った。

ワタシはかなりビビりで、ホラー映画でよくある「ドン!」という衝撃にビクっとなりやすく、映画館で観ると恥ずかしい思いをしてしまう。本作でもそれが数か所あって、参ったよ。

ワタシは一人で郊外のシネコンで観たのだが、リア充っぽい5人くらいの男女が2、3組ぞろぞろとやってきて、彼らの話声や食べ物をがさごそやる音が気になっていた。が、最後のクライマックス時には場内が完全に無音になっており、それくらい観客を引き込む映画ということですね。

主役の夫婦は実生活でも夫婦とのことで、妻役の人はどこかで見たと思ったら、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で観ていたか。

いや、本当によくできていたと思う。例によって家族の物語なのだけど、長女の設定がうまかった。妻役がどうしようもなく絶体絶命の立場に陥るのだが、それをどう逃れられるか、伏線の組み立て方が巧みなのだ。というか、あんな能力の偏った生命体だったら、あそこまで人類滅亡近くまで追いやられることなんかない気もするが、この手の映画にそれを言っちゃいけないでしょう。

ただその妻役を窮地においやるアレが最後近くにもう一度くらい物語のフックになるかと思いきや、そうならなかったのが少し不思議だったな。

ビースティ・ボーイズの回想録が今月刊行される

ビースティ・ボーイズの生存メンバーであるアダム・ホロヴィッツ(アドロック)とマイケル・ダイアモンド(マイクD)による回顧録が今月出るんだね。

Beastie Boys Book

Beastie Boys Book

Beastie Boys Book (English Edition)

Beastie Boys Book (English Edition)

表紙の若い3人の写真にグッとくる。書籍の詳細は公式サイトを当たってくだされ(Ad-block が入ったブラウザで見ると、真っ白になるが……)。

590ページにもおよぶボリュームで、今だと Kindle 版のほうが圧倒的に安いですな。まぁ、さすがに来年あたり邦訳が出ると思うけど。

Sounds of Science

Sounds of Science

マイクロソフトがMS-DOS v1.25とv2.0のソースコードをGitHub上で公開のニュースで思い出す心温まる話

MS-DOSソースコード公開自体は2014年に実現しているが、当時はオープンソースライセンスは付与されてなかったのではないか。今回は MIT ライセンスだし、何より公開先の GitHubマイクロソフトに買収されていたりする。これは2014年にも予想できなかった未来である。

ワタシは昔「マイクロソフトは、Windows 98 SEをオープンソースとして公開すべきだ」という文章を訳しているのだが、10年後くらいに実現したりして(笑)。

MS-DOS 2.0というとワタシが真っ先に思い出すのは、かつて「暗く、苦々しく、悲しい話にこそワタシは惹かれる」で紹介した、ポール・アレンが『ぼくとビル・ゲイツマイクロソフトイデア・マンの軌跡と夢』で書いていた、MS-DOS 2.0 の開発に心血を注いでいた当時の話である。

 あれは一九八二年、一二月の終わり頃だった。ビルのオフィスの前まで来ると、ビルとスティーブが何やら熱心に話し込んでいるのが聞こえた。私は立ち止まってしばらく聞いていた。話の主旨はすぐにわかった。二人は、私のこのところの働きの悪さに対して不満を持っていて、私のマイクロソフト株の所有比率を下げようとしていたのである。彼ら自身や他の株主に追加のストックオプションを発行し、私の所有比率を下げる、という考えだ。話の様子から、その時急に思いついたわけではなく、しばらく前から考えていたことも明らかだった。
そのまま聞きつづけることもできず、私は中に飛び込んでいって叫んだ。「なんてことだ! 信じられないよ! 君たちがどういう人間なのか、よくわかったよ。もうおしまいだな」二人に向かって話してはいたが、私の目は、まっすぐビルを見ていた。まさに決定的な場面を見られた彼らは、何も言えずに黙り込むだけだ。そして、彼らに言い返す暇を与えず、私は回れ右をしてその場をあとにした。

ビル・ゲイツは、闘病中の共同創業者を労うどころか、彼の影響力を下げようとスティーブ・バルマーと密談していたのです。ポール・アレンはそれでも遠慮してか書いてませんが、ロバート・X・クリンジリーによれば、二人はアレンが死んだらどうしようというところまで話し合っていたようです。

