当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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ウィキペディアの「社名の由来一覧」ページが今更ながら面白い

kottke.org

WikipediaList of company name etymologies、要は「社名の由来一覧」ページが面白いという話である。

はてなブックマークを見ると英語版でも15年前にぶくまされているので、知る人はとっくに知っている話のようだが、ワタシは初めて知った。まさに暇つぶしに眺めるのにちょうど良い。

kottke.org が取り上げている例に「セブンイレブン」があり、これは日本人ならだいたい想像つくのだけど(いや、生まれたときからコンビニの24時間営業が当たり前だった世代にはそうでもないのかな)、「ハーゲンダッツ」には実は何の意味がないという話は、ワタシも少し前に Twitter で読んだ覚えがあるな。

あと Mozilla について、「Netscape Navigator の前にあったウェブブラウザの名前から。Netscape の共同創業者のマーク・アンドリーセンがその Mosaic ブラウザにとってかわるブラウザを作ったとき、最初ジェイミー・ザウィンスキーによって MozillaMosaic キラー、ゴジラ)と内輪で名付けられた」とあるが、これこそお若い方にしてみれば、Mosaic は言うまでもなく、Netscape もなんだそれ、という感じなのかもしれない。

この Mozilla命名の場面をジェイミー・ザウィンスキーの文章から引用させてもらう。

一週間かそこら前に、みんなで集まってクライアントの名前を考え出そうとした。Mosaic は会社の名前だから、これは使えない。 マーケティングのアホどもは、サイバーなんとかだのパワーなんたらだのうんちゃらウェアだの、くだらん提案ばっかりしやがる。そこでだれかが NCSA Mosaic をつぶすという話をして、ぼくが「もじら!」と口走った。みんなそれが気に入ったみたいで、だからこれがブラウザの正式名になっちゃうかも。

nscp dorm-j

時は1994年8月5日のことである。

ワタシのブログの NetscapeMozilla 関係のエントリでは、以下も参考まで。

yamdas.hatenablog.com

yamdas.hatenablog.com

『Wikipedia @ 20』の第21章「ウィキペディアにはバイアスの問題がある」も訳してみた

Technical Knockoutウィキペディアにはバイアスの問題があるを追加。Jackie Koerner の文章の日本語訳です。

yamdas.hatenablog.com

先月の第10章に続き、Wikipedia @ 20 の第21章を訳してみた。

翻訳の目的は、前回書いた通り、これを読んだ Wikipedia に精通した人が Wikipedia @ 20 の翻訳プロジェクトを立ち上げてくれないかという期待があってのことである。

前回の「ロールプレイングゲームとしてのウィキペディア、もしくは一部の大学人がウィキペディアを好きではない理由」「ウィキペディア20年イベントに参加してみました」によると、北村紗衣さんが取り上げてくださったみたい。ありがとうございます)のテーマである「アカデミズムでウィキペディアが軽んじられる問題」が、今回の文章にも含まれているのは興味深い。

さて、今回の文章の主張にワタシはすべて賛成というわけではないことは明記しておく(著者も「多くの点で読者の考えと異なるものだったかもしれない」と書いている通り)。が、ウィキペディアに限らずインターネットコミュニティ全般に関して重要なトピックを扱った文章なのは間違いないと思うのだ。

今回訳した文章の著者について書いておくと、Wikipedia @ 20 の共同編者なのだけど、彼女のサイトの Projects のページを見ても、その仕事を一言で表現するのは難しい。アナリスト?

「バイアスはウィキペディアの問題」のところなど、いわゆる三人称単数の they を使っていると解釈して訳したが、そのあたりを含め訳のおかしいところに気づいたらご指摘ください。

せっかくなので Wikipedia 関係のニュースをいくつか取り上げておく。

nlab.itmedia.co.jp

コミュニティの行動規範(Code of Conduct)を制定したのも、今回訳した文章で力説される問題と関係しているはずである。

wikimediafoundation.org

5年ほどウィキメディア財団の CEO を務め、Wikipedia @ 20 にも第22章(最終章)Capstone: Making History, Building the Future Together を寄稿している Katherine Maher が4月に退任する模様。お疲れ様です。

