また映画館に行くのに二月ほど空いてしまった。まだ安心できる状態にはほど遠いが、本作はワタシの周りで評判が良かったので観たかった。一日一回の上映になってようやく観れたが、観客は(一つ空けとはいえ)かなり埋まっていた。
ライアン・レイノルズの製作、主演作で、『デッドプール』シリーズで彼に対する信用が高まっていたので期待値が上がっていた。
ゲームの NPC(字幕では「モブキャラ」)が主役になったらという映画で、前半は『パーム・スプリングス』を連想するが、ゲーム世界の映画化という意味で、やはり『レディ・プレイヤー1』が一番の比較対象になるだろう。あれはあれでワタシも楽しんだけど、ゲーム世界の描写がミームを過去のみに準拠する現役感のない、映像ももっさりした中年オタク接待映画な『レディ・プレイヤー1』より本作のほうが優れていると思う。
個人的に本作で一番良かったのは、キーズを演じるジョー・キーリーで、彼が想いを伝える場面で自分でもまったく思いもよらず泣き出してしまい(しかし、その時点で相手に伝わっていないのにあとで驚いてしまうのだけど)、あとは後述するある場面を除いてだいたいずっと泣いてた。
ジョー・キーリーを知ったのはご多分に漏れず『ストレンジャー・シングス 未知の世界』だが、以前書いたようにこれのシーズン3が、彼が演じるスティーブのシーズンだと断言したくなるほど彼が良かった。その記憶が、彼に対する好感に間違いなく影響している。
『ストレンジャー・シングス』のキャストも、フィン・ヴォルフハルトが『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』二部作、ミリー・ボビー・ブラウンが『エノーラ・ホームズの事件簿』など映画にも進出しているが、ジョー・キーリーも本作のような優れた作品で活躍できてよかった、よかった。
最新のゲームについての知識が疎いワタシでも、ゲームのヴィジュアル、オーディオがもはや映画だろというところまできていることは知っている。しかも、本作でも揶揄されるように違法なことでもやりたい放題で楽しめる自由度もある。本作におけるオンラインゲームのルックは最新という感じではないが、ゲームの NPC が映画の主人公になるところまできた。
果たして映画にゲームにないものはあるのか? 本作は、主人公を固唾をのんで見守るしかないことでその答えを一つ出しているのかもしれない。
このように観てよかった作品だけど、終盤の本来ならドッと盛り上がるガジェット登場の小ネタの場面で、あー、マーベルもスターウォーズもディズニーのものなんですね、とそこだけ急に冷静になってしまった。