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はてなは「絶対すべきでないこと」をやらかしたのか?:後記

はてなは「絶対すべきでないこと」をやらかしたのか?は、本サイトに5年近くぶりに公開する技術コラムだったのでそれなりに気合いを入れて書いた文章だったが、まさか自分が過去書いたり訳したどの文章も超えるはてなブックマークを1日足らずで集めたのには驚いた。「最近のはてなの体たらくへの失望感に名前を付けたい」というだけの文章という誉め言葉をいただいたのはともかく(皮肉でなく、本当にそれだけだったら素晴らしいと思うので)、サッカーのフロントにあてはめた文章まで出るとは思わなかった。情報を加える後記を少し書かせてもらう次第である。

まずその前に、はてなブログについてチーフエンジニア兼ディレクターの大西康裕さん(id:onishi)が行ったプレゼン資料「新はてなダイアリーの裏側」が公開されていることを id:laiso さんにブックマークコメントで教えていただいた。はてなブログについて論じる上で、こうした公開情報にリンクしないのは片手落ちだった。

当方が文章で紹介した、「プログラムをスクラッチから書き直すことに決める」ことは絶対やってはいけないという Joel Spolsky の論については、柏野雄太さんが書くように「思いっきり状況に依存してる」のかもしれない。つまりはケースバイケースということですね。少し前に読んだ『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』にも、創業者が Java で書いた検索エンジンのコードを Python で丸ごと書き直す話が出てきたっけ。

それではスクラッチから書きなおして成功するところと失敗するところの違いは何か? それを考える上で、とても重要な証言といえるのが、ライブドアの次世代ブログサービス(になるはずだった)nowa の話である()。自分の文章を書いたときはこの存在を知っていたら絶対援用していたはずだ。それくらい相似を感じるのだが、これもいわゆるひとつのシンクロニシティなのだろうか。

開発者なら誰しも一度は「あー、もう全部捨てて一から作り直したい!」と叫んだ経験があるだろう。その選択が正しいことも勿論あるのだが、多くの場合、それは期待しているほどの「銀の弾丸」ではない。作り直すうちに、結局過去と同じような道を辿り、過去と似たような問題が発生し、時間とコストだけかかってだいたい元と同じ程度にしがらみを抱えたコードが完成する。そしてその間は、外から見るとただの停滞期間だ。重要なのはしがらみを捨て去ることではない。そのしがらみをいかに受け止められるかだ。

nabokov7; rehash : ライブドアという会社の話をしよう - Q12. 次世代ブログサービス(になるはずだった) nowaの撤退をどうみた?(下)

書き直しの成功例は、飽くまで既存サービスの内部的置き換えに徹している場合が多いのではないか。つまり、Joel Spolsky が原文で書く、注意深いリファクタリングによるアーキテクチャの再構築に近いもので、高速化などいろいろ目的はあるにしろユーザに見える外部仕様が(既存サービスに寄り添う形で)はっきりしている。

対して失敗例は、既存サービスと平行して公開され、しかし、その完全な置き換えにならず既存サービスとの距離感がユーザに理解されず求心力を持てない場合が代表としてありそうだ。「およそたいていのことは、技術で実現できる。でもユーザを集めてくることは、技術だけでは無理だ」という指摘はとても重い。

以下、個人的に気になった Twitter 上の主な反応をピックアップさせてもらう。

藤川真一さんは「エンジニアの病気」という表現を使っているが、結城浩さん(id:hyuki)が書くはじめからやり直したい症候群に近いと思われる。

はてなブックマークフルスクラッチで書き直し、また同じくフルスクラッチの書き直しの成功例と言われるクックパッドid:heimin さんによるとはてなブログより約5000倍直感的に操作できる)に転職した舘野祐一さん(id:secondlife)のとても貴重な証言。

なお、はてな前 CTO の伊藤直也さんも、一から書き直すべきかどうかは結論なんて出ないという趣旨のツイートをされていたが、既に削除済でここには引用できない。

奥一穂さんのツイートは正直ちょっとよく分からなかった。

これは田中ばびえさん(id:babie)の早合点で、見放すも何もワタシは今もはてなダイアリーの有料ユーザであり、現に今もこうしてはてなダイアリーに書いている。

正直なところ、少し前からずっと気分が落ち込んでいるため、新しくブログを立てて「はてなダイアリー止めました!」とか宣言する元気がないし、またそうするだけの張り合いが今の自分には持てないのだ。

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