心温まる話である。

ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト アイデア・マンの軌跡と夢

ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト アイデア・マンの軌跡と夢

過去の白人罵倒ツイートで炎上したサラ・ジョンの逆襲『ゴミのインターネット』

ひと月ほど前になるが、Verge が Sarah Jeong という人が3年前に出した『The Internet of Garbage』を再掲していて、この新版は電子書籍としても再度リリースされている。

The Internet of Garbage (English Edition)

The Internet of Garbage (English Edition)

「ゴミのインターネット」といっても、ワタシが以前取り上げた IoT 絡みの話ではない。こちらはオンラインハラスメントについての本である。

ここで種明かしをすると、著者の Sarah Jeong は韓国生まれのジャーナリストで、ニューヨークタイムズ編集委員に任命された直後、過去に行っていた白人を罵倒するツイートが掘り起こされ炎上した人である。

ニューヨークタイムズは彼女を擁護し、その地位を辞すことはなかったのだが、彼女は自分がかつて出したオンラインハラスメントを主題とする電子書籍の新版を(今回の騒動を受けて)再刊することで、逆襲に転じたというわけである。さらなるアップデートを行う予定もあるようだ。

ふーむ……過去のツイートを(文脈抜きで)掘り起こし、それを理由に職を奪われるようなことはないほうがよいとワタシも思う。少し前のジェームズ・ガンのような例があるだけに。しかし、Quinn Norton の事例を考えると、彼女が「韓国系」でなく「白人」で、侮蔑する対象が「白人」でなく例えば黒人などのマイノリティであったら、彼女は擁護されただろうか、と割り切れない気持ちにもなるのも正直なところである。

10月8日に開催される「技術書典5」にて書き下ろし技術コラムを含む『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版を販売します

一週間後の10月8日に開催される技術書オンリーイベント「技術書典5」において、達人出版会ブースにて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売する。

特別版とはどういうことかというと、現在販売中の『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』と以下の点が異なる。

  1. 今回新たに書き下ろした技術コラムの新作「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」を含む
  2. 『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のエッセンスというべき章を選別した編集版
  3. 電子版に加え、紙の書籍のセットで販売

あとまだ現行版に入っていない誤記の修正も入っているはずだが、これはいずれ現行版にも反映されるだろう。ただ、少なくとも3の「電子版に加え、紙の書籍のセットで販売」というのは、このイベントオンリーになるのではないか。

なお、2の「章を選別」というのにボリューム不足を心配する向きがあるかもしれないが、それはない。なぜかというと。今回書き下ろした新作「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」が、例によってリンクをはりまくる文章であり、リンク先となる章をすべて収録し、これもあれも付け加えていたら、8割以上の章が入ってしまったと高橋征義さんがぼやいていたからである(笑)。

さて、その「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」は、ワタシがおよそ2年ぶりに書く技術コラムの新作である。はっきりいって、常軌を逸した長さである。『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録されたどの文章よりも長い。連載時は前編後編に分けた最終回「ネットにしか居場所がないということ」よりも長い、と書けばどれくらいの分量か分かってもらえるだろうか。

なぜそんな狂った長さになったのか、どういう文章なのかといった話は、明日の更新で書かせてもらう。

そういうわけで、「技術書典5」にお越しの方は、どうか達人出版会ブースで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版を気にかけてくださるとありがたいです。このイベントや会場アクセスについては、mochikoAsTech さんの「技術書典5っていつ?どこでやるの?何時にいけばいいの?混むの?」が参考になります。

古いカセットテープの写真を公開するVintage Cassettesがすごい

ウェブで素晴らしいと思うのは、よくぞこの情報を集めてくれた! と言いたくなるサイトに行き当たったときである。

最近はそういうサイトも少なくなったなという印象なのだが、調べものをしていて知った Vintage Cassettes には驚いた。

これはカセットテープの写真をひたすらアーカイブしているウェブサイトなのだが、1963年から2010年までのおよそ半世紀(!)に及ぶ期間的な網羅性、アメリカだけでなく欧州や日本も含む地理的網羅性もすごい。

ご存知の通り、カセットテープのメーカーというと SONYTDKMaxell など日本のメーカーが強かったので、ここに掲載されている写真に見覚えがある(あるいは、未だ現物が手元にある!)人も多いはずだ。

