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映画『Straight Outta Compton』全米大ヒット記念! N.W.A.の過激インタビュー再録

西海岸ヒップホップ、ギャングスタラップを代表する伝説的グループ N.W.A. の伝記映画『Straight Outta Compton』全米大ヒットとのことで、元メンバーのドクター・ドレーの新譜『Compton』も当然のようにヒットとなり、エミネムが加わった N.W.A. の再結成ツアーの噂も出るなど(こちらは実現しないようだが)、N.W.A. にまつわる話題がことかかない(参考:町山智浩 映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を語る)。

しかし、この映画は現在のところ日本公開は未定とのことで日本での劇場公開を求める署名活動も行われているが、やはり N.W.A. 自体の知名度が低いことが一番大きい。韓国での劇場公開が決まったらしいが、あそこは西海岸ヒップホップ(ウェッサイ)が人気だから当たる余地があるのだろう。

このグループがどのくらいヤバかったか理解していただくには彼らの当時の言葉を紹介するのが近道だろうということで、1989年から2004年まで読者だった雑誌 rockin' on から記事を発掘する「ロック問はず語り」を久しぶりにやりたいと思う。rockin' on 1992年3月号に掲載されたインタビューを取り上げる(ロキノンに彼らのインタビューが掲載されたのは、これが最初で最後のはず。なお、インタビュー中の注釈やメンバーの表記は原文通り)。このインタビューはラストアルバムとなり全米1位を獲得した『Niggaz4Life』発表を受けたもの。

以下、職場や学校で読むには極めて不適切な表現が頻出するので、そういうのが嫌いな人は以下を読まないことをお勧めします。

インタビューで印象的なのは、とにかく誰だろうがボロクソにけなしまくっているところ。ドレーはMCハマー(!)のことを「あいつのことは俺、えらい死ぬほど尊敬してる。レコード一千万枚売ったんだからよ」と後のビジネスマンとしての片鱗を見せるが、イージー・Eがすごい。

●ところで、イージーなどはこの間、共和党の主催したブッシュ大統領を囲む昼食会にも出席したりしたけど、あれはパブリシティのためにやったことなの?
イージー「あったりめーだろ、そんなの。全くガタガタ騒ぎやがってよ。皆バカじゃねぇの。特にパーなのはあのパーだよ、スパイク・リー。俺が途端に体制に迎合し始めたとか言い出しちゃってよ。まーったく、何言ってんだ。俺はあの昼食会のために二千五百ドル払って、一万ドル分のパブリシティに成功したんだよ!(以下略)」

『ドゥ・ザ・ライト・シング』で一躍脚光を浴びた気鋭の黒人映画監督も遠慮なくパー呼ばわりである。というか、父ブッシュ大統領は、イージー・Eを昼食会に呼んだのかよ!

●また、"ファック・ザ・ポリス" のニュー・バージョンではロドニー・キング(ロサンジェルスの警察官に集団リンチされた事件の被害者。道路脇でいわれなき暴力を受けているところをたまたまビデオで撮影され、ニュース番組で放映された。被害者キングが黒人であったことから警察による明白な差別行為であると大問題となった)を呼んで一緒にレコーディングしたという話を聞いています。
イージー「(笑)でもよ、ロドニー・キングってあいつ、あの事件のせいで完全いかれぽんちになっちまってんだぜ。今じゃあおかまとしか付き合わないんだ、あいつ、自分の身に起きたことについてなんか何もわかっちゃいねぇんだからよ! 自分のケツの穴と地面の穴との区別さえつきゃあしねぇ!(笑)」

かのロサンゼルス暴動のきっかけとなったロドニー・キングについても容赦なくいかれぽんち呼ばわりである。

インタビューは、彼らの目標の話になるが、「金儲け」「億万長者」と極めて明快である。インタビュアーがちょっと離れたとこにいたイエラに声をかけたところ――

●イエラの目標は何?
イエラ「俺? そうだな、メンフィスに家買って、銀行に貯金して、それとまんこだ!」
●それだけ?
イエラ「まさかだろ、それと力だよ」
●じゃあ、力は何をもたらすと思う?
イエラ「まんこだよ(笑)! 金とまんこ! 金とまんこ以外はどうでもいいこった」

いやー、迷いがないですな! とどまることない彼らの毒舌は、かつての仲間にも向けられる。

●……それじゃあ映画『ボーイズ・ン・ザ・フッド』(元NWAのメンバーでパブリック・エナミーチャックDと並ぶ理論家ラッパーと言われるアイスキューブが出演している)についてはどう思った?
イージー「ああ、ありゃあくせーぜ。まるで月曜の放課後のお説教って内容だ。ただ、言葉づかいだけ悪いっていう。ありゃあ映画売りたいためにアイスキューブの名前も使っているようなもんだよ。内容的にはあいつが主人公ってわけじゃないし」
ドレイ「大体、あのくそバカ野郎は見かけだけだ」
レン「アイスキューブには俺のちんこを吸わせてやりたいところだぜ」
イージー「俺はなかなか頑張ってんじゃないかと思うけどな。あいつはあいつのもんやってるからな」
レン「それでもやっぱりちんこを吸わせたいところだぜ」

この頃は、いろいろあってアイス・キューブと元メンバーの関係も最悪だったのだろう。そのあたりについては映画『Straight Outta Compton』を観れば分かるはずだ。

