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1990年の初来日時にキース・リチャーズが語ったエリック・クラプトン、ストーンズの代表曲の実際の作者、そして"Start Me Up"製作秘話

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旧聞に属するが、ローリング・ストーンズが1989年にアトランティック・シティで行ったライブを収録した『Steel Wheels Live – Atlantic City, New Jersey』がリリースされた。

このときのツアーを収録したライブ盤は過去にも出ており、特筆すべき内容ではないのだが、このアトランティック・シティでのライブには、トレーラー映像にも出てくるようにエリック・クラプトンが客演しており、昔キースがこのときのことをインタビューで語っていたな……と思い出したので、1989年から15年くらい読者だった rockin' on をひっぱりだす「ロック問はず語り」を久しぶりにやろうと思う。

ただし、今回引用するのは rockin' on ではなく、雑誌 CUT の1990年5月号のキース・リチャーズのロングインタビューで、要は東京ドームで10回公演を行ったストーンズの1990年初来日時のものだ。インタビュアーは渋谷陽一

このインタビューでエリック・クラプトンのことが語られるのは、1969年に初期のバンドリーダーだったブライアン・ジョーンズの脱退後、ミック・テイラーが加入したときのことを振り返るくだり。

それと同時にやっぱりミック・テイラーは当時の若手っていうか、売りだし中の連中の中じゃ一番腕が立つ奴だったからね、それがデカかった。既にある程度、名が通っちゃったような連中は避けたかったんだよな。エリック(・クラプトン)なんか『何で僕じゃないわけ? 何で?』ってゴネてさ、実際、未だにあいつ、ゴネてるんだけど(笑)。この間もアトランティック・シティで一緒に共演して、『昔の仲間付き合いに戻ってみてどんな気分だい?』って訊いてみたら、『言っとくけどなぁ、僕はね、いつだってここにいたかった』なんて言うんだ。だから『そりゃあ、悪かったなぁ』って言ってやった(笑)。でもよ、あいつが有名になり過ぎたんだから、しょうがなかったんだよな。

ジェフ・ベックもそうだけど、やはりクラプトンはサイドマンで満足する人ではなくて、ストーンズに加入していてもうまくはいかなかったろう。クラプトンもそれは自分で承知してただろうが、思わず言いたくなったんだろう。

さて、このインタビューでは、ストーンズの代表曲は「ジャガー&リチャーズ」のどちらが実際に書いたのかという質問に、キースは「こりゃ楽な質問になったな(笑)」とこのときツアーのセットリストで答えているので一覧表にしてみる。

曲名 作者 YouTube
Start Me Up キースのリフにミックの歌詞 YouTube
Bitch 音楽的には半々で歌詞は殆どミック YouTube
Sad Sad Sad ミック YouTube
Undercover of the Night ミック YouTube
Tumbling Dice 基本的にキース YouTube
Miss You ミック YouTube
Ruby Tuesday 丸ごとキース YouTube
Play with Fire 二人の共作 YouTube
Dead Flowers ミック YouTube
Rock and a Hard Place 基本的なアイデアはミック YouTube
One Hit (To the Body) キース YouTube
Mixed Emotions キースが殆ど作ってミックが歌詞を埋め込んでいった YouTube
Honky Tonk Women 基本的にはキースだが二人で結構手を入れた YouTube
Midnight Rambler 基本的にキースの曲にミックの歌詞 YouTube
You Can't Always Get What You Want 同上 YouTube
Can't Be Seen キース YouTube
Happy 基本的にキース YouTube
Paint It Black キースが冗談のつもりで作った曲にミックの歌詞 YouTube
2000 Light Years from Home 二人の共作 YouTube
Sympathy for the Devil そもそもはミックの曲だが今の形になるまでに半々に YouTube
Gimme Shelter キース YouTube
It's Only Rock 'n Roll (But I Like It) ミック YouTube
Brown Sugar 実はミック YouTube
(I Can't Get No) Satisfaction キース YouTube
Jumpin' Jack Flash キース YouTube

飽くまでキースの証言であることに注意いただきたい。YouTube のリンクは、ほぼ全曲ローリング・ストーンズの公式チャンネルにある動画から選んだ……って、おいおい、"Satisfaction" は、かつてキースが「相手の頭をぶん殴るには、やっぱりギブソンよりフェンダーなんだよな。完璧だぜ、あれは。テレキャスターのカーブほど首筋にピッタシはまるもんはないって」とインタビューでノリノリで語っていた、ステージに乱入した客をキースがギターでぶん殴る映像やんか(笑)。

さて、この回答の中で、1981年の全米ナンバーワンのヒットになった代表曲 "Start Me Up" について語っている話がちょっと面白いので紹介したい。

これはそもそもレゲエ・トラックだったんだよね。テイクを何と50回、レゲエ・バージョンで録ったんだ。でも、何をどうやってもつまんねぇんだ。で、その内、皆が御存知のロックンロール・バージョンを一回だけ録って、それからもう20回、レゲエ・バージョンをやったんだなあ(笑)。ははっ、そして五年間、御蔵入りになっていたと。それですっかり忘れてたところに、『刺青の男』を作るんで作品を探してたら、あれが出てきたというわけなのさ。時にしてね、現場じゃそれがいい曲なのかどうかさっぱりわからないことがあるんだよな。

50回、20回という回数は誇張が入ってるかもしれないが、"Start Me Up" はワタシが初めて聴いたストーンズの曲で、最初聴いたときキースのあの美すら感じる不滅のリフがギターに聞こえなくて、これキーボード? と思った思い出の曲であり、未だにストーンズの曲では "Gimme Shelter" などと並んでもっとも好きなので、ともあれロックンロール・バージョンを録ってくれたことに感謝したい。

さて、そもそも今回なんでこのキースのインタビューを取り上げようと思ったのか。ライブ盤の話は一種の言い訳だったりする。

今回リリースされたライブや初来日公演の頃、1943年生まれのミックもキースも確か46歳なんですね。そして、ワタシは少し前に47歳の誕生日を迎えている。つまり、このときのキースの年齢をワタシは超えているのに気づいて、とうとうこの日が来たかと思ったわけだ。

上記の通り、ワタシが初めて聴いたストーンズは1981年の "Start Me Up" だが、当時はバンド名も知らなかったし、洋楽を聴くようになった頃、ミックとキースの不仲の影響でストーンズの活動は停滞していた。このときの『スティール・ホイールズ』がワタシが初めて買ったストーンズの新譜であり、初めて観たライブが初来日公演のテレビ放送だった。

それから30年経ってまだストーンズの活動が続いているというのがすごいのだけど、ともかくあの頃高校生だったワタシからすると、当時既にストーンズはザ・大御所であり、ミックにしろキースにしろ十分ジジイ視してたのが、あのときのキースの年齢を自分は超えたんだなぁ……

Steel Wheels Live [DVD+2CD]

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刺青の男

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スティール・ホイールズ

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