先週はオライリーの Emerging Technology Conference についてのエントリをいくつも読んだ。日本からもブログ界隈の人たちが結構参加していたためであるが、今年の Etech は Attention Economy がキーワードだったようで、目先の利く翻訳者なら今週末↓の翻訳の企画書を書き上げたところかもしれませんな。
案の定 Steve Gillmor が Attention 2.0 なんて書いている(余談ながら、"Oh really? No, O'Reilly" には不覚にも笑ってしまった)。
ちょっと調べてみると、この本の著者たちの近刊もなかなか面白そうなタイトルになっているのでその辺も翻訳者には狙い目かもしれないが、それはさておき、今週末機会があって『デジタル音楽の行方』を読み直したのだが、正直かなり面白いと思った(笑)。また土曜日お目にかかった津田大介さんも「あの本、解説がすごく良いんだよね」と語っておりました(笑)。
『デジタル音楽の行方』を読み直して思ったのは、当たり前といえばそうだけど、Etech で語られるような動きにちゃんと呼応していること。例えば、第四章を中心にこの本では「露出と認知」がないと話は始まらんと繰り返され、そのための様々なデジタル時代の方策が説かれている。これなどまさに Attention Economy、つまり興味の奪い合い=時間と金の奪い合いである。
露出なくしてアーティストの新曲が聞かれることはないし、また新しいファンに認知してもらえないとアーティストのキャリアは行き詰ってしまう。しかし、従来の露出や認知してもらうための手法がデジタルハイウェイにうまく乗れば、以前より千倍も高速、巨大、かつ競争力を持つことになる。(86ページ)
川崎裕一さんの ETech まとめ に last.fm の協調フィルタリングの事例が出てくる。
音楽のレコメンデーション、プレイリストの共有、協調フィルタリング、そしてエージェントスキームの重要性はどれほど強調してもしすぎることはない。(231ページ)
ただ『デジタル音楽の行方』が書かれた2004年の時点では協調フィルタリング技術はかなり有望なのは間違いないけど成功例は意外に少ないという感じだったが、last.fm は分水嶺を最初に越える例になるのかも。
音楽のレコメンデーションは協調フィルタリングのような技術だけでなく、人間同士のレコメンデーションや共有も重要で、先日も「音楽ファンが熱中するコミュニティ事例」と紹介されていた MySpace はその代表例だろう。
MySpace は特にティーンに人気のある音楽方面に特に強い SNS で、これなど『デジタル音楽の行方』の第6章「デジタルキッズと変化する市場」の現実化に思える。
日本の音楽サービスでこの手の SNS の成功はまだない。最近始まったソニーの PLAYLOG については、ソニーのここ数年の盛り下がる印象があるためなめてかかっていたのだが、ブログ機能の作りこみもしっかりしているし、最初から iTunes に対応していたりとなかなか出来が良い。最初にどの程度ユーザを獲得できるかでしょうかね。
追記:知り合ってから三年以上当方のサイト名を間違って覚えていた担当編集者より、『Attention Economy』は昨年『アテンション!』という邦訳が出ているという情報をいただいた。ありがとうございます。