こういうサイトにどのような価値があるのかは正直分からないのだが、単純に金銭的価値につながらないアーカイブこそ実は後で大きな価値を持つ場合があって、これもその一つかもしれない。

そういえば、ワタシが記憶するだけでも『キングスマン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、カセットテープが重要な役割を果たす映画が近年あったねぇ。

今では PC を使わずにカセットテープをデジタル化する MP3 コンバータが売ってるみたいだけど。

元Google中国支社長が「中国がAIで米国に圧勝する理由」について書いた新刊が面白そうだ

この記事でインタビューを受けている Kai-Fu Lee は、マイクロソフトGoogle の中国支社で要職を務めたとても著名な人で、スティーブン・レヴィ『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』の中国の章で名前が出てきたのを覚えている人もいるかもしれない。

その彼の新刊のテーマは AI なのだが、中国の優位性を主張していて気になる。

AIは発見から実装のフェーズに入った。新しいアルゴリズムを発見した人が有利だった時代は終わり、今重要なのは実装。多くの資金とデータを持って早く動くところが勝つ。この意味で中国は有利だ。

https://aishinbun.com/comment/20180922/1735/

その今日発売になる新刊については公式サイトができているので、詳細はそちらを見てもらうとして、China Vs. US というページがありますな。

マイクロソフト CEO のサティア・ナデラ、(先日 TIME 誌を奥さんとともに買収したのがニュースになった)Salesforce のマーク・ベニオフ、そしてアリアナ・ハフィントンといって著名人が推薦の言葉を寄せているが、当然ながらというべきか Google 関係者の名前はない。

AI Superpowers (International Edition): China, Silicon Valley, and the New World Order

AI Superpowers (International Edition): China, Silicon Valley, and the New World Order

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order (English Edition)

これは邦訳出るやろうね。

高須正和さん訳の『ハードウェアハッカー 〜新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』が来月刊行!

今年のはじめに高須正和さんの『The Hardware Hacker』翻訳を期待するという話を書いたのだが、その邦訳『ハードウェアハッカー 〜新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』が10月に刊行されるとのこと。ワオ!

ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険

ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険

書籍の詳しい内容は技術評論社のページを参照いただくとして、山形浩生の監修がしっかり入っているそうだ。

技術評論社のページに高須さんが書いているが、この本の著者は Chumby の立ち上げにも関わった人で、その昔「Chumbyの誕生」という文章を訳したワタシ的には感慨深いものがある。言われてみれば、Chumby って IoT の先駆けにして、中国でのモノづくりを成功させたハードウェアベンチャーの先駆けだったんだよね。

リーナス・トーバルズの謝罪をめぐる疑惑?

先週、大変話題になったリーナス・トーバルズの謝罪だが、個人的にはちょっとひっかかるところがあった。

というのも、今回の意思表明のきっかけとなった Linux カーネルの会議にリーナスがスケジュールを間違えて参加できなくなったら、会議自体が彼に合わせて再スケジュールされたという話が、彼の謝罪内容となんか合致してないように思えたからだ。

リーナスの意思表明の数日後に公開された記事だが、彼がこれまで主に LKML 上で行った過去の悪行(?)を取り上げ、いろんな女性開発者に取材している。単に彼の意思表明を受けての記事ではなく、リーナスのコミュニケーションスタイルのせいで、Linux カーネルの女性開発者が少ないんじゃないか、彼の姿勢が Linux カーネル開発コミュニティの女性軽視につながっているのではないか――というアングルに基づいている。

さらに言えば、これを少し前の Guido van Rossum が Pythonの仕様策定から離れるというニュースと絡め、オープンソース運動が直面している #MeToo ムーブメントと言いたいらしい。

かの New Yorker にリーナス・トーバルズ、並びに Linux カーネルコミュニティを取材する記事が載るなんて確かに驚きなのだけど、この記事を書いている Noam Cohen は、ワタシもBackChannelチームが選出した2017年最高のテック系書籍11選で紹介した『The Know-It-Alls』の著者なんですね。New Yorker のような雑誌でもテック系の記者を雇う時代なのである。

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball

リーナスが LKML で使う罵倒語について分析した論文(そんなのあるんだ!)によると、彼はジェンダーバイアスはなく男女問わず無礼とか、この記事自体興味深いので、どこか日本語に訳さないかと思う。

