ここでも何度も取り上げている『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のミュージカル化『スパマロット』が映画化とのことである。
トニー賞で3部門受賞したのが2005年なのだから、エリック・アイドルは15年以上これで稼いでいることになるのか。
このように映画→ミュージカル→ミュージカル映画のコースを辿ったコンテンツは今回が初めてではない。ワタシがパッと思いつくだけでも以下の前例がある。
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ
「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンが、初期の傑作『血のバケツ』(asin:B000S5IDVU)のセットを流用して2日間で撮影したという、いかにもこの人らしい逸話が知られるが、歯医者で麻酔なしでの治療を頼むマゾの患者を怪演するジャック・ニコルソンをはじめ、登場人物が変人だらけという奇抜な作品である。
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公開当時はヒットしなかったが、次第にカルト的な人気を得るようになり、1982年にオフ・ブロードウェイでミュージカル化されて当たり、近年までリバイバル上演されている。
1986年にリック・モラニス主演で、オリジナルのおよそ1000倍もの予算をかけてミュージカルが映画化されたが、こちらは期待したほどの大ヒットとはならなかった。
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プロデューサーズ
メル・ブルックス監督・脚本によるオリジナルが公開されたのが1968年で、メル・ブルックスはこれでアカデミー脚本賞を受賞している。
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これが2001年にメル・ブルックス自身の作詞作曲でミュージカル化されて見事大当たりし、トニー賞12部門も受賞した。
そして、ミュージカル版から主役二人が続投し、2005年にミュージカル映画版が作られている。
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ヘアスプレー
「悪趣味の帝王」ジョン・ウォーターズ監督・脚本によるオリジナルが公開されたのが1988年で、これは彼がメジャーで製作した初めての映画だった。
批評家受けはよかったものの大ヒットにはならなかったが、やはりカルトクラシックとなり、2002年にミュージカル化され、2003年のトニー賞を8部門受賞するなど大ヒットとなった。
その勢いを受けて2007年に製作されたのがミュージカル映画版『ヘアスプレー』で、オリジナルで怪優ディヴァインが演じたエドナ・ターンブラッド役をジョン・トラボルタが特殊メイクで演じたのが話題になったし、メジャーヒットもした。
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8 1/2
オリジナルは言わずと知れたフェデリコ・フェリーニの代表作である。主人公を演じるマルチェロ・マストロヤンニの「人生は祭りだ。ともに生きよう」という台詞、そしてそこからの思いもよらないエンディングは有名ですね。
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これが1982年に『Nine』としてブロードウェイミュージカル化され(トニー賞5部門受賞)、それが『シカゴ』のロブ・マーシャルが監督、アンソニー・ミンゲラも脚本をてがけ(作業中に死去)、豪華キャストで映画化されたのが『NINE』である。
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『8 1/2』のミュージカル映画化というと、ボブ・フォッシー『オール・ザット・ジャズ』(asin:B07JD54JS3)を連想する人もいるだろうし、他にもウディ・アレンの『スターダスト・メモリー』(asin:B0012P6C9U)など様々な作品のインスピレーションとなった名作『8 1/2』の通俗的な翻案はあまり評判が良くなかったが(それでもアカデミー賞に4部門のノミネート)、ワタシは結構楽しんでみた。というか笑った。
他にもこのパターンにあたる作品をご存知の方がいたら教えてください。
コロナ禍での映画製作はタイヘンに違いないが、『スパマロット』映画版も成功してほしいところである。
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[2021年1月17日追記]:なかむらかずやさんから他にもこのパターンがあるのを教えていただいた!
フェリーニ監督『カリビアの夜』(1957年)→ミュージカル『スィート・チャリティー』(1966年)→ボブ・フォッシー監督『スィート・チャリティー』(1969年)も近いパターン。https://t.co/uMTzjzISpb
— 🅲🅰🆃🅰🅿🆄🅻🆃 🆂🆄🅿🅻🅴🆇 (@catapultsuplex) January 17, 2021
なるほど、1957年公開のフェデリコ・フェリーニの『カビリアの夜』(アカデミー賞外国語賞を受賞し、主演のジュリエッタ・マシーナがカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞)が1966年にニール・サイモン脚本、ボブ・フォッシー監督でミュージカル化されたのが『スウィート・チャリティ』で(トニー賞を1966年に1部門受賞、1986年のリバイバル上演時に4部門受賞)、それをボブ・フォッシーが1969年にミュージカル映画化したのが『スイート・チャリティー』というわけですな(ボブ・フォッシーにとって、これが初監督作)。
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