夏休み、ふと自分のはてなアンテナの下のほうに埋もれたサイトに久しぶりにアクセスしたりする。
例えば、「aiaiときどきブログ」。これをブログと言ってよいのか疑問だが、ともかくこの人の文章が好きだったので、半年以上更新が途絶えているのは残念である。
このブログで(現時点で)最後に書かれたのが以下の文章である。
調べてみたら、ここで予告されていた通り、バーバラ・エーレンライクの新刊の邦訳がとっくに出ていたのね。
- 作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/04/10
- メディア: ハードカバー
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邦題にはアメリカと名指しされているが、「ポジティブシンキング」という病はアメリカに限った話ではない。
エーレンライクはもう一つ、重大な指摘をしている。ポジティブシンキングは必ずしもアメリカ的な考え方ではない。世界で最も独裁的な国家で利用されてきたものだ。旧ソ連および東欧では、いまの北朝鮮と同様に、芸術作品、本、映画が十分「前向き」であるよう検閲をかけられた。年末から年始にかけて、レニ・リーフェンシュタールによるナチスのプロパガンダ映画『意思の勝利』が日本でも公開されていたが、そこに映し出されていた、燎原の火のごとく勢いを伸ばしつつあった時期のナチスの「前向きさ」といったら身震いするほどであった。ヒトラーは「私を信じない者は、愚か者か大嘘つきである」と演説で叫んでいた。若者たちに向かって「柔軟かつ忠実であれ」と説いていた。要するに、何も考えないで号令にあわせて前進あるのみ、ということである。先の戦争中の日本においても戦況が劣勢であるなど、悪い情報から遮断され、国民は「必ず日本は勝つ」と信じこまされ、否定的な見方をする者は非国民とされた。それほど昔のことではない。
雑誌『プレジデント』の公式サイト
第二次世界大戦から先の経済危機まで「ポジティブシンキング」という病が重要な役割を果たしてしまった、と考えることもできるのか。