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今回はAmazon980円劇場特別編として、先日死去したシド・バレットのソロ作二作。
正直に言えば普通のロックファン、ましてやフロイドに詳しくない人に、ワタシはシドのソロ作をオススメはしない。彼のオリジナルアルバムは二枚遺されたが、二作とも既に精神を病んでからの作品であり、何も知らないリスナーが聴いて存分に楽しめる音とは思えないからだ。
彼は世界最大のロックバンドだったピンク・フロイドのギタリスト&ボーカリストにして初期のリーダーだった。デヴィッド・ボウイなどシド時代こそが自分にとってのフロイドだと発言したことがあったと記憶するが、これもワタシの評価とは異なる。やはり、ワタシにとってのフロイドは、『原子心母』(asin:B000057PCF)以降の世界的ロックバンドとしてのフロイド、つまりシドなき後バンドを継いだロジャー・ウォーターズが本領を発揮するようになった後のフロイドなのだ。
シド在籍時のフロイドは美しい。美しいが、聴いていて長続きする音楽ではないなと思う。とはいえ、こんな形でシドが隠遁生活を送らなければならなかった必然などないはずだ。シドが死んだからといって、現在のロックシーンに何の影響もない。それでも、彼の十全に発揮できなかった才能とあまりにも長い余生を思うとやはり悲しい。
『ROCK GIANTS 70’S』(asin:4947599243)に収録された長文ルポ「シド・バレットを探して」を読むと、バンドからシドを解雇するよう最も強行に主張したのはロジャー・ウォーターズらしくて少し後味が悪いが、仕方なかったと思う。自分が同じ立場でも、同じことを主張しただろう。
かくして後のフロイドは、狂ってしまったシド・バレットという影を背負って活動することになる。ロジャー・ウォーターズはそれから逃げることなく『Dark Side of the Moon』(asin:B000002U82)という『狂気』なる邦題通りのテーマを持ちながら15年以上ビルボードアルバムチャート200に残り続けるというモンスターアルバムに結実させた。
しかし、ロジャー時代のフロイドとシドを語る上で欠かせないのは『Wish You Were Here』(asin:B000024D4S)だろう。このアルバムに収められた "Shine on You Crazy Diamond" や "Wish You Were Here" が誰のことを指しているのか書くまでもない。このアルバム制作時、ぶくぶくと太り禿げた、かつての美男子ぶりから変わり果てた風貌のシドがふらりとスタジオに訪れたという伝説がある。あまりにも出来すぎていて信じがたいのだが。
出来すぎた話といえば、昨年のライブ8では、裁判闘争を繰り広げるなど長年に渡り犬猿の仲だったロジャー・ウォーターズとデヴィッド・ギルモアが同じステージに立つ場面もあった。このリユニオンはライブ8のハイライトの一つと言われたが、率直に言ってワタシはライブ8というイベントが嫌いだし、その首謀者であるボブ・ゲルドフが嫌いだし、こうした再結成ものも好きではない。ので、ライブ8の映像も未だ観ていない。しかし、シドの名前を挙げてあの二人が "Wish You Were Here" を歌ったという話を聞いたとき、リユニオンが実現してよかったじゃないかとちょっと思ったりもした。
How I wish, how I wish you were here We're just two lost souls swimming in a fish bowl, year after year Running over the same old ground What have we found The same old fears Wish you were here
60年という短い人生とその半分以上を占めるあまりにも長い余生。