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『ゆれる』、『ディア・ドクター』と快作を連続している西川美和の新作である。
本作はこれまでと異なり女性が主人公で、あまり良い評判は聞かなかったのだけど、いや、良かったじゃないの。彼女の映画は徐々にランニングタイムが長くなっているが、本作はさすがに詰め込みすぎだが、本当にぐっとくるところがいくつもあったし、そういう画が観たいから金出して映画館に行ってるわけで。
夫婦で営む居酒屋を火事で無くしてしまい、その後不貞がバレたのも重なり、妻が夫を使って(結婚)詐欺に手を染める話だが、話自体はリアリティが薄いのに、上に書いたようなぐっとくる画や特に女性たちのぐっと引き込まれる台詞がそれを補っている。
正直夫役が阿部サダヲと聞いて嫌な予感がしたのだが少し抑え気味の演技でよかったし、松たか子が期待通りの怖さだった。『告白』よりも女の怖さを表現していたように思う。この映画を観た人は、もうヤマザキのパンのCMを前と同じ目で見れないだろう(笑)
しかし、エンドロールを観るまで田中麗奈が出てるのに不覚にもワタシは気付かなかった。彼女の「結婚もできないような人間だと思われてることにくたびれているだけです」という台詞には聞いててうっと叫びそうになった。
終わってみれば、すごくもやもやとさせるものを感じさせるが、罰を受けた主人公にも何かしらの救いがあるという意味で、やはり本作は紛れもなく西川美和の映画だった。