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Pythonの生みの親が問いかける「今でも『悪いほうが良い』と言えるのか?」

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先月開催された今年の Python Language Summitライトニングトークに、Python の生みの親であるグイド・ヴァンロッサムが登場し、「悪いほうが良い(Worse is better)」原則は今でも通用するのか、と問いかけている。

プログラミング言語Python の開発初期、主要プラットフォームだった UNIX の「悪いほうが良い」哲学には大きな影響を受け、長年この考え方がとても有用だったとグイド・ヴァンロッサムは認める。

この考え方のおかげで3か月で何かを動作させることができたと彼は言うが、その後、年月を経て、自分が手抜きしたすべてが最終的には修正されたとも認める。「当時はテストすらなかった」と言って、彼は笑いを取る。

「あの当時、『悪い方が良い』は、言語を受け入れてもらう鍵でした。ユーザからのフィードバックや、私を称賛してくれる人たちからもらうエンドルフィンなしに、言語設計に3年取り組む余裕はありませんでした」

Python の初期リリースは、開発を始めて一年未満で実現したが、クラスを除いて問題は何ら修正されなかった。もっともそのクラスもインターンによって追加されたのだが。

Python が完璧でなかったことが、多くの人々が貢献を始めるきっかけになったのです。コードはどれもシンプルで、最適化は何ら考慮されていませんでした」「これら初期の貢献者は、言語で利益を享受したのです。Python は彼らの子供のような存在でした」

その上で、『悪い方が良い』という考え方に今でも役目はあるのだろうかと彼は問いかける。今では Python には巨大なコミュニティがあり、開発体制も初期とはまったく異なる。

グイド・ヴァンロッサムは、機能の完成度に目をつむってコミュニティに試してもらうものを提供できた昔を懐かしんでいるようだが、昔に戻すこともできないのは承知している。

彼は最後に、Python で Rust を利用するためのバインディングを提供する PyO3 についての講演を引き合いに出し、これの開発には『悪い方が良い』原則が見られると評価している。PyO3 の開発は CPython よりずっと楽しそうだと言い、「とは言え、私は個人的に Rust を学ぶつもりはない……けど、後で試してみるべきかもな」と言って会場を笑わせたそうな。

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