書肆侃侃房が面白い。西崎憲が編集長を務める文学ムック『たべるのがおそい』は、今年の春の第7号で終刊したが、最近も北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』のような面白い本を出して気を吐いている。
惜しいことにワタシがその存在を知ったのは(つまり『たべるのがおそい』を知ったのは)、ワタシが福岡を離れた2016年春以降で、福岡に住んでいたら「本のあるところ ajiro」とか絶対行ってるし、取材とか称して会社に押しかけたかもしれない(実際、マガジン航の取材記事「福岡の出版社、書肆侃侃房の挑戦」がある)。
それはともかく、書肆侃侃房の note でやっている「現代アメリカ文学ポップコーン大盛」シリーズにおける青木耕平の文章がすこぶる面白かった。
ブレット・イーストン・エリスって、映画関係の仕事が多いこともあってツイートなんかもそっち関係のものしかワタシの観測圏内に入らず、どうしてるんだろうという感じだったのだが、こんな面白いことになっているとは。キレッキレである。
最近ポッドキャストが熱い、10年ぶりブームとか言われるが、ブレット・イーストン・エリスのポッドキャストもその一端を担っているのだろうな。
それにしても、彼の新作『ホワイト』、邦訳出てほしいな!
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青木耕平の文章もそうだが、ブレット・イーストン・エリスというと、現在評価は『アメリカン・サイコ』(asin:4042673015)に集中している。ワタシは彼のデビュー作『レス・ザン・ゼロ』が好きで、未だに帰省中に実家に置いている文庫本を読むことがある。
「日本の近現代文学には「病気小説」や「貧乏小説」とならんで「妊娠小説」という伝統的なジャンルがあります」という斎藤美奈子『妊娠小説』(asin:4480032819)風に書くなら、日本に限らず近現代文学には「帰省小説」という小説ジャンルがある、とワタシは以前から思っている。
その小説ジャンルの代表作というとまず浮かぶのは魯迅「故郷」だが、日本文学を代表する帰省小説は村上春樹『風の歌を聴け』(asin:4062748703)だろうか。これには異論があるだろうが、ともかくエリスの『レス・ザン・ゼロ』も帰省小説の傑作だと思うのである。が、そういう風にこの小説を評価する人などワタシくらいで、今では手に取り読む人もいないのだろうな。
- 作者: ブレット・イーストンエリス,Bret Easton Ellis,中江昌彦
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