さて、ワタシのブログでは、だいたいゴールデンウィークのあたりで、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」という企画をやるのが恒例になっている(過去回は「洋書紹介特集」カテゴリから辿れます)。
よほどのことがなければ、本ブログの次回の更新はその2023年編になるのだが、過去12回(!)もこの企画をやっていると、「あの本の邦訳、結局出なかったな。なんでかなー?」と思う本が出てくる。
原書が出て数年経てば邦訳を諦めてしまうのだが、原著刊行から5年以上の時を経て邦訳が出た『マスターアルゴリズム』、さらには原著刊行から10年以上(!)の時を経て邦訳が出たばかりのデヴィッド・バーン『音楽のはたらき』を知ると、そう簡単に諦めてはいけないのかなと思ったりもする。
そういうわけで、過去12回の「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」エントリから未だ邦訳が出ていないのを残念に思う本を改めて紹介させてもらう。
原書刊行からまだ1年経過していない本は対象から除外している。こちらの調べが足らず、実は既に邦訳が出ていたり、またこれから出るという情報をご存知の方はコメントなりで教えていただけるとありがたいです。
ナイル・ロジャース『Le Freak: An Upside Down Story of Family, Disco, and Destiny』
Chic としての70年代、ロックポップ方面のプロデューサーとして活躍した80年代、そして90年代以降も Chic の再結成、映画やゲーム音楽のサントラ、ダフト・パンクとの共演など、未だ彼が現役で活躍していることを思うと、彼の自伝の邦訳が出てないのはちょっと信じられないんだよね。
彼のロック界でのプロデュースワークは、先日リリース40周年を迎えたデヴィッド・ボウイ『Let's Dance』にしろ、ジェフ・ベックにしろ賛否あったわけだけど、それはそれとして。
こないだのコーチェラでもブロンディのライブにゲスト参加していたっけ。お元気そうで何よりである。
ブルース・シュナイアー『Click Here to Kill Everybody: Security and Survival in a Hyper-Connected World』
とうとうブルース・シュナイアー先生の前作の邦訳が出ないうちに新作 A Hacker’s Mind が出てしまった。なんてこったい。
これはブルース・シュナイアーくらいの大物の本になると、日本では印税などで出版がペイしないということなのだろうか?
マイケル・ダイアモンド、アダム・ホロヴィッツ『Beastie Boys Book』
ビースティ・ボーイズがどれくらいビッグだったかを考えると、邦訳が出ないのが信じられないのだが、日本の洋楽リスナーはそこまで減ってしまったのだろうか?
私事になるが、アダム・ヤウクが亡くなった日に個人的に忘れがたい出来事があり、以降はビースティーズを聴くと必然的にそれを思い出してしまうというのがある。
ブレット・イーストン・エリス『White』
ブレット・イーストン・エリスって『アメリカン・サイコ』の原作者? くらいの認識なんだろうが、彼の面白さについては『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(asin:4863854315)収録の青木耕平さんの文章を読んでください。
ケイト・クロフォード『The Atlas of AI』
そうそう、先週公開した「AIは監視資本主義とデジタル封建主義を完成させるか」で紹介したメレディス・ウィテカーと AI Now Institute と立ち上げたのがケイト・クロフォードなんですね。
彼女の研究には批判もあるのだが、彼女の本の邦訳が出て、そのあたりの議論も日本で紹介されるといいと思う。しかし、今や猫も杓子もな AI の本の邦訳が出ないとは思わなかったな。彼女の文章が掲載された本は、『未来と芸術 Future and the Arts』(asin:4568105234)くらいだったはず。
スティーブン・レヴィ『Facebook: The Inside Story』
テック界の大物ジャーナリストであるスティーブン・レヴィが Facebook に深く取材して書いた本なのだから当然邦訳が出ると思っていたのだが、ブルース・シュナイアーと同じような理由なんだろうか?
ジル・ルポール『If Then: How the Simulmatics Corporation Invented the Future』
これね、カタパルトスープレックスや翻訳書ときどき洋書で読んだ書評が面白かったものだから、絶対邦訳が出ると確信していたのだが、難しいものですな。
ケイト・ダーリング『The New Breed: What Our History with Animals Reveals about Our Future with Robots』
ケイト・ダーリングはサイボウズ式や WIRED.jp など日本のメディアでも取材されており、これは邦訳出るのも確実やろと踏んでいたのだが。
ジョン・ルーリー『The History of Bones: A Memoir』
ここから2冊は原書刊行からまだ2年経っていない本になり、こういうのに挙げるのはよくないかもしれないが、邦訳期待ということで入れさせてもらう。
だってねぇ、ジョン・ルーリー、1980年代の本業にしろ映画にしろとても鮮烈な存在だったわけで、すごくビターだけど面白そうな回顧録に違いないので。
トム・スタンデージ『A Brief History of Motion: From the Wheel to the Car to What Comes Next』
トム・スタンデージの本はいくつも邦訳が出ているので、これも現在その作業中だと思いたい。