『Wikipedia @ 20』の第10章「ロールプレイングゲームとしてのウィキペディア、もしくは一部の大学人がウィキペディアを好きではない理由」を訳してみた

Technical Knockoutロールプレイングゲームとしてのウィキペディア、もしくは一部の大学人がウィキペディアを好きではない理由を追加。Dariusz Jemielniak の文章の日本語訳です。

yamdas.hatenablog.com

昨年末に紹介した Wikipedia @ 20 だが、せっかく CC BY 4.0 で公開されているので、試しにその第10章を翻訳してみた次第である。

翻訳というもの自体けっこう久しぶりにやったためか、思ったよりも時間がかかってしまった(もう「翻訳者」とは名乗れないか)。誤記誤訳など気づいた方はメールやコメントなりでお知らせください。

wikimediafoundation.org

meta.wikimedia.org

今日この翻訳を公開したのは、まさに今日、2021年1月15日がウィキペディア誕生20周年だからというのもあるが、それだけではない。ワタシが知らないだけで既に話が進んでいるのならいいのだけど、そうでなければこれを機に Wikipedia @ 20 の翻訳プロジェクトをどなたか立ち上げてくれないかという期待もあってのことである。

あいにくワタシにはそうしたプロジェクトを主導する馬力がもう残っていないが、せっかく自由に翻訳を公開できるライセンスなのだから、できればウィキペディアに精通した方が立ち上がってくれないかと思った次第である。そこでこの訳文を好きに使ってくれてかまわない。

そうそう、前回のエントリを書いたときは気づかなかったが、「ネットにしか居場所がないということ(前編後編)」で取り上げたジェイク・オロウィッツ(Jake Orlowitz)も寄稿してるんだね。

さて、少し今回翻訳した文章の周辺情報を書いておく。原著者は Dariusz JemielniakWikipedia)で、彼はポーランドのコズミンスキー大学の教授である。彼は2014年に Common Knowledge?: An Ethnography of WikipediaWikipedia)というウィキペディアをテーマとする本を出している。今回訳した文章を読めば分かることだが、大学人とウィキペディアコミュニティをつなぐ存在と言ってよいだろう。

そして、昨年は The MIT Press Essential Knowledge シリーズの一冊として、Collaborative Society を共著している。この本については公式サイトができているので、詳しい情報はそちらをあたっていただきたい。

さて、なぜ訳文をこのブログではなく、完全 HTML1.0 な本家サイトで公開するのか? 小関悠さんの檄文「2021年だから人類はHTMLを手打ちしろ」に感化されたからである……というのは嘘で、ワタシの過去の仕事など知らない読者も多いだろうから書いておくと、こういう翻訳はすべて本家サイトで公開してきたから、それだけなんです。言っておくけど、完全手書き HTML だぞ。Twitter カードまで手書きだぞ(マジ)。

もうすぐ20歳の誕生日を迎えるウィキペディアとそれを祝う(?)書籍の刊行

yamdas.hatenablog.com

この文章でワタシは、「ウィキペディアは来年の1月15日に20歳の誕生日を迎える」「Wikipedia は非営利では今や世界最大のウェブサイトであり、20年はキリが良いので、来年のはじめにはなんらかのイベントがあるんだろうな」と書いたが、その露払いになりそうな Wikipedia @ 20 という本が MIT Press から出ているのを知った。

Wikipedia @ 20: Stories of an Incomplete Revolution

Wikipedia @ 20: Stories of an Incomplete Revolution

  • 発売日: 2020/10/13
  • メディア: ペーパーバック

「未完の革命の物語」と題されたこの本は、20名あまりの寄稿者がそれぞれにとってのウィキペディアのストーリーを語るものだが、編者を務める(寄稿者でもある)ジョセフ・リーグルは Good Faith Collaboration: The Culture of Wikipedia日本語訳)の著者なので信頼できる。

wikipedia20.pubpub.org

というか書籍の公式サイトにおいて CC BY 4.0 のライセンスのもとで全文公開されているのか。

なお、ワタシは GFC 以降もジョセフ・リーグルの仕事を追ってきたのだが、彼も10年ぶりにウィキペディアに戻ってきた感じか。

wirelesswire.jp

yamdas.hatenablog.com

この本の制作はウィキメディア財団も後援したようで、ウィキペディアの共同創始者であるジミー・ウェールズも「ウィキペディアの20年を扱ったこの優れた洞察のコレクションには、ウィキペディアの貢献者が骨を折って手に入れた英知、学者の奇抜な省察、そしてこれからの20年を方向付けるのに必要なことを含んでいる」と推薦の言葉を寄せている。

さすがにこの本には「ネットにしか居場所がないということ(前編)(後編)」のような文章は含まれていないんだろうな……。

OpenStreetMapは企業からの編集参加が増えており伸びしろがありそう

joemorrison.medium.com

誰でも自由に利用できる世界地図を作るプロジェクトである OpenStreetMap についてはこのブログでも何度も取り上げている。例えば、昨年 OpenStreetMap が2018年のフリーソフトウェア財団の FSF Awards を受賞したことを取り上げたが、派手なニュースが続くわけでもなし、正直プロジェクトは停滞してないかと思うところがあった。

