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アーロン・シュワルツ逮捕は米国版Librahack事件なのか?

アーロン・シュワルツAaron Swartz)が逮捕されてしまった。

彼のことは、Wired Vision の連載でも「アーロン・シュワルツ先生の次回作にご期待ください!」「ネットは政治の監視者たりえるか」で二度取り上げているが、現在ハーバード大学の Center for Ethics のフェローである彼が窃盗の容疑で逮捕されるとは……

Jason Kottke も書くように、アーロンが MIT のネットワークから JSTOR の文書を大量にダウンロードした動機を想像するのは難しいことではない。彼は常に市民にとって価値のある情報への自由で容易なアクセスを実現し、行動を促すことを目指してきた。彼が米国議会を相手にしたその試みについては二年前の New York Times の記事に詳しい。

彼が創始者である非営利団体 Demand Progress は早速声明を出しアーロン・シュワルツに対する支援を呼びかけている

Demand Progress の人曰く、「これじゃまるで図書館から本を借りすぎた咎で刑務所に入るようなものじゃないか」とのことで、JSTOR がアーロンに対して訴訟を起こしていないこと、また合衆国政府に彼を訴追しないよう依頼したことを指摘している。

こういう主張を見ると、どうしても Librahack(岡崎図書館事件)になぞらえたくなる。アーロンは JSTOR から個人情報を盗み出したわけではない。

ただ、不正アクセスとか情報が確定しないうちは決め付けはできないんだけど、両者を同一線上に並べるのはちょっと無理筋かも。彼が JSTOR のサービス利用規約に違反したことは間違いなさそうだし。柏野雄太氏は「抗議のやり方がナナメ上という感じは否めない」と書いている。

それでも Kevin Webb が書く以下のポイントは考えておく必要がある。

シュワルツ逮捕に関するニュース記事には、彼が使った収集や解析の手法が、Google などの企業を株主やユーザにとって価値あるものにしていることへの理解が欠けている。両者の違いは、ちょうど私の前のボスが作品を出版する条件を決めるのに自分の名前を利用したように、Google がその scraper の背後にある名前の影響力を行使できることだ。

これを受けて Audrey Watters が書く問いかけもまたしかり。

なぜこれが盗みになるのか? どれくらいのデータを取得したら、窃盗や詐欺で告訴されるリスクを負うことになるのか? これは活動家だけでなくデータ科学者(data scientists)にとっても大変現実味のある問題である。

有罪となると「最大35年の懲役」というちょっとぶったまげな話で、少なくともそういう事態は回避してほしいところ。

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