ヨアキム・トリアーの名前は、前作『わたしは最悪。』が評判になったので知ったが、しかし、『わたしは最悪。』はタイミングが合わずに観れなかった。本作も事前の評価が高いので、期待して公開初日のレイトショーに観に行った。
高名な映画監督である父親と、彼に捨てられたという意識がある娘たちとの葛藤が描かれる作品で、その父親の15年ぶりの新作映画の撮影がどうなるかが映画の本筋になる。つまり、本作は家族についての映画であり、映画についての映画である。映画についての映画は点が甘くなる傾向にあるのだけど、本作はそうした感動作から慎重に距離を置いているところがポイントだと思う。
映画監督を演じるステラン・スカルスガルドが、自然と出てしまう身勝手さ、仕事相手をも見切る冷酷さ、そして独特のチャーミングさを見事に表現している。
そして、特筆すべきは娘姉妹、父親から新作の主役を打診されて拒絶する俳優のノーラ演じるレナーテ・レインスヴェも、家庭を持つ母であるアグネスを演じるインガ・イブスドッテル・リッレオースも、いずれもとても魅力的に撮られている。この二人と娘たちと父の間の葛藤や愛憎だけでなく、姉妹の助け合いが描かれているところが良かった。
あ、これがラストシーンだと気づいてからは、その後に描かれる父娘の微妙な距離と表情まで息を詰めて見つめるしかないラストシーンは好ましかったが、全体として人間的な破綻に至らないウェルメイド作品に留まってるといえるかも。
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