このとき「デヴィッド・グレーバーの遺作」と書いたのに、調べものをしていて、Pirate Enlightenment, or the Real Libertalia という本が来年のはじめに出るのを知る。
「The final posthumous work」とあるので、この本が今度こそ最後の遺作になるはずである。
最初、これまで書籍に収録されていない短い文章をかきあつめた本じゃないかと思ったのだが、グレーバーは大学院時代にマダガスカルで民族誌的な現地調査を行い、それを基に博士論文を執筆している。彼の人類学者としてのキャリア初期の仕事の書籍化ということかな?
内容的には彼が遭遇したの海賊の子孫の混血からなる民族であるザナ・マラタ族を研究したものらしいが、「海賊」という存在が長年フィクションでファンタジー化してきた理由である、その自治やオルタナティブな社会形成は、いかにもアナーキストとしてのグレーバーが興味を持ちそうに思える。
なお、書名にある「リバタリア」だけど、てっきりリバタリアンの誤記かと思いきや、『海賊史』に登場する海賊のユートピアの名前なんですね。
海賊についての本というと、一年近く前にここでも取り上げたスティーブン・ジョンソンの『世界を変えた「海賊」の物語』があるが、こちらは「グローバル資本主義の誕生」の話である。
ページ数は200ページちょっとで短いので、『The Dawn of Everything』よりもこちらの邦訳が出るほうがもしかすると先かもしれない。