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ドゥ・ザ・ライト・シング

スパイク・リーの名前を一躍世界に知らしめた作品だが、今までちゃんとは観たことがなかった。

うだるような暑さの夏のブルックリンを舞台に、イタリア系の家族がやってるピザ屋が黒人の暴動により破壊されてしまうまでの話である。

今観てもアーネスト・ディッカーソンのカメラワークはシャープだし、パブリック・エナミーのラップはかっこいい。それと比べると映画全体は稚拙なのかもしれないが、ただ画と音がかっこいい映画じゃない。

日本人のワタシから見ると、登場する黒人らのほとんど誰も共感できないところが面白い。イタリア系の家族がやってるピザ屋に黒人の偉人の肖像を要求するのはクレーマーにしか思えないし、ピザ屋であの音量でラジカセ鳴らされたらワタシでもバットで叩き割りたくなるだろう。「市長」と呼ばれる老人は現実にはほとんど何の年の功も発揮できない。

そして、最終的に暴動の口火を切るのは、よりにもよってピザ屋の店員で、店の一家と客の黒人たちの間に入り、中立的な立場だったスパイク・リー自身が演じるムーキーだったりする。この主人公にしても、常にブルックリン・ドジャースの42の背番号のユニフォームを着ているが(今年『42』で映画化されたジャッキー・ロビンソンですね)、ワタシからみれば家族をまともに養おうとしない無責任男に見える。

ワタシの見方が特に意地悪ということはないだろう。そうした共感しにくいキャラクターを配しながら、スパイク・リーは黒人の文化をつきつけ、挑発するわけですね。これが俺たちの文化で、俺たちはこういう人間だ。俺たちはこうして生きている。こういう俺たちでも簡単に警官に殺されてよいのか、と。

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