この記事で知ったが、2022年末に米大統領首席医療顧問を退任したアンソニー・ファウチの回顧録 On Call が今月刊行されるのを知る。
アンソニー・ファウチと言えば、米国の七代にわたる政権下で大統領に医療分野の助言をした感染症に関する第一人者だが、日本でもその名前が人口に膾炙したのは、なんといっても米国において新型コロナウイルス対策を指揮した人物としてである。
彼は、今年に受けたインタビューで以下のように語っている。
「コロナの発生前、米国は感染症への備えが最も進んだ国だと評価されていた。しかし、実際は『世界一』ではなく『世界最悪』だった。国内の公衆衛生の基盤は弱く、連邦政府と50の州では次々と更新されるウイルスの情報などを即時に共有する仕組みが欠けていた。医療格差も大きく、必要な診療を受けられない社会的弱者の犠牲が多かった」
「政治的な分裂が大きく影響した。(政府の干渉を嫌う)共和党が優勢な州ではワクチンの接種率が非常に低く、マスクの着用も推奨されなかった。共和党支持者の死亡率や入院率は民主党支持者よりも明らかに高かった。公衆衛生上の危機では、国として統一した対応が大切だが、分裂した米国ではできなかった」
次のパンデミック 必ず起きる…アンソニー・ファウチ氏インタビュー : 読売新聞
その彼の回顧録は、新型コロナウイルスへの対策を振り返る上で絶対欠かせないものだろう。
マイケル・ルイスの『最悪の予感: パンデミックとの戦い』(asin:4150505985)にファウチ博士が非常に影が薄く登場するのを読んでしまうと、ファウチさん、もうちょっとなんとかならなかったの? と言いたくなるのだけど、彼は飽くまで科学者であって政治家ではない。彼の功績はもちろん大きいのだけど、限界があるのは当然のことだ。
Amazon で彼の名前を検索すると、ロバート・F・ケネディ・ジュニアが書いた陰謀論本(リンクはしません)がトップに出る不健康な状態なので、早くこの本の邦訳が出てほしいところ。