- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2012/06/02
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園子温の映画は、前作『冷たい熱帯魚』を観に行くつもりだったものの、怖気づいて行かずじまいだった。ヘタレと言われそうだが、ワタシは人体破壊などスプラッターだったりグロな映画は苦手で、(彼の代表作ではないが)あんまり「むきだし」過ぎる映画も苦手なのだ。
思えば18禁の映画を映画館で観るのは、10年以上前のキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』以来だったが、本作はおよそ二時間半の上映時間の間、まったく息抜きすることなく見入ってしまい、終わった後はかなりぐったりなった。
本当にここまでやるか、もはやギャグスレスレといった言葉を遥かに通り越したところまで役者を追い込んでおり、本作もかなり「むきだし」な映画なのだけど、それだけではない。
正直本作を観終わった後も、そのタイトルが何で「恋の罪」なのかよく分からなかったが、やはりこれはサドの小説から採られているのだろう。本編での田村隆一の「帰途」からの引用、そしてマーラーの音楽(だよね?)の配置など、ただ肉体ありきな映画ではなく、それこそ美津子が語るように言葉に肉体を持たせるための戦いをとらえた映画といえる。ただその過剰さは国際的なマーケットへの配慮もあるのかもしれないが。
本作は「この先の深い闇にとてつもないなにかが潜んでいるような気がする」でおなじみ(え?)東電OL殺人事件に材を採った映画だが、映画の冒頭で猟奇的殺人による遺体が示され、主婦のいずみと大学助教授の美津子という主人公である二人の女性のどちらが殺されたのか、なぜこのように殺されたのかを探るサスペンスとして観客を引っ張る。
劇中反復されるいずみの日常の中でアレ? と疑問に思う描写があり、それが後でいずみの妄想だったことが分かるという映像的トリックが使われているが、水野美紀演じる刑事のパートでも顕著なサイコホラーの文体をもっと押し進めた演出も可能だったかもしれない。
本作は何より社会的逸脱を厭わぬ女性の解放についての映画であり、「男はタダでセックスする女より、金を払った女を蔑む」といった、東電OL殺人事件をただ道具として利用するのでない洞察が光っていたように思う。
ただラストは、伏線となる話を中盤で入れなかったほうが緊張感が切れなかったのではないか。