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櫻の園

DVDジャケット

以前から観よう観ようと思いつつ、どうしても洋画優先になってしまい後回しになっていた映画。こないだ何気にレンタル屋で目についたので借りてみた。

うん、これは良い映画。吉田秋生の原作は読んでいないので、そちらとの比較はできないが。女子高の創立記念日の恒例行事である『櫻の園』の上演が行われるまでの演劇部の部員達の朝の数時間を描いた映画であり、「幕が上がるまで」ものの一つなのだけど(そんな分類あんのか?)、創立記念日に上演されるという一回性と、演劇部の部員である女子高生達のかけがえのない(とこの映画を観ると思うわけだ)一回性が見事に重なり、美しい記憶として残る映画になっている。

何より女子高生役の人たちの演技が皆自然なのが素晴らしい。多分そうした演技を根気良く引き出したのだと思うけど、彼女達を丁寧に追う適度な長回しを多用したカメラワークもあわせて演出が丁寧。どこまで意識したのかは分からないが、原作(チェーホフのほうね)の笑劇性もちゃんと脚本に受け継がれている。

中島ひろ子白島靖代の二人が写真を撮る場面を名場面とする人も多いのだろうけど、ワタシはむしろ、彼女達も歳を取り老いていくのだとあの場面を見て思ってしまった。つまり、あの場面に青春の輝きと反対のものを感じてしまったわけだが、モリッシーが、「少女よ、お前も歳を取る」とか歌っていたのを思い出したりした。関係ないか。

でも、相手へのまっすぐな好意の言葉が、柔らかく受容される場面というのは本当に良かったと思う。ラストのライトの中に進んでいく中島ひろ子には息をのんだ。

不満を言うと、この DVD 画質がよくないんだよなぁ。この映画が「光」をうまく撮った映画だと思うだけにちょっと悲しい。あと映画そのものとは関係ないが、チャプター選択もないってあんまりじゃないかい。さらに最後に収められている予告編ね、本編に登場しない場面がやたらと多かったのだけど、ええのかね? まあ、15年ぐらい前の映画にそれを言っても仕方ないのだけど。

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