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AIを生産性向上ではなく賃金抑制のためのツールと考えてみると

www.bloodinthemachine.com

ブライアン・マーチャントが Why We Fear AI の共著者である Hagen Blix にインタビューしているのだが、これがすごく面白いので紹介しておきたい。

彼が指摘するのは、「AIが人間の労働を全て自動化する」という AI 企業の奇妙な約束である。そんなわけないのに、どうして AI 企業はそれを売り込むのか? それが経営者層の受けが良いからだ。

これはワタシも「生成されたAIビジネス、OpenAIと「AGIというナラティブ」」「「AIファースト」と「人間ファースト」は両立しうるか?」などで取り上げたテーマだが、Hagen Blix は以下のように語る。

そして、我々は明確に理解するわけだけど、これは第一に生産性の問題じゃないんだ。一部はそうかもしれない、多分ね。多くの研究が、生産性の向上は起こらないと言っている。でもね、我々が今も目にしているのは、AI が仕事を奪うというより、人々の仕事がどんどんクソみたくなってきているということ、だろ?

例えば、翻訳者。翻訳者がいなくなったわけじゃない。我々はクソみたいな翻訳を生み出す機械を作ったんだ。使い物にならないほどクソじゃないけど、翻訳者が求める水準には達していない。今ではそれが安く作れるようになり、翻訳者はこういうものと競争しなきゃならなくなった。その結果、AI 翻訳を修正する翻訳者なんて、今やギグワーカーに近い存在だ。だって彼らもこれと競争しなくちゃならないんだから。クソみたいなヤツの供給量が膨大すぎて、全体の価格も賃金も押し下げるんだ。

AI を生産性を向上するツールではなく、賃金を抑制するツールととらえれば、実際には生産性は向上していないという研究を並べて、AI ブームが終わると期待するのは時期尚早だと分かるだろう。

これを読むと、このエントリの「AI は賃金への上からの攻撃だ」というタイトルの意味が分かりますね。

つまり、一部の(と一応書いておくが)経営者層が求めるのは、生産性の向上ではなくて、人間の賃金の抑制であり、AI は何よりそのための道具ということ。これからがその本番ですよ。

その後も、「あらゆるもののプロレタリア化、それが目的だ」とか「メタクソ化による階級闘争」といった面白ワードが飛び交う楽しいものになっている。Hagen Blix らの本も邦訳出ないかな。

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