こうやってプロジェクトの現状を紹介する文章はありがたい。プロジェクトの登録ユーザ数はずっと着実に伸びているし、企業による利用も進んでいる。名前が挙がるのは FacebookAppleAmazon、そしてマイクロソフト――要はいわゆる GAFAM マイナス Google というわけだが、これらの企業は財政的な援助だけでなく、地理データ編集者としての協力も大きなものになっている。

これは Linux が企業内で利用されるにつれて、業務でその開発を行う開発者が増えていった話との類似を感じる。

Jennings Anderson の講演 Curious Cases of Corporations in OpenStreetMap によると、Apple による編集の伸びがすごい(続いて KaartAmazon か)。

そのように企業による編集が増えると OpenStreetMap コミュニティにおいて文化衝突も起こっているようだが、そのあたりもオープンソースにおける企業開発者の過去の事例での知見が活かせるのではないか。この文章では、結論として OpenStreetMap で起こっていることはコモンズの悲劇の反対で、参加者がそれぞれの私利を追求しても、資源を消耗することなくウィンウィンの関係になっているとまとめているが、そうあってほしいですね。

www.vice.com

こちらは Google Maps がいかにお行儀が悪く、ユーザのプライバシーを尊重しないキモいアプリかという話で、具体的にはユーザの検索履歴を要求する、それを拒むユーザには機能を制限するなど、不必要にユーザの情報を握ろうとする点が指摘されている。

オンライン地図分野で主導権を握る Google の横暴を止めるには、OpenStreetMap がそれなりに現実的な代替の選択肢でないといけない。

そう簡単に Google Maps の牙城を崩せるものではないが、少なくとも OpenStreetMap プロジェクトがある程度の財政的、人的リソースの余裕があると分かったのは良かった。

日本で OpenStreetMap に興味を持った人は、例えば、先月開催された State of the Map Japan 2020 のサイトで公開されている動画を見てみてはいかがだろうか。

ワタシの知った人では三浦広志さんが OSM Wiki の紹介をしているが、マッピングだけでなく翻訳でもプロジェクトに貢献できるわけだ。

ネタ元は Slashdot

もっともパワフルで拡張性のあるオープンソースWikiソフトウェアを謳うWiki.js

wiki.js.org

Hacker NewsFour short links で話題になっているので Wiki.js を知り、すわ Wiki の新星か! と思ったら、ワタシが知らないだけで2017年には公開されていたんだね(逆に言うと、なんで今頃海外で話題になったんだろう?)。

Node.js 製で、以前は MongoDB がある環境が求められていたようだが、今公式サイトを見ると Install anywhere をうたっており、ざっと日本語で書かれたウェブページを見ると、Docker 環境で Markdown 記法のファイルをまとめるのに使われているのが多いみたい。

インストールも最初にプラットフォームを選択すると、それごとの導入手順がかっちり書かれたページに飛ぶしかけで、このあたり今どきなんでしょうね。そのデモ兼ドキュメントサイトが充実している。

しかし、およそ半年前に Outline を紹介したときも思ったが、Wiki ソフトウェアが単独で話題になるのは今どき珍しい。

ライセンスはGNUアフェロ一般公衆ライセンス(v3)とな。

Wikiは先週ひっそりと25歳の誕生日を迎えていた

調べものをしていて、自分のブログの10年以上前のエントリに行き当たったのだが、なんだ今年の3月25日は Wiki の25歳の誕生日だったのかと驚いた。

これは Wired の10年前の記事である。やはりそのように認定している。

しかし、Wiki の誕生日、しかも25年前という区切りが良いにも関わらず、まったく話題になっていない。ワタシが調べた範囲では MAG THE WEEKLY で取り上げられているくらい。

それも不思議ではない。コラボレーションツールとしての Wiki は開発環境やコミュニケーション環境に取り込まれ、もはやその一機能として、Wiki 自体にスポットライトが当たることは少ない。『Wiki Way コラボレーションツールWiki』が初めての訳書であるワタシ的には寂しさも感じるが、それは個人の感傷に過ぎない。

ところで、「Wikipediaをwikiって略すな」と言われたのも今や昔? 一般に「Wiki」といったら Wikipedia であることを認めざるをえないのだが、そのウィキペディアは来年の1月15日に20歳の誕生日を迎える。

