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太陽が世界のエネルギーを賄うときが来たが、それに背を向けるアメリカ

wired.jp

このブログで太陽光発電の価格が過去10年で9割近く下落している話を取り上げたのがおよそ5年前だが、ついに太陽光発電が世界のエネルギーを賄うときが来たとのこと。

しかし、それに背を向ける国がある。米国だ。

paulkrugman.substack.com

ポール・クルーグマンが、トランプ大統領再生可能エネルギーに対する憎悪とバイデン前大領領の政策への復讐心が、エネルギー政策で中国が米国を追い抜くことを許したと論じている。

そういえば、ワタシも「今こそ「弁護士国家」米国は「エンジニア国家」中国に学ぶべきなのか?」において、「中国がエネルギー技術で飛躍的に先行すれば、世界各国は米国よりも中国の勢力圏に引き込まれる可能性が高い」というヘンリー・ファレルの見解を紹介していた。

クルーグマンは、科学と専門知識への敵意が常にアメリカの伝統の一部であったこと、そして、反科学主義が宗教右派に広く浸透しており、MAGA の重要な要素を形成していることを指摘する。

過去数十年間、人文主義と科学的探究の勢力が反科学主義に打ち勝ってきたが、これはアメリカの科学が国家安全保障と国家の繁栄に不可欠であるという認識が優勢だったからである。しかし、科学超大国としてのアメリカは終焉を迎えようとしている

クルーグマンの結論は極めて悲観的である。

アメリカは世界の覇権をめぐる中国との競争に負けつつあるということなのだろうか? いや、その競争は実質的に終わってしまったと私は考えている。たとえトランプと妨害工作員が2028年に権力を失ったとしても、私が見る限り、それまでにアメリカは大きく後れを取っており、追いつくのはほぼ不可能だろう。

ちょうど少し前に Pluralistic で『ディープエコノミー 生命を育む経済へ』(asin:4862760295)や『自然の終焉: 環境破壊の現在と近未来』(asin:4309250505)などの邦訳がある環境保護活動家のビル・マッキベンの新刊 Here Comes the Sun の書評を読んだが、これも近年の太陽光発電の目覚ましい進歩について書かれた本のようだ。

太陽光発電に必要な材料費がかかりすぎて割に合わないという従来の通説はもはや通用しないことを説いており、太陽と風力によるエネルギーは今や地球上で最も安価な電力となり、歴史上どのエネルギー源よりも急速に成長しているとのことだが、風力もそう言っていいんかねぇ?

それはともかく、マッキベンの主張通り、太陽光発電が気候変動危機から地球を救う道であり、世界をより健全で人道的な基盤の上に再編成する基盤となるなら、上記の通り、アメリカの現政権はそれに背を向けているわけだ。

そして、日本も再生可能エネルギーを巡る状況は明るくない。ソール・グリフィス『すべてを電化せよ!』について書いたときも触れたが、メガソーラーにしろ風力発電にしろ自然破壊やら汚職やらネガティブな話題として取りざたされることが多く、イメージがよくないのがなんとも。

www.technologyreview.jp

そうそう、ビル・ゲイツも MIT Tech Review にこの問題に関連する寄稿をしてたね。

しかし私は、これを悲観的になるべき理由だとは考えていない。むしろ、楽観的になれる理由だと考えている。なぜなら、人間は物事を発明するのがとても得意だからだ。実際、人類はすでに排出量削減に寄与する多くのツールを生み出してきた。エネルギー関連のブレークスルーにより、このわずか10年間で、2040年の世界の排出量の予測は40%も下方修正された。つまり、人類が持つイノベーション能力のおかげで、たとえ他に何も変わらなかったとしても、2040年までに排出量を大幅に削減する道を順調に歩んでいるのである。

MIT Tech Review: ビル・ゲイツ特別寄稿: それでも気候変動対策に私が投資し続ける理由

ビル・ゲイツの自伝(第一弾)について昨年末に取り上げているが、今年の末に邦訳が出る

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