さて、先週末にこのブログを読み、うーん、となってしまった。これを書いている Valerie Aurora は、オープンソースコミュニティーの男女差問題に取り組む Ada Initiative の共同創始者として知られ、2013年にオライリーOpen Source Awards を受賞している人である。

彼女自身、上記の New Yorker の記事の取材を受けているのだが、彼女は Noam Cohen の記事が Linux コミュニティに少なくとも一年くらいかけて影響を及ぼすんじゃないかと思っていたら、件のリーナスの意思表明という急転直下があって驚いたとのこと。

で、彼女は、今回のリーナスの意思表明は、New Yorker の記事が出る前にリーナスの雇用主である Linux Foundation が、リーナスの Linux カーネル開発者としてのダメージを緩和すべく、またそれにともなう経済的損失を緩和すべく先手を打ったものじゃないか、と考えているようだ(明言はしてないけど)。

さて、この手の話はとてもセンシティブだし、ワタシの誤読もあるかもしれないので、ワタシの要約をうのみにせずにできれば原文にあたってほしい。

正直、こんな疑惑(?)をかけられるくらいなら、リーナスには謝罪なんてしてほしくなかった。(こういうことを書くと叩かれるかもしれないが)リーナスが誰かにセクハラしたわけじゃなし、#MeToo ムーブメントなんかと絡められるのも気に入らない。

リーナスが他人の気持ちを考えられるようになるのもそれは結構なのだけど、初期 Linux カーネル開発における最大の功労者の一人である Alan Cox にネチネチ厳しい指摘をしてブチ切れさせるぐらいの、忖度も容赦もない姿勢により担保されてきた品質があるのではないか。

【自慢】将棋アマ三段の免状を取得した【祝、羽生善治永世七冠達成】

既に他の場所で自慢しているのだが、せっかくなのでこのブログでも自慢させてもらう。

日本将棋連盟より将棋アマ三段の免状を取得した。

前回1995年にアマ二段の免状を取得したのは、その前年に米長邦雄が念願の名人位を獲得し、かつて彼を人生の師と仰いだこともあるワタシも喜んだのだが、その名人位の挑戦者に羽生善治が名乗りをあげたところで、しまった! 名人 米長邦雄の署名が入った免状を持ってなかった、と慌てて資格取得に急いだのだが、残念ながら間に合わず、「名人・竜王 羽生善治」の署名になってしまったという過去がある。

今回免状をまた取ろうと思ったのは、羽生善治竜王位を奪取したときで、正直今年を逃せば、また羽生善治の署名が入った免状を取得する機会はないかもしれないと思ったからである。その後、羽生さんが名人位の挑戦者になるという予想外の展開になり、念のためにその結果を見極めてから取得の手続きを取った次第である。

前回は「将棋世界」の認定コースを頑張ったが、今回は将棋倶楽部24の点数で申請させてもらった。実を言うと、最大瞬間風速で四段の免状を取得できる資格があるのだが、四段ともなるとそれこそ県代表クラスの実力者ということになり(だよね?)、ワタシはとてもではないがそんな実力はないわけで、三段で取得させてもらった。

というか三段でもおこがましいにほどがあるのだが、三段であっても資格取得にはケチなワタシにしてみればかなーりなお金がかかるわけで、まぁ、道楽ですね。

羽生善治の字が汚いと言ってはいけない風潮があるのかは知らんが、ワタシは羽生さんの署名が入った免状をまた取得できてひたすら嬉しい。羽生さんと同時代人であることをワタシは誇りに思う。

というわけで、名人 佐藤天彦竜王 羽生善治の署名である。日付がなぜか今日なのは深く考えないことにする。

日本将棋連盟から届いた荷物には、免状以外に結構な大きさの箱があり、なんだと思ったら、羽生善治永世七冠達成記念の時計だった。これはまったく予想しておらず、ワタシのボルテージは最高潮に達した。

時計の写真におっさんが住む殺風景な部屋が写りこんでいて非常に見苦しくて申し訳ない。

さて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』についても、もう少しすると告知したいことがあるのだが、それとは別にワタシが文庫本解説を書いた河口俊彦大山康晴の晩節』もよろしくお願いします。

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