その後インタビューは、その過激さで論議を呼んだ彼らのリリックの話題になるのだが――

●いや、だから、単純にあなたたちのラップって実体験をベースにしてるのかなって、そう思っただけの話ですけど。
イージー「かなりのところだな。全部俺だけのってわけじゃねぇけど。知らんね」
●じゃあ、女ぶっ殺すとかああいう歌はどういう体験からきてるんですか。
イージー「そういうもんは腐るほど見てっからさ。俺なんか何人も売女が切り刻まれるところ見てんだぜ。眼ん玉くりぬいてよ、足切り離すのよ」
●……そんなことしたことあります?
イージー「ある、なんて口が曲がっても言うもんかよ。でも、やってみたいとは思うな」
●マジ?
イージー「おう。話の種にいいじゃねぇか。誰かとっ掴まえて、バラバラにして挽肉にしちまうのよ」

ちょっとこれは……。それから実際の犯罪歴の話になってもイージー・Eはまったくひるまない。

●じゃあ、人を撃ったことはある?
イージー「あったりめーだろ。人を撃つなんて何でもねーよ。空気銃で鳥を撃つのと同じだよ。後ろめたさなんて少しも感じないぜ。良心なんてねぇんだよ」
●ふかしじゃなくて?
イージー「ふかしじゃねぇよ」

この後、しつこくお前ヤるのかと問われて、レンとイエラがいきり立ち、現場に緊張感が走るのだが、ワタシがインタビュアーだったら小便ちびったかも。

そういえば、「ドクター・ドレーに暴力を受けた女性記者、「謝罪の理由は関係ない。大切なのは謝罪をしたこと」と語る」というニュースがあったが、この一件についても聞かれている。当時ドレーはどう答えていたか。

●ディー・バーンズでしたっけ? 訴訟まで起こされたとかいう(あるパーティでドレイから暴行を受けたとしてディー・バーンズというテレビ・タレントが訴訟を起こしている)」
ドレイ「そんなことねーよ」
イージー「訴訟起こされるくらいなら、あの女早いうちにぶっ殺しちまえばいいんだよ。よっぽど安く上がるってもんだ(笑)」
●どんなことをしたんですか。
ドレイ「なんもしてねぇって」
イージー「ふかしぶっこいてんじゃねぇってんだ。おめぇ、あの女のこと嬲り殺しにしてただろうが」
ドレイ「酔った勢いでだよぉ」
イージー「俺は全部見たんだからなぁ。あの女ときたらよ、これっぽっちしか髪の毛がないのに、こいつったらその毛を掴んで振り回してんだぜ。で、トイレのドアに女を叩きつけてんだ。バコーン! って。女は激しく頭うちつけてるっていうのに、その上に、こいつその女の上に乗っかって踏みつけにしてんだぜ。俺はもう信じられなくて『やめろ、やめろ』って感じで、女の方も(かん高い声で)『やめてぇーっ! やめてぇーっ』って感じなのに、こいつときたら全然とまりゃしねぇ(笑)。おまけに階段の上から突き落としてんだからよ。ドカドカドカドカドカドカって落ちてって。その頃にはあの女、もうてめぇの名前さえ思い出せなくなっちゃってて、ロドニー・キングよりいかれちまったって始末だぜ(笑)」
ドレイ「俺は何もしてねーんだからな。こいつらがやったんだ。俺は何もしてねーぜ」

これはひどい……それにしても仲間をかばうどころか、その悪事を嬉々として喋るイージー・E最高だな。

それにしても(イージー・Eの言葉の通りなら)女性にとんでもない狼藉をはたらいたドクター・ドレーが今ではアップルに30億ドルで会社を売却した実業家だなんて最高にロックである。

●ところで、先日ある女の人と知り合いになったんですけど――
イージー「で、そいつとおまんこしたか?」
●……いや、でも――
イージー「じゃあその話はやめろ(笑)」
●……とにかく、その女の人は先生だっていうんですけど、自分の小学校の生徒に読み書きを教えるのにNWAのようなものを使わないとだめだというんですよ。どんな子も「ファックってどういう綴り?」とか「売女って何?」っていう調子らしいんです。
イージー「そいつはいい目のつけどころだな。だからABCなんかはラップで教えてやった方がいいんだよ。そうすりゃガキどもの覚えも早くなるってもんだ。ガキってもんはなぁ、そういうろくでもないことならすぐに覚えるもんなんだ。だから、ガキどもにあんな無理してアフリカについてうんたらかんたら教え込もうとしてどうなるってんだよ? アフリカについて学びてぇガキなんざいやぁしねぇってんだ」

これリアルタイムに読んでて、「じゃあその話はやめろ(笑)」のところで声を出して笑った覚えがある。しかしなぁ、1992年当時のアメリカのガキどもって本当にこのインタビュアーが言うような感じだったのだろうか。当時小学生として、今では30以上だな……。

インタビューの最後もなかなか奮っている。

●でも、あなたたち自身は、あなたたちを見上げる子供たちに対して何か責任とか、そういうものを感じたりしないの?
ドレイ「俺たちの責任っていうのは、レコード作って、金儲けて、食うことだけ」
●メッセージとか、そういうことについては考えたりしない?
ドレイ「してたまるかよ」
イージー「(グラスを上げて)世界中にファーック!!」

世界中にファーック!!

映画『Straight Outta Compton』は、かつて袂を分かったアイス・キューブドクター・ドレーがプロデューサーに名前を連ねており、アイス・キューブ役はなんと彼の息子が演じているとな。予告編の前のアイス・キューブとドレーがコンプトンを車で流す映像はちょっとグッとくるね。


Straight Outta Compton

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EFIL4ZAGGIN

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Compton

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