id:deadman2 でまだ取り上げられていないようなので書くが、訃報記事では「アリダ・バリ」という表記になっているところが多いな。
失礼にもまだ生きていたの? とか思ったりしたが、何しろ『第三の男』は半世紀以上前の映画で、監督や主要キャストの多くはそれこそ数十年前に鬼籍に入っているわけで。
アリダ・ヴァリというと『第三の男』のヒロインとして語られることが多いが、はっきりいって『第三の男』での彼女の演技は傑出したものではない。ルキノ・ヴィスコンティの『夏の嵐』も訃報記事で引き合いに出されているが、個人的にはベルナルド・ベルトルッチの『暗殺のオペラ』を推したい。ヴィットリオ・ストラーロのカメラは、『第三の男』のヒロインの二十年後を見事に映し出している。しかし、この映画 DVD 化されていないな!
『第三の男』に話を戻すと、ワタシはこの映画が死ぬほど好きで、古い映画だと敬遠している人にこそ観てほしいと思う。この映画と同じくオーソン・ウェルズとジョセフ・コットンの共演が見られる『市民ケーン』(asin:B0000635SD)がそうであるように、映画という芸術形態の頂点の一つに位置すると思う。アリダ・ヴァリが『第三の男』で語られるのは、並木道のラストシーンがあまりにも見事だったからだ。ロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』のラストシーンはそのオマージュでしたね、chic さん。
あとこの映画に関して言えばアントン・カラスのチターによる音楽が素晴らしく、その成立にまつわるドラマとその後のカラスの栄光と苦闘については、軍司貞則の『滅びのチター師』(asin:4167571021)というノンフィクションの快書もある。
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