Wikipedia は非営利では今や世界最大のウェブサイトであり、20年はキリが良いので、来年のはじめにはなんらかのイベントがあるんだろうな。

チームのナレッジベース向けのWikiの新星Outline

Four short links で、「成長するチーム向けの最速の Wiki にしてナレッジベース。美しく、機能豊富で、Markdown 互換にしてオープンソース」を謳う Outline のことを知った。

公開されたのは2018年秋のようで、まだ若いソフトウェアと言える。高速な動作が売りだが、Markdown のサポート、Slack への対応、そしてサポートがメーリングリストでなく Spectrum なのがいまどきなのだろうか。BSD ライセンスで GitHub で公開されている。

今どき、Wiki ソフトウェアが単独で紹介されるのは珍しいし、何より『Wiki Way コラボレーションツールWiki』が初めての訳書である(今年で刊行から18年になるのか!)ワタシ的にはこの新星にやはり注目してしまうね。

FBIに逮捕されたイーサリアム開発者ってWikiScannerの開発者だったのか!

土曜日に Ethereum Foundation の人間が逮捕されたというニュースを知り、なんかやたらと北朝鮮接触していたという話で、物好きもいるもんだと思っただけだったが、この手の話はこの記事の執筆者でもある星暁雄さんのツイッターを追うのが良い。

それより今回逮捕された Virgil Griffith って、WikiScanner の作者だったんだな!

ワタシがこの WikiScanner のことを連載で紹介したのが2007年9月なのだから、12年以上前(!)になる。Virgil Griffith は、これで気鋭のハッカーとして一躍有名になったわけだが、まさか FBI に逮捕されるとは。

続報が出ているが、逮捕の経緯について現時点では分かってないことも多いから決めつけはいけない。星暁雄さんの記事にもあるように、アメリカ政府は暗号技術を広める活動に厳しい態度を取ってきた歴史があることを忘れてはいけなくて、その発表だけを一面的にうのみにするのは危険である。

本文執筆時点で Ethereum Foundation Blog に本件についての情報はない。『マスタリング・イーサリアム』邦訳の刊行について少し前に書いたばかりだが、イーサリアムの名前にヘンなイメージがつかないとよいのだが。

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

ウィキペディアの共同創始者ジミー・ウェールズがFacebook対抗の広告のないSNSを立ち上げ

Wikipedia の共同創始者ジミー・ウェールズが、WT:Social というソーシャルネットワークサービスを立ち上げている。

今さら SNS を始めるからには、既存のサービスと違いがあるはずで、それはやはりビジネスモデルになる。Facebook などと違い、広告モデルに依存しない、というか広告自体を入れない方針を謳っている。しかし、広告なしでどうやって運営できるのか? Wikipedia と同じく寄付に頼るとのこと。

記事を読むと、これはジミー・ウェールズが一昨年フェイクニュース打倒を目指して立ち上げたクラウドファンディングのニュースサイト WikiTribune のスピンオフといえるプロジェクトのようだ。

Wikipedia の現在の成功にジミー・ウェールズという人が果たした役割はもちろんとても大きなものがあると思うが、その後は Google に対抗する検索エンジンをぶちあげたが失敗に終わるなど失敗も少なくない。ソーシャルネットワークというと10年以上前には Wikia でそちら方面に色気を見せたこともあり、ニュース分野と合わせてずっと進出したい分野だったのかもしれない。

サイトは先月から始まっているようで、既におよそ5万ユーザを集め、入会待ちが2万8人いるらしいが、当然ながら既存のビッグプレイヤーの足元にも及ばない。果たして本当にまともな競争相手になれるかというと難しいだろう。

ワタシが知る限り日本語圏で唯一このニュースを報じている Financial Times の記事の邦訳に、「当然、私が望んでいるのは5万人でも50万人でもなく、5000万人、5億人だ」というウェールズの強気な発言が引用されているが、前述の Wikipedia 後のお世辞にも成功していないプロジェクトを見ると、本当かねと思ってしまう。

ネタ元は Slashdot

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

OpenStreetMapが2018年のフリーソフトウェア財団のFSF Awardsを受賞

フリーソフトウェア財団が選出する FSF Free Software Awards(の Social benefit award 部門)を、オープンライセンスの下で自由に利用可能な世界地図を目指す OpenStreetMap が受賞したとのこと。

リチャード・ストールマン尊師も、プロジェクト名が「Free」でなく「Open」なのにちょっとケチつけながらも称えている。

地図データが重要なのは、何十年も自明なことだった。だからこそ、我々には自由な地図データの集合が必要だ。OpenStreetMap という名前はあまり明確には伝えていないが、その地図データは自由だ。それこそが自由な世界が必要とする自由な代替物なのだ。

