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まさか『40歳の童貞男』スティーヴ・カレルアカデミー賞主演男優賞にノミネートされる日が来るとは。彼とマーク・ラファロは、言われないと彼らだと分からなかったな。

実際に起きた殺人事件を題材として……って最近のハリウッド映画は、娯楽大作は続編ものかリメイクやリブートばかり、一方でオスカーを狙うような映画は実在の人物や事件を素材としたものばかりでうんざりさせられる。

と書くと本作が面白くないようだがそんなことはなくて、昨今のハリウッド映画としてはすごく静かな作品で、その静かさの中で不穏な空気が増幅されていくところがよく描かれていたように思う。何か起こりそうで起こらない前半、そして何でそこでそうなるのよという破局まで緊張感があった。

本作の監督であるベネット・ミラーの作品では『カポーティ』に近い感触だろうか。

生まれながらの富豪で友達がおらず、母親からの押しつけでないレスリングという心から愛する対象に貢献し、偉大な存在になりたいと願うジョン・デュポンと、オリンピックで金メダルをとりながら不遇で、また子供の頃から親代わりだった兄の影響から脱したいマーク・シュルツが出会い、最初はうまく行ってたのに、その兄のデイヴ・シュルツを巻き込みながら破綻に向かうわけだが、やはり不可解な破局には違いない。

そのあたりすべて説明できているわけではないし、説明できるものでもないのだろうが、劇中一度だけ言及されるデュポンの妻について特に描写がなかったのはどうしたものか。あと、この映画を見るとソウル五輪のすぐ後に事件が起こったように見えるが、実際には何年も後の話なのね。

かつてテレビを見ながら小バカにしていた格闘技に参加するまで身を落としたマーク・シュルツと、彼にかけられる USA! コールの禍々しさが印象的だった。

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