このプレスリリースに添えられた写真を見て印象なのが、ストールマンの両脇の受賞者が、OpenStreetMap の代表者である Kate Chapman も、同じく(Advancement of Free Software award 部門の)受賞者である Deborah Nicholson も共に女性なんですね。

FLOSS 界隈における女性参加者の少なさというのは昔からずっと言われてきたことだが、こういうのを見ても前進しているのは確かなのだろう。

しかしなぁ、ワタシが「OpenStreetMapへの期待と課題」という文章を書いてちょうど十年になるが、少し前のゼンリンとの契約解除にともなう Google マップの劣化などに直面すると、自由な代替物の存在は重要だと思うのである。

ネタ元は LWN.net

OpenStreetMapはオープンソースコミュニティの最優先事項であるべきか

ソースコードの反逆―Linux開発の軌跡とオープンソース革命』(asin:4756141005)の著者……と言っても今は通じないかもしれないが、グリン・ムーディが OpenStreetMap についての文章を書いている。

Google Maps があるのになんで OpenStreetMap が必要なのかというのは以前から定期的に話題になるが、この文章はオープンソースコミュニティにフォーカスする形で、その重要性を説いている。

つまりは、オープンソースにはオープンな地理データセットであり、この分野を Google に依存するのは危険というわけだ。

OpenStreetMap2014年に開始10周年を迎えており、ということは来年15周年になる。ワタシが「OpenStreetMapへの期待と課題」という文章を書いたのが10年近く前というのに自分自身そんな経つんだと驚いてしまうが、それだけ息長く続いているプロジェクトではあるが、残念ながら Google Maps と互角に渡り合うとは言えない状況のままである。ワタシも過去寄付などしているが、このプロジェクトの意義というか重要性を心に留めるべきなのだろう。

そういえば昨年『ブレードランナー 2049』のエンドロールにOpenStreetMapの名前があった話を紹介したが、そのような利用例もこれから増えるのかな。

ネタ元は Slashdot

Wikiが使われるべきところで使われている事例を見ると逆に新鮮だったりする

旧聞に属するが、物理 攻略 Wiki に取材した記事である。

Wiki に関する本の翻訳が最初に世に出た仕事であるワタシ的には、昨年末に取り上げた早稲田大学百年史もそうだが、このような相互参照のあるスタック型情報のサイトで Wiki が普通に使ってあると、逆に新鮮な感じがするし、嬉しかったりする。こういう事例が地道に続いてくれるといいな。

そしてここでも利用されているのは PukiWiki で、やはりかつてよりはゆっくりであっても、開発が継続する意味はあると思うわけだ。

Wiki Way―コラボレーションツールWiki

Wiki Way―コラボレーションツールWiki

いつの間にか容量が減っている商品wikiが面白い

suchi さんの Twitter 経由で知ったのがいつの間にか容量が減っている商品wikiである。

この手の話題は以前他でも見た覚えがあるが、この小売りされる商品の価格は変わらないまま内容量が収縮していく経済現象を「シュリンクフレーション(shrinkflation)」と言うんですね。知らなかった。

この手の情報集積に Wiki は最適だし、そのようにちゃんと Wiki が正攻法に利用される事例を逆に見なかった印象があるので、ちょっと新鮮に思う。

しかし、いろいろ実例があるんやね。個人的にはルマンドがショックだった。ルマンドに裏切られたら、我々は何を信じて生きればよいのだろう。

Wiki版『早稲田大学百年史』の公開とPukiWikiの最新版

『早稲田大学百年史』がデジタル化され、しかも Wiki システムを利用して公開されるというのは、個人的にはグッとくるニュースだったのだが、そんなに話題になってないようで残念である。

サイト自体はあまり Wiki っぽくないのだけど(この「Wikiっぽさ」とは何かというのも突き詰めると面白いのかもしれないが、ここでは触れない)、確かに PukiWiki 1.5.1 とクレジットがある。

これでワタシも知ったのだが、PukiWiki は2016年に PHP7 に対応したバージョン1.5.1を公開してたんだね。

PukiWiki というと、2013年に5年以上正式リリースがない件を取り上げたが、その後 PHP の新しいバージョンに対応したバージョンアップがなされているようだ。

PukiWiki を書名に冠した本が二冊も出た2006年当時のような熱がもはやないのは仕方ないとして、単独で Wiki サイトを立ち上げる選択肢として残ってほしいという気持ちはある。

PukiWiki入門 まとめサイトをつくろう!

PukiWiki入門 まとめサイトをつくろう!

オープンソース徹底活用PukiWikiによるWebコラボレーション入門

オープンソース徹底活用PukiWikiによるWebコラボレーション入門

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